枯れかけのサキュバス

あかね

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11月・嫉心のサキュバス

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 それから約2週間後。

 いつものように駐車場で待ち合わせて唯の部屋へ帰る途中のこと。

「スーパー寄って帰ろ、何がええかな?」

「売れ残ってる食材次第ですね、ユイさんの料理の腕の見せ所ですよ」

「はは、そない持ち上げんとって…あ、うちの鞄から財布出せる?今日は買い物用持ってきてんけど、中身入ってるか見て?」

 葉山は言われた通り唯の鞄からがま口タイプの長財布を取り出して口金を開く。

 大きな買い物が無い日は、小さな三つ折りの財布に最低限の小銭だけ入れて持ち歩いているのだ。


「お札は…2枚…小銭も失礼しますね…ん?」

小銭ポケットを開けたものの葉山は違和感を覚え、何かを拾い上げて固まった。

「…………ユイさん…何ですか、コレ?」

「なに?見えへんよ」


 信号で停まり唯が助手席に見たのは、財布から出てきたであろう1本の煙草と、殺気立った顔でその煙草を摘む葉山の姿だった。

「なに…タバコか?……いや、知らん…吸わへんし…」

「なぜプライベート用の財布に?誰に触らせたんです?どこの男ですか?前回と前々回と纏ってた煙と同じものですか?」

「待って、うちだって知ら………あ、」


 おそらくだが、1週間前に美月みつきと宅呑みだったのを嘉島かしまチーフ宅での鍋パーティーに急遽変更したあの日だ。

 家探しをして慈養強壮のサプリを見つけたり、酔って嘉島と猥談を繰り広げたあの日。

 嘉島は目に余る唯を懲らしめようとでも思ったのか、財布に自身の煙草を忍ばせたに違いない。

 そこしか機会は無いはずだ…葉山が嫉妬深いとか、そんな話もしたような気がする。


「待って、たぶんチーフのや……」

「へぇ、嘉島チーフと…?いつそんな仲になったん?こんな匂わせ行為をする方やったかな?…ええ度胸や…お仕置きやな、ホテル行き決定。そこ右」

「あ…ちゃう、んです…」

 気圧けおされて言う通りハンドルを切り敬語になる唯の耳を、地の関西弁が出る葉山は助手席からぎっとつねり、

「チーフに電話中継されたないでしょう?言い訳はベッドで聞く。ほら、その斜めの細い道を」

と指示を出す。

「仲がええのは知ってるけど……これはやり過ぎやなぁ…腹立つなぁ…」

 万が一にもハンドル操作を誤ってはならないと唯は黙って従い、小高い位置にある城のようなホテルへ入った。


「さ、降りて。着替え無いから、手荒な真似はしたないよ…」

 シャツを破かれたりするのは御免だと唯は大人しく肩を抱かれ歩き、ロビーで部屋を選ぶ。

「……」

 逃げられないこともないだろうが、うまく誤解が解ければホテルでしっぽり楽しい一夜を過ごせるのだが…どうだろう。


 部屋まで続く螺旋らせん階段は天井が低く唯の平衡感覚を狂わせ、普通ならエロティックに感じる紫色の壁も毒々しくて何だか気味が悪かった。

 部屋に入るなり葉山は腰を屈め唯に迫り、小さな体を壁際まで追い詰めて深いキスから始めた。

「んっ、……ハ…ん…ン~」

「ハァ……このビッチ…」

葉山は冷たくそう言い捨て、彼女のベルトを開ける。

 途中で壁向きにさせられ、ショーツとズボンをまとめて膝まで下げると葉山に向けられた尻は小さく震えていた。

 葉山もカチャカチャと音を鳴らしてベルトを外し、唯と同じように丸出しにするとたぎるモノを尻の割れ目に擦り付ける。

 月初に丸剃りにされた淫毛はまだ生え揃っていない。

 それを見られたくないのもあって、葉山は後背位を選ばざるを得なかった。
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