僕たちが幸せを知るのに

茜琉ぴーたん

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Capitolo14…Delizioso

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 翌朝。
「…非道いわ、レオくん…本当に立てない」
遅めの朝食を摂りながら、朱鷺子ときこさんは恨めしそうに腰をさすって僕を睨む。
 確かに久々だからってやり過ぎたかな、僕は目線を逸らしてコーヒーセットを食卓へと置いた。
 本日の豆は商店街の珈琲コーヒー店で買った特製ブレンド、ゆっくり丁寧に挽いて淹れてあげたものにたっぷりのミルクを足してある。
「あは、朱鷺子さんって結構ヤワなんだね」
「年齢を加味してちょうだいよ…ん、これ…オムレツ?美味しいわ」
papaパパ直伝なんだ。僕、大学とか考えてない時はpapaの店を継ぐのも良いかなって思ってて…舌で覚えたって言うのかな、割と何でも作れるんだ」
「…器用ね…こんな特技があるなら早く言ってよ」
 これまでも食事をご一緒することはあったけど主に外食だったし、このアトリエで摂るのもお弁当だったりテイクアウトの軽食ばかりだった。
 だから手料理を振る舞うのはこれが初めて、ただでさえ疲れてるんだから余計に美味しく感じるのではないだろうか。
「ふふ…夕食はだいたい姉さんと2人でね、いろいろ作って…どう?僕、役に立つでしょ」
「まったくね…敵わないわ」
 あれ、陥落かんらくしちゃったのかな。それとも寝不足のせいかな、朱鷺子さんはいつもより柔らかい表情で笑う。
 シャワーを浴びた時に落としてもらったからもうすっぴんで、随所に刻まれたシワや沈着したシミなんかが老いを感じさせる。それが当たり前なんだから不都合も無いしむしろ楚々そそとして可憐だ。
「栄養摂って、元気に暮らそうね」
「うん……あの、レオくん」
「うん?」
 コーヒーを注いでオムレツにケチャップを垂らしたら、先に食べ終わった朱鷺子さんが唇を噛んで爪を弾く。
 そして険しい顔で
「その…親御さんは…私のこと、どう思ってらっしゃるのかしら。これまでは仕事上の付き合いだけだったけど、その…レオくんが陰で日向ひなたで『愛人』として見られてたことはきっとご存知でしょう?」
とコーヒーカップに手を伸ばした。
「…まぁ…関係を聞かれたことはあるけど」
「気分はよろしくないわよね、息子さんをたぶらかす女なんて…しかも裸像を県内外に設置してる……私、レオくんの親御さんとそう歳も変わらないでしょう?」
「確かに、mamaママは朱鷺子さんと同い年かも」
「…辞めさせられたり、しない?」
 そんなこと気にしてたのか、心配性だなぁ…
「朱鷺子さん、結論から言うとno problemノープロブレム、無問題だよ」
と返せば手が震えて琥珀こはく色のコーヒーがちゃぷと跳ねる。
「本当?」
「僕もう成人してんだから。大人になったら自分の意思と責任において行動しなさいってのがうちの親の信条だよ。むしろ『さっさと出て行け』ってせっつかれてたんだ…僕もここに住んで良い?」
「あ、そう……良いわよ…」
「良かった♡…あのね、うちのpapaも60近いけどね、mamaのこと今でもすごく愛してるんだ。気持ちだけじゃなくてsexセックスもばんばんシてる」
「言わなくて良いわよ、そんなこと」

 うちの両親は子供は僕で打ち止めと決めてそれからは愛情を確かめるためのセックスしかしてないはずだ。子作りのためのセックスしかしてなかった朱鷺子さんには考えられないことかもしれない。
 ちなみに親のセックスを見た訳じゃない。でもひとつ屋根の下に居れば夜な夜な官能的に父の名を呼ぶ母の声が漏れ聞こえて来たりするのは仕方がないことだ。
 言い訳するけど熟女好きな僕においても母の痴態でオナニーするほど変態ではない。まぁ興奮するのは事実なので女優さんとかを思い浮かべて変換して励んだりはしたけども。

 ともあれ僕が言いたいのはこの先永く仲良しで居たいということ、
「うん、だからさ、僕もそれくらいまで元気だと思うよ」
とフォークで刺した粗挽きソーセージを縦に向ければ朱鷺子さんはブッと吹き出した。
「はぁ?………80過ぎた私を抱くってこと?」
「あは、きっと美老女だね」
「…アンチエイジング、頑張ろ」
「順当に歳を重ねて良いのに」
「…レオくんには、いつまでもキレイって言われたいもの」
「……」
 そんな風に健気なところを見せるんだから僕は貴女から目が離せない。上も下も白髪が混じって少し疲れた風な気怠い雰囲気も好きだ。
 貴女を想って熟女AVのお世話にもなったけど、知らないお姉さまの下品な姿には僕はもう反応できなかった。
 あの日、僕に痴漢行為をしたお姉さまは今頃どうしているんだろうか。いたいけな男子の性癖を捻じ曲げたあの痴女は還暦を過ぎたお婆ちゃんくらいになっているだろうか。
 あの人に遭わなければ朱鷺子さんとこうして過ごすことも無かったんだろうね、ならば僕の鬱々とした日々も無駄じゃなかったのかな。

「…朱鷺子さんはいつまでもキレイだよ。昨日の僕、興奮してこんなだったでしょ?」
 ぷりぷりしたソーセージの先端を「はい」と差し出せば朱鷺子さんはギョッと驚いて、でもその長いまつ毛を伏して
「下品ね」
と素の唇で口付けた。

「朱鷺子さん、」
「なぁに」
「僕のsausageソーセージにもkissキスしてみない?」
 にっこり笑顔で間接キスを頂くと彼女はキョトンとしてコーヒーをひと口、それからじわじわ目元が紅くなってカップでは隠せないくらいにぽっぽとなる。
「……それはアメリカンジョークなのかしら…」
「(食べ物で遊んだのはNGだったかな)」

 無言で数秒、僕をジト目で睨んだ朱鷺子さんは
「ケチャップは要るかしら」
と無意識なのか唇を触るもんだから、
「何もつけない、素材の味が一番だよ♡」
と僕はオムレツを一気に平らげた。
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