悪女の王子様ーTry the gameー

スイートポテト

文字の大きさ
10 / 11
変わらない想いと共に

マーティスの思いー2ー

しおりを挟む
 マーティスは、パープルである俺を椅子までエスコートした。

「どうぞ」

 俺は白い椅子に腰かけると、マーティスは反対側に回り込み、向かい側の席に着いた。

「今日の紅茶はアップルティーと、うちのシェフ自慢のケーキの盛り合わせです。ゆっくり楽しんでお召し上がりください」

 俺はマーティスから手渡されたケーキを見た。赤いいちごが日に照らされてキラキラと輝き、クリームがふんわりと乗っている。1口サイズに切り分け、口に運ぶと、口の中で甘いホイップの味と、いちごの甘酸っぱい味がなんとも絶妙に絡み合っていた。

「美味しい……!」

 俺が思わずその言葉を口にすると、マーティスは俺の顎に目を向けた。白いホイップがついているのに気がつくと、人差し指でとった。

「パープルさま、折角の可愛いお顔が台無しですよ」

 マーティスの笑顔をみて、何だか腑に落ちないと感じた。

「なんでそんなに大人ぶってるの?」

 マーティスはその言葉を聞いて表をつかれた。他人から、ましてや同じ歳の俺からそんな言葉を言われたことに驚いたのだ。俺はマーティスの顔も見ずに話し続けた。

「私はあなたが子供のように笑う顔が見たいわ」

 俺はマーティスの手を引き、駆け出した。


ーーーーーーーーーーーーーーー

 数分走った先には、大きな川が見えてきた。そこには小さな魚達がふよふよと気持ちよさそうに泳いでいた。俺は靴を投げ捨て、水の中へと飛び込んだ。

「い、いけません!パープルさま。折角の美しいドレスが台無しです……!」

 俺は近寄るマーティスの手を引き、水の中へと足を引きずった。


「ふふっ、折角なのだから水遊びをすればいいのよ」

 マーティスは濡れる靴の感触に不快感を覚えながら、さらに深く、深くと水の中に歩み寄る。すると、足元には無数の魚がよってきていた。赤や青の美しい鱗を持つ魚。足をパクパクと舐める小さな魚達。どれもマーティスにとって初めての体験だった。ふと近くの魚に触れようと水に手を入れると、魚たちは水を叩いて逃げた。

「魚に触れたいのですね、少しお待ちを」

 俺はそう言うと、両手を重ね、目を瞑って祈りを捧げた。世界樹を思い浮かべ、願うように語りかけた。

「世界を守りし力の源よ、その力を示し、我の願いを聞きたまえ」

 黄金の粒子が辺り一面に広がると、森の水が噴水のように吹き出した。そして水を伝って泳いできた魚達が楽しそうに跳ね上がった。

「凄い……」

 マーティスがその場に立ち尽くしていると、1匹の魚がマーティスの近くまで泳いできた。そして自分の体をマーティスの手のひらの上に乗せた。

「……!パープル様!みて?魚が僕の所に来てくれた!」

 マーティスのはしゃぐ姿を見た俺は嬉しかった。彼が会って初めて見せた子どもらしい1面。普段は誰にも見せていないのであろう。子どものようにはしゃぐその姿は愛らしい表情をしていた。

