悪女の王子様ーTry the gameー

スイートポテト

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届かない思い

佐野が執事になった日

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 ビルに自ら落ちた男の元へと走り近づいた。彼の無惨な姿を見て、ギャラリーが溢れかえる中、佐野は警察に電話を行った。


「佐野です。護送車事故の犯人が岡山市のビルの屋上から飛び降りました」

 電話の先で現場の警察官は淡々と状況を聞く。犯人の顔を聞かれた時、何故か佐野の頭には笑みしか見た事がないのはずだが、邪悪な睨み顔しか思い浮かばなかった。



 調査を進める中、犯人の名前が澤田 康弘だということがわかった。澤田は科学技術者として優秀な成績を収めていた。しかし5年前から科学者をやめていた。その代わり死生自由科学界という怪しい研究所で研究員をしていた事があらわになった。生死を科学的に解明し、操るといういかにも怪しい団体だった。ただ、澤田を調べるにあたり恐ろしい事が判明していく。死生自由科学の研究所で澤田が行った研究には成果がでていた。内容は死んだ人間を蘇らせる方法などだ。内容は恐ろしい物ばかりであったが、数人の利用者がいたのにも関わらず全ての利用者が息を吹き返していた。佐野は澤田の研究報告書を見ながら、手を口元にそえた。


「なんだよ……これ……」

 それ以外にも足を付けずに相手を自分の好きな時に殺せる薬品を作ったり、ペイスメーカーを遠隔で操作できる装置を作ってしまったりと人の命を操る事ができるようだった。澤田は更なる高みを目指すため、生まれ変わりについての研究も重ねていた。

「生まれ変わり……そんなもの科学的根拠もないのに……何故この男は研究したんだ……?」

 ますます澤田の謎は深まるばかりだ。だが同時に根拠もないことに人々が引かれるのには何らかの可能性がある。澤田のメモにはそう書かれていた。ページをめくると人の死を科学的に分析されており、死ぬ瞬間に魂が身から離れるという原理を元素式で計算していた。指輪はその元素がくっつきやすいように先だった人間の元素に適合しやすい元素を後にたつ人間に発生し、転生後に想い人と共に転生できるようにするという物だった。

「そんな事が……」

しかし問題は指輪の使い方にあった。指輪は効果を使う為にまず死亡者の人間と近い魂になるために、他の人間の魂を元素式に置き換えコピーする必要があった。適正な元素を使う為には最低でも5人の命が必要とするらしい。

「……そうか……だからあの護送車事故を起こす必要があったのか……」

 しかしこの指輪を使うには佐野自身も5人の命を奪わなければならない……そんな事をしてまで妻に顔向けできるのか……佐野は指輪を手に取り、投げ捨てようとした途端。後ろから声が聞こえてきた。

「お願いします!息子のために、私達もやつを調べたいんです!」

「どうか1度だけでも私たちを中に入れてくれませんか?」

 外から聞こえてきたのは50代くらいの夫婦の声だった。佐野はその夫婦の元へ駆け寄ると、被害者の男の子の写真を持っていた。

「警察です。事件の捜査中に邪魔をされるのは困ります。なんなら、公務執行妨害で逮捕も有り得ますよ?」

 佐野が静かな声でそう呟くと、夫婦は頭を地べたに着けて土下座した。

「この通りです。お願いします……!」

 佐野が2人を追い返そうと手を伸ばした瞬間、旦那さんの口が開いた。

「私達はずっと、子どもに恵まれず、生きていました。30代半ばで子どもを諦めようと二人で話していた時に、ようやくうちの子が産まれたんです」

 男は涙ながらに息子の遺影を握りしめた。そんな旦那を見ていた妻も続けて口を開けた。

「あの子は少し口が悪いところはあるけれど、正義感の強いいい子なんです……彼女がストーカーされてるからって、ストーカーを1人で調べたり、家に行って彼女を守ったりと優しい子なんです……なのに……あの子は彼女のストーカーに殺されたと聞いて……」

 唸り声を上げながらその場に座り込んでしまった妻を見て、佐野の心は少し動いた。自分にも子どもが恵まれず、妻とやっとの思いで産まれて来る子を今か今かと待っていたのに、澤田の運転する護送車に引かれたのだ。やるせない気持ちが疼いていたし、自分も澤田を許せないと思う。だがどうすれば無念は晴れるのか……分かっていた。

「私が息子さんにもう一度合わせられると言えば、貴女方は協力していただけますか?」

 夫婦は顔を見合わせると何度も頷いた。佐野は自分の知り合いの天才科学者。星野 空の元へと足をむけた。

「はぁ!?心中して転生先を同じ場所に設定できる指輪をつくれ!?」

「何度も言わせるな」

「冗談やめろよ~そんなこと出来るわけないじゃん……」

 全く取り合って貰えない空の姿に腹を立てながら佐野は指輪を投げつけた。

「だったら、これと同じ物を5つ作ってくれ」

 空は佐野の指輪をじっと見つめるとそれを分解し始めた。中の部品を見ながら顎を手で添える。

「これ……どの部品も組み立て方を間違えれば効果を発揮しなくなりそうだ……」

 佐野は空の顔を見て心配げに聞くも、空はニコリと笑みを浮かべると首を縦に振った。

 物の2.3時間後の事だった。空は6つの指輪を佐野に手渡した。

「生物の原子組み替えなんてアニメの世界かなんかだと思ってたけど、案外作ってみると楽しかったわ!」

 佐野は指輪を薬指にはめると、空を見て感謝を述べた。帰る道へと足を踏み入れた時、空が呼び止めた。

「なぁ、そんなの作って歩は何がしたいんだ?」

 空はポッケに手を入れながら、少し悲しげな表情で佐野の後ろ姿を見ている。佐野は振り返らずに言った。

「俺は俺の妻を殺した澤田を許さないし、妻を取り戻しに行く。ただそれだけだ」


 重い扉をしめ、佐野は夫婦の待つマンションへと向かった。

これが2人の最後の言葉となる……



 マンションに着き、自室の扉を開けると、妻の入った培養液があった。

「この日が来たらと思って残しておきましたが……まさかこんな事になるとは……」

 夫婦は唖然としながらも佐野の妻への愛を身に染みて感じていた。

「大切にされていたんですね……」

「はい……今も変わらず愛しています。」

 夫婦は顔を見せ合うと、火葬された後の息子の遺骨を見せた。

「これで成功するかは分かりませんが……よろしくお願いします。」

 佐野は首を縦に振ると、自分の部屋の片隅にあるもうひとつの培養液から澤田の遺体を取り出した。

「澤田……!?」

「見るだけで腹が立つ……!」

 佐野は下を向いたまま2人に尋ねた。

「いいのですか?このまま奴を生贄にしなくても、想い人の元へはいけます。私の澤田を許せないという我儘の為に、お2人も地の果てまで追いかける必要はないんですよ?」

 佐野の言葉に夫婦は少し悲しげに笑みを浮かべた。

「確かに私達はやつと違う世界で息子に幸せに生きて欲しいと願う心もあります。でも、澤田が私の息子の彼女の元へ追いかけて言ったと聞いて、思ったんです。息子はここで、あの子を追いかけられなかった自分を悔やむだろうと……でもせめて、もしも転生先であの子を見つけたら、あの子を守ってやってください」

 夫婦は頭を深く下げると、黙って口角をあげた。佐野は小さく笑うと、頷いた。部屋に銃弾の音が響き、3人は静かに眠りについた。


 目が覚めると、佐野はパープルという小さな少女に仕える執事になっていたのだった。

 
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