親指姫のアイデンティティ

茜琉ぴーたん

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Void and vainness

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 食後、予想通り私たちは夜の庭を眺めつつしっぽりと入浴を楽しんだ。
「夏は虫とか居そうですね」
「そうだね…露天風呂は冬がベストなのかも」
「…こんな高級なお宿…ありがとうございます」
「良いって…初めての旅行だもの、記念だから」
 これに気を良くして私がエミルダさんの如くあれやこれやと物品をねだったらどうするのか。
 渋い表情から察したのか咲也さんは
「本当、いつもこんなに贅沢ぜいたくする訳じゃないよ。記念日とかは大事にするようにしてるだけ。基本は倹約してる…平時に無闇に贈り物をしたりは…あんまり無いかな」
と経済観念を今一度説明してくれる。
「ちょっとはあるんだ」
「そりゃあね、街角のショーケースにラムさんに似合いそうな靴とかあったら買いそうになっちゃうもの…買わないよ、僕が作ってあげたいから」
「…どんな靴?」
「低いキトゥンヒール、3センチくらいね、ベージュとかブラウンのシックなやつ…よく穿いてるロールアップしたジーンズに合わせてさ…いつかデザインするからプレゼントさせてね」
 それは遠い未来か近い将来の話か。
 生き生きといかに私を飾るかを語る彼は本当に楽しそうで年齢より若々しく見えた。
 オーダーメイドの靴なんてそれこそコストがかかる高い貢物じゃない、倹約家が聞いて笑う。けれどそれだけ自分に手を掛けてもらえるのだと思えばその特別感が胸を打つ。

「ふー…寒いけど汗かいてきた…ぼちぼち…上がろうか」
「はい…」
「ここでシちゃいたいけど公然猥褻わいせつで捕まっちゃうと困るからね」
「はは…どうなんでしょ」
 外は私たち専用の庭だから人なんて居ない。竹垣で外界と仕切られた20畳分はありそうな小庭、冬だから芝の元気は無いけれど星空を見上げてまさに昇天なんてできたら気持ちが良さそうだ。
 とは言え現実的じゃないプランはさっさと捨てて、私たちは湯から上がりバスタオルを巻いて寝室へと向かった。
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