59 / 60
第三話
第五十九節 私を忘れないで
しおりを挟む
「……俺、分からなくなったんだ」
ため息をつきながら呟く。
ここ数年のヤクの変化に対して、自分は付いていけてないことを白状する。一年前の中間成績発表のあの日から、随分と本来のヤクを見ていない気がしていた。いつも取り繕い、演じているかのような姿が、どうしても受け入れられないのだ。だからつい冷たく当たり、適当にあしらってしまうことが多くなっていた。
「このままじゃダメだってのは、わかってるんだけどな。どうしても、今のヤクを見ていられなくなる時があるんだ」
「スグリ……」
「何度も原因はなんだって聞いても関係ないって突き放されるし、じゃあ時間が経てば話してくれるって信じて待ってても音沙汰なし。さすがに冗談がキツイって……」
自分でも嫌になる。額に手を当てながら愚痴を零していく。
このままの状態でいていいわけがないことは、重々に理解している。しかしこうもなしのつぶてでは、もうどうにもならないのではと考えてしまう。
以前のように笑いあえる関係に戻りたい。でもそれ考えているのは、自分だけなのではないだろうか。現にヤクは自分の知らない仮面をつけ、何事もないかのように過ごしている。その仮面を、己の前で外すこともなく。自分はヤクにとっての何者なのだろう。
考えれば考えるほど悪い予測しか思いつかない。このままどつぼにはまっていき、抜け出せなくなるのではないか。それがひどく恐ろしい。こんな考えを持ってしまう自分自身をも、許せなくなってきていた。
「嫌いになったわけじゃないんだ。今でもずっと心配はしてる。でも……それは俺の自己満足なんじゃないかって思うと、遣る瀬無くて……」
「スグリは、頑張っているよ。そんなに自分を責めなくてもいいのに」
「けど現状は何も変わっちゃいないんだ。その間にヤクは一人で勝手に満足してるのか、最近になってまた昔のような顔に戻ったりもする。どうかしたのかって聞いてもはぐらかされて、理由も教えてくれないんだ」
「ずっと隠されているのかい?」
「そうなんだ。まぁ、言いたくない事情があるのかもしれない。それはわかってる。でも昔のようになれるのならそれも嬉しいはずなのに、素直に喜べない俺がいる。だから冷たく接して、積極的に近寄ることもしない。最低な人間だろ、こんなの……」
自嘲するスグリを、ルーヴァが心痛な面持ちで見つめてくる。
まるで解決策が見つからない。その間にも時間は過ぎていき、ヤクとのすれ違いは大きくなる一方に思える。この現状を打開したい、しかしそれは己の独りよがりかもしれない。
「……自分から冷たくしておいて、自分の知らないところで満足そうにしているのが嫌だなんて。我が儘にもほどがあるだろ……?」
「難しい問題、だね。多分、二人がずっと一緒にいたからこそ、今の状態になってるのかもしれない。お互いがお互いを想うあまり、すれ違ってると僕は思うよ」
「……そう、なんだろうか。ヤクは俺のこと、どうでもいいとか思ってそうだけど。それにここに帰ってくる前に、思ったんだ。あいつと一緒に帰ることにならなくて、ほっとしたって」
「……そう……」
そこまで考えて、気付かされたのだ。自分は今のヤクを受け入れることが出来ないのだ、と。自分の理想のヤクを勝手に押し付けて勝手に失望した己に、心底呆れてしまった。傲慢にもほどがある。そこからの自己嫌悪は凄まじいものだった。ヤクに対しての申し訳なさも。それでも、今も正面を向いてヤクと話すことが難しい。
それらを吐き出せば、ルーヴァは一つ頷く。
「そんな状態ならなおさら、今は冷却期間って考えるしかないね。僕の方からもヤクに少し聞いてみるよ。だからスグリも、そんなに自分を責めないであげてね」
「……ありがとう、ルーヴァさん。聞いてもらって少し楽になった気がする」
「そう、よかった」
