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初体験編
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しおりを挟むそして秋も深まり全国的な学祭シーズンが到来、渉は家中のアラーム機能が付いた時計を枕元へ集めて早起きし、始発で京都へと向かう。
新幹線の中ではスーツのビジネスマンに混じって少し眠り、胸ポケットに入れておいた携帯電話のバイブレータに起こされ、無事に京都駅で下車することができた。
いつも落ち合う神戸に負けず劣らずの大きな街、しかし古の都の空気は田舎育ちの渉には妙に落ち着くものがある。この街で千鶴は暮らしているのだな、大学祭の開始時間にはまだ余裕があったために渉は大学まで歩くことにした。
碁盤の目に張り巡らされた道路、大きな寺社仏閣、ほぅと感心しつつ進めば30分もかからず大学前に到着した。
ちょうど開門されたので父兄らしき客に紛れて入場すればそこは華やかな世界、渉はパンフレットを受付で貰って千鶴はどこかと推察する。
学部に当たりをつけて建物内の展示コーナーへ出向き、キョロキョロと見回しても彼女は居なかった。ならば出店かと飲食ブースに行くも見当たらず、渉はとりあえず腹が減ったのでフライドポテトを買い中央広場の階段の隅に座ってもくもくと頬張る。
「(町中の女子を集めたんか言うくらい…ええ眺めじゃな…)」
当たり前だが女子大だけあって出店もステージでの出し物も女子だけで運営されており、客も多くは当番外の学生や保護者がほとんどだった。しかしその中には自分たちと同じかもう少し上くらいの男子も混じっていて、学生の彼氏だったらまだ可愛いのだが明らかに女漁りに来たような集団も居たりして…渉はざわざわと心が騒ぐ。
「(チィ…ナンパとかされとらんか…どこな、チィ…)」
あくまでサプライズにこだわる渉はシフトなど考えもせず展示コーナーと出店を何回も行き来し、正午を回った頃遂に女性職員から「何の御用ですか」と注意を受けてしまった。
「あ、いや、人を探してまして、」
「生徒のご家族の方ですか?」
「家族…と言えばそうなんじゃけど…は、花山千鶴の…こ、婚約者なんじゃ」
「あら、花山さんの?」
女性の顔色が変わるや否や聞き耳を立てていた女生徒が集まり、
「え、ちーちゃんの彼氏さん?大っきいですね、」
「婚約者って結婚がもう決まってるの?うわぁ♡」
「ちーちゃんって何番だっけ?あ、もうすぐ来ますよ」
と口々に質問やら情報やらをくれる。
そして数分後に
「代わりまーす」
と千鶴が入館して来た時には渉は女生徒に囲まれ書道体験コーナーに座っており、昔取った杵柄とでも言うのかどこかで読んだようなポエムを認めて拍手を受けていた。
「なに……わ、渉くん⁉︎」
「おぅ、チィ!来たど!」
「いつ来たの?なんで、聞いてない」
「サプライズよ、驚いたか」
「驚くよ、何がサプライズなの」
「その顔が見とうてな」
「何を言って……なんでみんなニヤニヤしてるの」
友人たちは普段の千鶴のデレた雰囲気と渉への少々ツンな態度にいろいろ察し、「彼氏の前では素直じゃないのね」と乙女心を勝手に読んではニヤつきが止まらない。
「チィ、当番はいつまでじゃ?一緒に回れるか?」
「え、1時間だから13時には終わるけど…」
「ほんなら待つわ、外プラプラしてくるわ、ちーちゃん♡」
「何がちーちゃんよ……うん、またね…」
これは何か吹き込まれているな、千鶴は来たばかりだというのにため息が止まらず疲労感で背中が曲がる。
「渉さん、これどうぞー」
「おぉ、こりゃええのぅ!」
書道担当の生徒は乾いたポエムを色画用紙に貼り記念として持たせてくれ、渉はそれをリュックに入れて外の出店を数件回って時間を潰した。
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