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プロローグ
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友人に呼ばれて行ったサッカー部の試合。
応援で観戦をしたその日、スマホをなくした。
一緒に来た子は帰った後で、音を鳴らしてもらうこともできなくて
沢山並ぶ座席の下を覗いていたら「どうしたの?」と言う声が聞こえた。
「スマホ、なくして」
半泣きのまま見上げた先にいたのは赤い髪の男の子。
どこかで見た気がしたけれど
スマホのことでいっぱいいっぱいの私は、それ以上考えられなかった。
「運営の人には?」
「聞いた」
スマホの届けはないと言われた。
だから座ってた場所に忘れたかもと戻って来たけど、全然見当たらなくて。
赤髪の男の子は私のそばをキョロキョロと見回して、「確かにないね」と言うと手をポケットに入れた。
「鳴らす?」
「え?」
「俺の使って良いから」
にっこりと笑う彼がスマホを見せてそう提案した。
私はお礼を言って番号を入力すると、私のスマホの音が鳴る。
その出所は、どうやら二段ほど下の列の席。
その椅子の下で着信音を奏でる影を見つけた。
「あったーー!!!」
駆け寄って拾い上げたそれは、確かに私のスマホだった。
このカバーに着信音、間違いない。
「お! よかったー!」
「本当にありがとう!」
一緒に喜んでくれる彼にお礼を言いながらスマホを返す。
「多分落とした後で誰かに蹴っ飛ばされたのかもね」
「うん、そうかも。でも見つかって本当によかったぁ……!!」
「うんうん!」
見つかった安堵で頭が回るようになったのか、話していて急に気が付いた。
この人、さっきの試合でうちの学校に勝った、相手校の選手だ。
あまりにもカラフルな髪色の選手たちで友達と困惑していたからよく覚えている。
「ねえ」
「ん?」
「こんな所にいて平気なの?」
試合の後は普通反省会とかあるのだろうし
何よりここは、彼からしたら敵側の応援席だったはずだし……
そもそも何でこの人はここにいるのだろうか。
「あーーー!!! そうだった!!」
大声を上げる彼にびっくりして固まる。
彼は慌てたように出口に走り出すと、急にピタリと立ち止まってこちらに振り向いた。
「ねえーーー!!」
「はーい?」
「名前教えてーーー!!!」
それが、私と彼の出会い。
「杉崎陽和ーー!!」
「俺ーー! トウマサイキーー!!」
彼が大きく手を振った挨拶。
「よろしくねーーー!!」
その言葉の意味がわかったのは
家についてからだった。
《向こうの君と、ふたり星》
-プロローグ-
その日から、毎日のように電話が鳴った。
「毎日!?」
「ほぼ毎日かなー」
「は? やばくない?」
友達の湊が嫌そうな顔で「ストーカーじゃん」と言い放つ。
クールな湊からすれば、そうなのかもしれない。
でも、私はうーんと唸って。
「私が嫌ならそうなんだと思うんだけど」
「嫌じゃないの!?」
めちゃくちゃ驚かれた。
「だって、話してると楽しいんだよ」
寝るまでの間、ずっと話してるくらい。
寝るのがもったいなく感じて
たまにお互いうとうとしながら喋っちゃうくらい。
楽しくて仕方がない。
「好きってこと?」
「そういうのではないけど」
良い感じの人だとは思う。
気にもなる。
でもそれが異性としてなのか
友達としてなのかが
自分にもわからない。
「それで?」
「日曜一緒に出掛けることになったの」
「ええ!?」
また驚かれる。
「それ、もうデートじゃん」
「うーん、そんな感じじゃなかったんだよ」
あっけらかんと『日曜遊ぼうぜ~!!』って誘われて
何も考えずにいいよって答えた。
ぶっちゃけ何するのかもよくわかってない。
「軽い男だなあ」
湊は眉間にしわを寄せて嫌そうな顔をする。
「ねえ、何かあったらちゃんと言いな?」
「あはは、言う言う」