その後も軽く談笑して、その日は寝ることに。
部屋で眠りに入ったスグリだが、その日はある夢を視た。
******
気付けば己はその光景を俯瞰するかたちで見下ろしていた。周り一面は火の海。その場には成長したであろう自分と、相対するかのように成長した姿のヤクがいた。
自分が身に纏っている服は、ミズガルーズ国家防衛軍の軍服だ。それに対してヤクは黒い衣服を身に纏い、憤怒に染まった表情でスグリを睨みつけている。
この光景はいったい、どういうことだろうか。今見ているこれは夢の光景だ。恐らく夢渡りの能力が見せている光景なのだろう。他の女神の巫女が歩む未来の結末の夢。
自分とヤクが敵対する可能性があるという、暫定的な未来の結末。どうしてそんなことになったのか。スグリの混乱をよそに、未来の姿の二人は一度間合いを取り話し合っていた。
「知るか、そんなこと」
自身の愛刀の切れ味と同じように、ヤクの言葉をスグリは鋭く切り伏せる。己の容赦のない言葉に、ヤクは面食らったようで言葉に詰まっていた。ヤクの動揺を無視したまま、未来の己が言葉を紡ぐ。
「自分は人間たちのせいで、女神のせいで、生きたかった人生を送れなかった。死のうとしても怖かった。死ねなかった死にたくなかった。それは自分のせいじゃなくて、全部周りのせいだ。そう言いたいなら、ごちゃごちゃと御託並べ立てるより、ハッキリそう言えばいいじゃないか。自分は悲劇のヒロインだ、とでも言いたいのか?」
その言葉からは一切の同情を感じられない。あろうことが己が、まさかヤクにそのような言葉の刃を向けるなんて。
全てたらればじゃないかと一蹴したスグリに、ヤクはようやく噛みつく。
「き、さま……!」
「それともあれか?俺の父上はお前のせいで死んだって責めればよかったのか?そう言ってくれれば、自分は贖罪の気持ちを感じて生きることができるからって?冗談じゃない。それこそ、お前は俺の父上の死を利用しようとした」
「違う!私は──」
「違わない。結局お前は自分が弱いってことを認めたくなくて、全部を周りのせいにしているだけだ。自分は悪くない、自分の考えは正しい、間違ってなんかいないと。……呆れた話だよな。それって、お前が忌み嫌っている人間と同じ思考じゃないか」
力を持たない人間と、何も変わらない。スグリの言葉に、ヤクが口籠る。
「な……」
「喜べよ、晴れてお前も意地汚い人間たちの仲間入りだ」
ようこそ、と未来のスグリは手を差し出しヤクを挑発する仕草を見せた。
そこまで聞いたスグリは、ある推測を立てた。ヤクに、己の憎しみの感情が爆発してしまう何かがあったのだろう、と。それはスグリと対立してしまうほどに大きく、制御ができないものに成長してしまったのだろう。
そしてそれに対して自分は今、説得しているのだろうか。
その後も会話は続く。
「ついでに言っておく。俺は、お前のせいで父上が死んだなんてこれっぽっちも思っていない。あれは事故だった。父上も覚悟のうえで、お前を生かしたんだ」
十二年前のあの惨劇の日を語る未来の自分。そう、今でも思い出す。
あの日父上──アマツは命の限り、最後まで。ヤクを守ろうとしていた。暴走したヤクを必死に守り抜き、命を落とした。
「確かに俺はお前から逃げた。お前が苦しんでいるとわかっていても、お前自身なら乗り越えてくれるだろうと甘えてしまった。それは俺の落ち度だ。でもな、だからこそもう逃げないと決めたし、過去は振り返らないと誓った。受け入れて前へ進まなきゃ、成長しないんだよ」
未来の自分が言った逃げているとは、今の己のことなのだろう。確かに今、スグリはヤクの変化が受け入れられず、逃げてしまっている。
「否定ばかりしたって、何も変わらない。過去の自分が救われたいからって、そればかり見つめて必死に守ろうとして。そんな生き方俺はまっぴらだし、そんなのは生きているんじゃない。ただ生かされているだけだ」
