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しおりを挟むそれからも数件、ペースが落ちたものの歩夢嬢には見合い話が舞い込んだ。
相変わらず難ありの相手ばかりだったが、こちらは出来得る限り礼を尽くし彼女はレディ然として努めた。
どうしてかやはり相手側から断られるばかりだが、歩夢嬢が愛想良くしつつも縁談自体に乗り気でないのが透けて見えるからなのかと俺は考えている。
そして季節は巡り、歩夢嬢は24歳に、俺は31歳になった梅雨の頃…地元の名主・城廻家から見合いの申し込みが入った。
3代続く議員の家系で、二階堂家よりも家柄は上らしい。
果たして次はどうだろう。
いよいよ彼女は気に入られて、婿入りまでさせずとも議員先生を経営陣に据えて社長もひと安心するかもしれない。
俺は約束通り取締役になり歩夢嬢を支えて、議員夫人になった彼女には専用の執事が付くだろうか。
俺は業務に専念してそれこそ見合いでもして結婚も考えたりせねばならないんだろう…ようやく子守から解放されるのだ。
「(本当に歩夢さまが人のものになったら…俺、どうなるんだろう)」
「橘?上の空ね」
「申し訳ございません…少し、先のことを考えてしまって」
「今を愉しみましょ…ね、もっと突いて」
「かしこまりました…ん、」
概ね満足、しかし行き詰まったモヤモヤが常に晴れない。
どうする、どうなる、どうにかしようとする気があるのか、無いのか。
「たちばなァ♡好きッ、」
繋がっているのは愛情ならぬ情欲なのかもな、俺はまた自分を騙して納得させて、
「私もです、」
と控えめに抱き締めた。
つづく
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