確かに軽そうではあるけど
そんな、失礼な感じの人ではないと思うのだ。
彩輝君とは、電話だけであれ以来一度も会ってない。
でも、とっても目立つ赤い髪は覚えてる。
ニコニコと笑う爽やかな笑顔も忘れてはいない。
多分、間違えることはない。
なのに何でだろう。
日曜なんてまだ先なのにちょっと緊張してる。
男の子と二人で出かけるのなんか、初めてだからかな。
~♪
夕食後、ベッドの上でいきなり鳴ったスマホに慌てて反応する。
いつもの電話だ。
「も、もしもし?」
『もっしもーし』
いつもと同じ元気な声。
こっちの気持ちまで明るくなってくる。
会話の内容なんて他愛無いことばかり。
先生のことや友達のこと。
そういうのをたくさん話す。
特別な用事なんて、あまりなくて。
でもそれも、なんか心地良い。
『ねえねえ、日曜さ、行きたいところある?』
「え、うーん」
彩輝くんの質問で、少し考える。
最近行きたいところといえば
期間限定のケーキが美味しいと噂の喫茶店。
湊がケーキを食べられないので誘っていいものか迷ってた場所だ。
「彩輝くんってケーキ平気?」
『へーきへーき! むしろ好きなほう!!』
「じゃあ、私の学校の近くにある喫茶店行かない?」
『お、いいね~』
ノリが良くて明るくて、気が合うのか何なのか、大体肯定してくれる。
話していてとても楽しい。
お互い番号しか知らないから
お互いそれ以上聞かないから
ずっと電話が続いてる。
どれだけ些細なことでも
必ず電話がかかってくる。
文字で取ることのない連絡を
何故か心地よく感じてる。
(文字だけになったら声を聞くことなんて、なくなるのかな)
そう考えてしまうのは
話すのが楽しいからだけじゃなくて
声を、聞きたいからなのかもしれない。
(良い声なんだよね。明るくて、元気で……)
どこか、男らしくて、かっこよくて。
所謂、好みの声ってことなんだろうか。
気にしたことなんてないから、自分でもよくわからないけど。
この時間がなくなるのは、なんか、嫌だなあ。
応援で観戦をしたその日、スマホをなくした。
一緒に来た子は帰った後で、音を鳴らしてもらうこともできなくて
沢山並ぶ座席の下を覗いていたら「どうしたの?」と言う声が聞こえた。
「スマホ、なくして」
半泣きのまま見上げた先にいたのは赤い髪の男の子。
どこかで見た気がしたけれど
スマホのことでいっぱいいっぱいの私は、それ以上考えられなかった。
「運営の人には?」
「聞いた」
スマホの届けはないと言われた。
だから座ってた場所に忘れたかもと戻って来たけど、全然見当たらなくて。
赤髪の男の子は私のそばをキョロキョロと見回して、「確かにないね」と言うと手をポケットに入れた。
「鳴らす?」
「え?」
「俺の使って良いから」
にっこりと笑う彼がスマホを見せてそう提案した。
私はお礼を言って番号を入力すると、私のスマホの音が鳴る。
その出所は、どうやら二段ほど下の列の席。
その椅子の下で着信音を奏でる影を見つけた。
「あったーー!!!」
駆け寄って拾い上げたそれは、確かに私のスマホだった。
このカバーに着信音、間違いない。
「お! よかったー!」
「本当にありがとう!」
一緒に喜んでくれる彼にお礼を言いながらスマホを返す。
「多分落とした後で誰かに蹴っ飛ばされたのかもね」
「うん、そうかも。でも見つかって本当によかったぁ……!!」
「うんうん!」
見つかった安堵で頭が回るようになったのか、話していて急に気が付いた。
この人、さっきの試合でうちの学校に勝った、相手校の選手だ。
あまりにもカラフルな髪色の選手たちで友達と困惑していたからよく覚えている。
「ねえ」
「ん?」
「こんな所にいて平気なの?」
試合の後は普通反省会とかあるのだろうし
何よりここは、彼からしたら敵側の応援席だったはずだし……
そもそも何でこの人はここにいるのだろうか。
「あーーー!!! そうだった!!」