彼の言葉は、今の自分には胸に突き刺さった。
過去ばかり見て生きているのは、生きているのではなく生かされているだけ。その生き方はまるで、今の自分そのものだ。過去の姿のヤクだけを見て、そんな彼に戻ってほしいという考えを持ったまま生きている自分。現状の自分を指摘しているかのような言葉に、スグリもまた息を呑む。
「あとな、何も言わないくせにわかってくれなんて、傲慢なんだよ。そんな察してちゃんに構っていられるほど、時間なんてないんだ大馬鹿野郎」
吐き出される言葉の羅列に、ヤクの感情が酷く言い難いものになる。
憤怒、悲哀、落胆、悔恨、絶望。それらをドロドロに混ざり合ったかのような、しかしそのどれでもないような。口を閉ざし、まるで自分の中で何かを導き出すかのように、視線を地面に落とす。彼の視線の先には小刀があった。自分が差し出した者だろうか。
ヤクの無言の抵抗をいいことに、未来の自分はさらに挑発の言葉を重ねる。
「どうした。ここまで言われて悔しいか?たかが人間に馬鹿にされて、相当頭にきてるだろう?術が使えないなら、ほら。その小刀貸してやるって言っただろ。ただそうなったら、俺とて容赦しないがな」
スグリの言葉に意を決したかのように、ゆらりと動いた未来のヤクは、目の前に落ちている小刀を拾う。ゆっくりと鞘から刃を抜きながら、何かを呟いたように見えた。
刃は刃こぼれもなく、きらりと美しく輝きを放っている。
ヤクが、ぐ、と柄を握る。
「それを……お前は……!」
感情が鬩ぎあっているのか、表情が定まらない様子のヤク。
そして彼は何かと決別するように駆け出す。悲しく響く咆哮を、上げながら。
「あぁああ──!!」
向かってくるヤクに対して、未来の己も抜刀の構える。
己を殺そうとして突撃してくる友人を、切り伏せるために。
その光景を前にして、スグリは反射的にやめろと叫ぶ。その瞬間白い光が視界を覆うのであった。
ため息をつきながら呟く。
ここ数年のヤクの変化に対して、自分は付いていけてないことを白状する。一年前の中間成績発表のあの日から、随分と本来のヤクを見ていない気がしていた。いつも取り繕い、演じているかのような姿が、どうしても受け入れられないのだ。だからつい冷たく当たり、適当にあしらってしまうことが多くなっていた。
「このままじゃダメだってのは、わかってるんだけどな。どうしても、今のヤクを見ていられなくなる時があるんだ」
「スグリ……」
「何度も原因はなんだって聞いても関係ないって突き放されるし、じゃあ時間が経てば話してくれるって信じて待ってても音沙汰なし。さすがに冗談がキツイって……」
自分でも嫌になる。額に手を当てながら愚痴を零していく。
このままの状態でいていいわけがないことは、重々に理解している。しかしこうもなしのつぶてでは、もうどうにもならないのではと考えてしまう。
以前のように笑いあえる関係に戻りたい。でもそれ考えているのは、自分だけなのではないだろうか。現にヤクは自分の知らない仮面をつけ、何事もないかのように過ごしている。その仮面を、己の前で外すこともなく。自分はヤクにとっての何者なのだろう。
考えれば考えるほど悪い予測しか思いつかない。このままどつぼにはまっていき、抜け出せなくなるのではないか。それがひどく恐ろしい。こんな考えを持ってしまう自分自身をも、許せなくなってきていた。
「嫌いになったわけじゃないんだ。今でもずっと心配はしてる。でも……それは俺の自己満足なんじゃないかって思うと、遣る瀬無くて……」
「スグリは、頑張っているよ。そんなに自分を責めなくてもいいのに」
「けど現状は何も変わっちゃいないんだ。その間にヤクは一人で勝手に満足してるのか、最近になってまた昔のような顔に戻ったりもする。どうかしたのかって聞いてもはぐらかされて、理由も教えてくれないんだ」
「ずっと隠されているのかい?」
