お嬢の番犬 ピンク

あかね

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ピンク

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 やれやれと垣内かいちが背中をいつもに増して丸くして自室へ戻ると、ドアの前ではみやびがちょこんと座って彼の帰りを待っていた。


「お嬢、何してん、こんな所来たらあかんよ」

垣内をはじめ、住み込みの男性使用人の殆どは本宅の隣の離れに部屋を貰っている。

「うん…ごめんね…お爺ちゃんに怒られへんかった?」

「まぁな、仕事とはいえ俺もやり過ぎたしな」

「うちが焚きつけてもうたから…」

「ちゃうよ、アイツ、ほんまに危なかってんもん。世直しや、仕事やで。ワシらの後にも他の人にぶつかりそうになってたしな。気にすんなて、ほら、もう帰りや」

「うん。うちのために怒ってくれてありがとう…垣内、大好き」

雅はよれよれの男のトレーナーの胸へ顔を擦り付け、腰へぎゅうとしがみ付いた。

 風呂上がりの濡れた髪から水滴が、リンスインシャンプーの香りごと垣内へ移る。

「それが俺の仕事やからね…でもおおきに、俺もお嬢が好きよ、……娘みたいなもんや」

「クレープも…デートみたいで楽しかった、今度は垣内の分も買うから、また…一緒に行こな、約束よ?」


 垣内はよしよしと背中を撫でかけた手を止めて、彼女の頭をポンと押さえてから体を離した。

「うん、明日歯医者やからしっかり磨いてな、おやすみ」

「うん、おやすみなさい」


 本宅へ帰る雅の姿が廊下の先へ消えるまで見届け、ドアへ振り返った垣内が次に見たのは、ちょこんと座ってこちらを見上げる和久わくだった。

「うおぉッ!なんやねん、お前!」

「えらい仕事仕事言うね。いや、どんだけ絞られたんか聞こう思て。まぁ呑みながら」

そう言って和久は立ち上がり、本宅の台所からくすねてきたウィスキーの瓶をチラリと後ろ手で覗かせた。

「いいねー、和久ちゃん、やるやんか」

その心意気と土産に惹かれて、垣内は快く和久を自室へ招き入れるのだった。
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