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しおりを挟む「それにしても…真澄くんは要はナンパされた訳じゃない、私はモロに攻撃されて嫌だったなぁ」
「証拠とか取っておけば良かったけど…何だろ、長く関わりたくない。訴えても罰を与えられないかも…いや、憶測でもの言っちゃいけないけど、そういう…罪に問えない…ね、」
「分かるけど」
「菫ちゃんの名誉は僕が回復してあげるから」
真澄は菫を宥めて、もう一度はじっくりと抱いた。
温厚な真澄においては、式場相手にクレームを入れること自体が酷くエネルギーを使うことだった。
晴れやかな終わり方ではないものの、今後関わらなければ被害も無いのでここで引くのが賢明と判断した。
他にも被害に遭ったカップルはいるだろうし、アナログな口コミでも悪評は広まるだろう。
ところでインターネットの検索サイトでの口コミ評価は、意外や低くはなかった。
しかし掲載される書き込みを選定しているような痕跡があり、同じ文言の五つ星評価が異様に多いなどの不自然な点が見られた。
口コミ操作とサクラ疑惑…しかしSNSの方ではリアルな感想が溢れているため、全体の評判はそこそこというか可も無く不可も無くといったところだった。
二人は単純に市内の式場をピックアップしたために、口コミなどはチェックしていなかったのだ。
「してれば、ここは訪問してなかったね」と、後で資料をゴミ箱に捨てるのだった。
その式場の経営が立ち行かなくなり、親会社から手を切られたというエピソードは…しばらく後の話である。
大槻は式場が潰れ無職となり、過去に手を付けた男性に連絡を取り生活を助けてもらおうと躍起になっているらしい。
真澄にも電話が掛かって来て、辛い近況と口説き文句をクドクド話された。
どうして大槻が真澄の電話番号を知っているかといえば、なんと退職前に顧客情報のバックアップを取っていたそうだ。
式場見学で接した男性など、好みのものに関してはすぐに情報を控えて個人のスマートフォンに記録していたのだという。
電話でそれを聞かされた真澄は淡々と怒りを伝えて切り、すぐに着信拒否した。
そして菫に危害が及ばぬよう大槻の番号を拒否させ、親会社の問い合わせフォームへ事実を記し送信しておいた。
その後のことは、真澄もよく知らない。
新聞の地域欄に『結婚式場元スタッフが客の個人情報を抜き取り書類送検』と載っていたようだが、新聞を取っていない真澄たちは知り得なかった。
娘の不祥事により父親が引責辞任したとか、系列事業を他社に引き渡したとか、大きめの罰が降り掛かったようだ。
大槻がやらかしたことへの恨みの集合体みたいなものだろう、被害者が報われることは無いが…中には顛末を知ってスカッとする人もいるかもしれない。
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