「そうなんだ。まぁ、言いたくない事情があるのかもしれない。それはわかってる。でも昔のようになれるのならそれも嬉しいはずなのに、素直に喜べない俺がいる。だから冷たく接して、積極的に近寄ることもしない。最低な人間だろ、こんなの……」
自嘲するスグリを、ルーヴァが心痛な面持ちで見つめてくる。
まるで解決策が見つからない。その間にも時間は過ぎていき、ヤクとのすれ違いは大きくなる一方に思える。この現状を打開したい、しかしそれは己の独りよがりかもしれない。
「……自分から冷たくしておいて、自分の知らないところで満足そうにしているのが嫌だなんて。我が儘にもほどがあるだろ……?」
「難しい問題、だね。多分、二人がずっと一緒にいたからこそ、今の状態になってるのかもしれない。お互いがお互いを想うあまり、すれ違ってると僕は思うよ」
「……そう、なんだろうか。ヤクは俺のこと、どうでもいいとか思ってそうだけど。それにここに帰ってくる前に、思ったんだ。あいつと一緒に帰ることにならなくて、ほっとしたって」
「……そう……」
そこまで考えて、気付かされたのだ。自分は今のヤクを受け入れることが出来ないのだ、と。自分の理想のヤクを勝手に押し付けて勝手に失望した己に、心底呆れてしまった。傲慢にもほどがある。そこからの自己嫌悪は凄まじいものだった。ヤクに対しての申し訳なさも。それでも、今も正面を向いてヤクと話すことが難しい。
それらを吐き出せば、ルーヴァは一つ頷く。
「そんな状態ならなおさら、今は冷却期間って考えるしかないね。僕の方からもヤクに少し聞いてみるよ。だからスグリも、そんなに自分を責めないであげてね」
「……ありがとう、ルーヴァさん。聞いてもらって少し楽になった気がする」
「そう、よかった」
その後も軽く談笑して、その日は寝ることに。
部屋で眠りに入ったスグリだが、その日はある夢を視た。
******
気付けば己はその光景を俯瞰するかたちで見下ろしていた。周り一面は火の海。その場には成長したであろう自分と、相対するかのように成長した姿のヤクがいた。
自分が身に纏っている服は、ミズガルーズ国家防衛軍の軍服だ。それに対してヤクは黒い衣服を身に纏い、憤怒に染まった表情でスグリを睨みつけている。
この光景はいったい、どういうことだろうか。今見ているこれは夢の光景だ。恐らく夢渡りの能力が見せている光景なのだろう。他の女神の巫女が歩む未来の結末の夢。
自分とヤクが敵対する可能性があるという、暫定的な未来の結末。どうしてそんなことになったのか。スグリの混乱をよそに、未来の姿の二人は一度間合いを取り話し合っていた。
「知るか、そんなこと」
自身の愛刀の切れ味と同じように、ヤクの言葉をスグリは鋭く切り伏せる。己の容赦のない言葉に、ヤクは面食らったようで言葉に詰まっていた。ヤクの動揺を無視したまま、未来の己が言葉を紡ぐ。
「自分は人間たちのせいで、女神のせいで、生きたかった人生を送れなかった。死のうとしても怖かった。死ねなかった死にたくなかった。それは自分のせいじゃなくて、全部周りのせいだ。そう言いたいなら、ごちゃごちゃと御託並べ立てるより、ハッキリそう言えばいいじゃないか。自分は悲劇のヒロインだ、とでも言いたいのか?」
その言葉からは一切の同情を感じられない。あろうことが己が、まさかヤクにそのような言葉の刃を向けるなんて。
全てたらればじゃないかと一蹴したスグリに、ヤクはようやく噛みつく。
「き、さま……!」
「それともあれか?俺の父上はお前のせいで死んだって責めればよかったのか?そう言ってくれれば、自分は贖罪の気持ちを感じて生きることができるからって?冗談じゃない。それこそ、お前は俺の父上の死を利用しようとした」
「違う!私は──」