大声を上げる彼にびっくりして固まる。
彼は慌てたように出口に走り出すと、急にピタリと立ち止まってこちらに振り向いた。
「ねえーーー!!」
「はーい?」
「名前教えてーーー!!!」
それが、私と彼の出会い。
「杉崎陽和ーー!!」
「俺ーー! トウマサイキーー!!」
彼が大きく手を振った挨拶。
「よろしくねーーー!!」
その言葉の意味がわかったのは
家についてからだった。
《向こうの君と、ふたり星》
-プロローグ-
その日から、毎日のように電話が鳴った。
「毎日!?」
「ほぼ毎日かなー」
「は? やばくない?」
友達の湊が嫌そうな顔で「ストーカーじゃん」と言い放つ。
クールな湊からすれば、そうなのかもしれない。
でも、私はうーんと唸って。
「私が嫌ならそうなんだと思うんだけど」
「嫌じゃないの!?」
めちゃくちゃ驚かれた。
「だって、話してると楽しいんだよ」
寝るまでの間、ずっと話してるくらい。
寝るのがもったいなく感じて
たまにお互いうとうとしながら喋っちゃうくらい。
楽しくて仕方がない。
「好きってこと?」
「そういうのではないけど」
良い感じの人だとは思う。
気にもなる。
でもそれが異性としてなのか
友達としてなのかが
自分にもわからない。
「それで?」
「日曜一緒に出掛けることになったの」
「ええ!?」
また驚かれる。
「それ、もうデートじゃん」
「うーん、そんな感じじゃなかったんだよ」
あっけらかんと『日曜遊ぼうぜ~!!』って誘われて
何も考えずにいいよって答えた。
ぶっちゃけ何するのかもよくわかってない。
「軽い男だなあ」
湊は眉間にしわを寄せて嫌そうな顔をする。
「ねえ、何かあったらちゃんと言いな?」
「あはは、言う言う」
確かに軽そうではあるけど
そんな、失礼な感じの人ではないと思うのだ。
彩輝君とは、電話だけであれ以来一度も会ってない。
でも、とっても目立つ赤い髪は覚えてる。
ニコニコと笑う爽やかな笑顔も忘れてはいない。
多分、間違えることはない。
なのに何でだろう。
日曜なんてまだ先なのにちょっと緊張してる。
男の子と二人で出かけるのなんか、初めてだからかな。
~♪
夕食後、ベッドの上でいきなり鳴ったスマホに慌てて反応する。
いつもの電話だ。
「も、もしもし?」
『もっしもーし』
いつもと同じ元気な声。
こっちの気持ちまで明るくなってくる。
会話の内容なんて他愛無いことばかり。
先生のことや友達のこと。
そういうのをたくさん話す。
特別な用事なんて、あまりなくて。
でもそれも、なんか心地良い。
『ねえねえ、日曜さ、行きたいところある?』
「え、うーん」
彩輝くんの質問で、少し考える。
最近行きたいところといえば
期間限定のケーキが美味しいと噂の喫茶店。
湊がケーキを食べられないので誘っていいものか迷ってた場所だ。
「彩輝くんってケーキ平気?」
『へーきへーき! むしろ好きなほう!!』
「じゃあ、私の学校の近くにある喫茶店行かない?」
『お、いいね~』
ノリが良くて明るくて、気が合うのか何なのか、大体肯定してくれる。
話していてとても楽しい。
お互い番号しか知らないから
お互いそれ以上聞かないから
ずっと電話が続いてる。
どれだけ些細なことでも
必ず電話がかかってくる。
文字で取ることのない連絡を
何故か心地よく感じてる。
(文字だけになったら声を聞くことなんて、なくなるのかな)
そう考えてしまうのは
話すのが楽しいからだけじゃなくて
声を、聞きたいからなのかもしれない。
(良い声なんだよね。明るくて、元気で……)
どこか、男らしくて、かっこよくて。
所謂、好みの声ってことなんだろうか。
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この時間がなくなるのは、なんか、嫌だなあ。
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