「やっと笑ってくれましたね」

 マーティスは俺の言葉を聞き、手を顔に当てた。俺はマーティスの顔をのぞきこんで笑った。

「あなたはそんな素敵な顔を見せる方なのですね」

 俺が思わず笑みをこぼすと、マーティスは顔を少し赤らめながら薄く笑いかけた。

「僕がこの様な笑みを浮かべるのは、あなたが久しぶりです」

 俺がその笑顔を見ていると、林の向こう側から小さな少女の声が聞こえた。

「パステリア王国を守りし癒しの大樹よ、その力を示し、悪たるものの行く手をはばめ」

 その言葉が聞き届けられたように銀色の粒子は空に輝き、雲を黒く染めた。すると雷の音が鳴り響き始める。俺はマーティスの手を引き、水辺から引きあげた。

「早く建物のある場所に行きましょう」

 俺が前に走り出すと、目の前に雷が落ちてきた。俺が怯んでその場で尻もちを着いていると、マーティスが手を引いて走ってくれる。

「……ちっ……これじゃあにえちゃんにも当たってしまう……」

 雷は俺に目掛けて何度も何度も落ちるが、その度にマーティスは、雷を避け、走った。

 「こっちだよ!」

 目の前には小さな小屋が見えた。マーティスは小屋目掛けて走っていると、少女は両手を重ね、再度唱えた。

「さぁ、悪の王よ。おいでなさい……私のこの美しいダイヤのネックレスと引替えに、あの二人の間を引き裂くのです」

 ダイヤのネックレスは黒く暗黒な光を纏うと、消えた。その瞬間、黒い水が一雫。2人の手にかかると、指が解けた。

「パープル様……!」

 少女はその隙を狙い、雷を放つ。

「パープル様……!危ない!!」

 マーティスが叫んだ瞬間。光の速さで走り、俺を抱えた男が一人いた。執事の佐野ランだ。佐野は俺を小屋まで連れていった。俺は一連の流れに気を失い、倒れた。少女は物陰から不気味な笑みを見せて消えた。
「佐野歩……指輪は2つしか渡してないのに、僕を追いかけるために死体の僕に指輪をつけるとは……でも君の嫁もここに転生している……という事は君があの指輪を作ったのかい?どちらにしても君は僕の予想を遥かに超えてくる……面白い男だ……」

 少女は森の奥へと消えていった。マーティスと佐野は小屋の中に入り、ベットに寝かせた俺の意識が戻るのを待っていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

転生『悪役』公爵令嬢はやり直し人生で楽隠居を目指す

RINFAM
ファンタジー
 なんの罰ゲームだ、これ!!!!  あああああ!!! 本当ならあと数年で年金ライフが送れたはずなのに!!  そのために国民年金の他に利率のいい個人年金も掛け、さらに少ない給料の中からちまちまと老後の生活費を貯めてきたと言うのに!!!!  一銭も貰えないまま人生終わるだなんて、あんまりです神様仏様あああ!!  かくなる上はこのやり直し転生人生で、前世以上に楽して暮らせる隠居生活を手に入れなければ。 年金受給前に死んでしまった『心は常に18歳』な享年62歳の初老女『成瀬裕子』はある日突然死しファンタジー世界で公爵令嬢に転生!!しかし、数年後に待っていた年金生活を夢見ていた彼女は、やり直し人生で再び若いままでの楽隠居生活を目指すことに。 4コマ漫画版もあります。

悪役令嬢のビフォーアフター

すけさん
恋愛
婚約者に断罪され修道院に行く途中に山賊に襲われた悪役令嬢だが、何故か死ぬことはなく、気がつくと断罪から3年前の自分に逆行していた。 腹黒ヒロインと戦う逆行の転生悪役令嬢カナ! とりあえずダイエットしなきゃ! そんな中、 あれ?婚約者も何か昔と態度が違う気がするんだけど・・・ そんな私に新たに出会いが!! 婚約者さん何気に嫉妬してない?

リリィ=ブランシュはスローライフを満喫したい!~追放された悪役令嬢ですが、なぜか皇太子の胃袋をつかんでしまったようです~

汐埼ゆたか
恋愛
伯爵令嬢に転生したリリィ=ブランシュは第四王子の許嫁だったが、悪女の汚名を着せられて辺境へ追放された。 ――というのは表向きの話。 婚約破棄大成功! 追放万歳!!  辺境の地で、前世からの夢だったスローライフに胸躍らせるリリィに、新たな出会いが待っていた。 ▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃ リリィ=ブランシュ・ル・ベルナール(19) 第四王子の元許嫁で転生者。 悪女のうわさを流されて、王都から去る   × アル(24) 街でリリィを助けてくれたなぞの剣士 三食おやつ付きで臨時護衛を引き受ける ▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃ 「さすが稀代の悪女様だな」 「手玉に取ってもらおうか」 「お手並み拝見だな」 「あのうわさが本物だとしたら、アルはどうしますか?」 ********** ※他サイトからの転載。 ※表紙はイラストAC様からお借りした画像を加工しております。

〈本編完結〉わたくしは悪役令嬢になれなかった

結塚 まつり
ファンタジー
「返しなさい! その体はわたくしのものよ!」 ある日ルミエラが目覚めると、転生者だという女に体を奪われていた。ルミエラは憤慨し、ありとあらゆる手を尽くして己の体を取り戻そうとする。 これは転生者に人生を奪われたひとりの少女のお話。

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

処理中です...