「違わない。結局お前は自分が弱いってことを認めたくなくて、全部を周りのせいにしているだけだ。自分は悪くない、自分の考えは正しい、間違ってなんかいないと。……呆れた話だよな。それって、お前が忌み嫌っている人間と同じ思考じゃないか」
力を持たない人間と、何も変わらない。スグリの言葉に、ヤクが口籠る。
「な……」
「喜べよ、晴れてお前も意地汚い人間たちの仲間入りだ」
ようこそ、と未来のスグリは手を差し出しヤクを挑発する仕草を見せた。
そこまで聞いたスグリは、ある推測を立てた。ヤクに、己の憎しみの感情が爆発してしまう何かがあったのだろう、と。それはスグリと対立してしまうほどに大きく、制御ができないものに成長してしまったのだろう。
そしてそれに対して自分は今、説得しているのだろうか。
その後も会話は続く。
「ついでに言っておく。俺は、お前のせいで父上が死んだなんてこれっぽっちも思っていない。あれは事故だった。父上も覚悟のうえで、お前を生かしたんだ」
十二年前のあの惨劇の日を語る未来の自分。そう、今でも思い出す。
あの日父上──アマツは命の限り、最後まで。ヤクを守ろうとしていた。暴走したヤクを必死に守り抜き、命を落とした。
「確かに俺はお前から逃げた。お前が苦しんでいるとわかっていても、お前自身なら乗り越えてくれるだろうと甘えてしまった。それは俺の落ち度だ。でもな、だからこそもう逃げないと決めたし、過去は振り返らないと誓った。受け入れて前へ進まなきゃ、成長しないんだよ」
未来の自分が言った逃げているとは、今の己のことなのだろう。確かに今、スグリはヤクの変化が受け入れられず、逃げてしまっている。
「否定ばかりしたって、何も変わらない。過去の自分が救われたいからって、そればかり見つめて必死に守ろうとして。そんな生き方俺はまっぴらだし、そんなのは生きているんじゃない。ただ生かされているだけだ」
彼の言葉は、今の自分には胸に突き刺さった。
過去ばかり見て生きているのは、生きているのではなく生かされているだけ。その生き方はまるで、今の自分そのものだ。過去の姿のヤクだけを見て、そんな彼に戻ってほしいという考えを持ったまま生きている自分。現状の自分を指摘しているかのような言葉に、スグリもまた息を呑む。
「あとな、何も言わないくせにわかってくれなんて、傲慢なんだよ。そんな察してちゃんに構っていられるほど、時間なんてないんだ大馬鹿野郎」
吐き出される言葉の羅列に、ヤクの感情が酷く言い難いものになる。
憤怒、悲哀、落胆、悔恨、絶望。それらをドロドロに混ざり合ったかのような、しかしそのどれでもないような。口を閉ざし、まるで自分の中で何かを導き出すかのように、視線を地面に落とす。彼の視線の先には小刀があった。自分が差し出した者だろうか。
ヤクの無言の抵抗をいいことに、未来の自分はさらに挑発の言葉を重ねる。
「どうした。ここまで言われて悔しいか?たかが人間に馬鹿にされて、相当頭にきてるだろう?術が使えないなら、ほら。その小刀貸してやるって言っただろ。ただそうなったら、俺とて容赦しないがな」
スグリの言葉に意を決したかのように、ゆらりと動いた未来のヤクは、目の前に落ちている小刀を拾う。ゆっくりと鞘から刃を抜きながら、何かを呟いたように見えた。
刃は刃こぼれもなく、きらりと美しく輝きを放っている。
ヤクが、ぐ、と柄を握る。
「それを……お前は……!」
感情が鬩ぎあっているのか、表情が定まらない様子のヤク。
そして彼は何かと決別するように駆け出す。悲しく響く咆哮を、上げながら。
「あぁああ──!!」
向かってくるヤクに対して、未来の己も抜刀の構える。
己を殺そうとして突撃してくる友人を、切り伏せるために。
その光景を前にして、スグリは反射的にやめろと叫ぶ。その瞬間白い光が視界を覆うのであった。
0
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる