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変わらない想いと共に
マーティスの思いー2ー
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マーティスは、パープルである俺を椅子までエスコートした。
「どうぞ」
俺は白い椅子に腰かけると、マーティスは反対側に回り込み、向かい側の席に着いた。
「今日の紅茶はアップルティーと、うちのシェフ自慢のケーキの盛り合わせです。ゆっくり楽しんでお召し上がりください」
俺はマーティスから手渡されたケーキを見た。赤いいちごが日に照らされてキラキラと輝き、クリームがふんわりと乗っている。1口サイズに切り分け、口に運ぶと、口の中で甘いホイップの味と、いちごの甘酸っぱい味がなんとも絶妙に絡み合っていた。
「美味しい……!」
俺が思わずその言葉を口にすると、マーティスは俺の顎に目を向けた。白いホイップがついているのに気がつくと、人差し指でとった。
「パープルさま、折角の可愛いお顔が台無しですよ」
マーティスの笑顔をみて、何だか腑に落ちないと感じた。
「なんでそんなに大人ぶってるの?」
マーティスはその言葉を聞いて表をつかれた。他人から、ましてや同じ歳の俺からそんな言葉を言われたことに驚いたのだ。俺はマーティスの顔も見ずに話し続けた。
「私はあなたが子供のように笑う顔が見たいわ」
俺はマーティスの手を引き、駆け出した。
ーーーーーーーーーーーーーーー
数分走った先には、大きな川が見えてきた。そこには小さな魚達がふよふよと気持ちよさそうに泳いでいた。俺は靴を投げ捨て、水の中へと飛び込んだ。
「い、いけません!パープルさま。折角の美しいドレスが台無しです……!」
俺は近寄るマーティスの手を引き、水の中へと足を引きずった。
「ふふっ、折角なのだから水遊びをすればいいのよ」
マーティスは濡れる靴の感触に不快感を覚えながら、さらに深く、深くと水の中に歩み寄る。すると、足元には無数の魚がよってきていた。赤や青の美しい鱗を持つ魚。足をパクパクと舐める小さな魚達。どれもマーティスにとって初めての体験だった。ふと近くの魚に触れようと水に手を入れると、魚たちは水を叩いて逃げた。
「魚に触れたいのですね、少しお待ちを」
俺はそう言うと、両手を重ね、目を瞑って祈りを捧げた。世界樹を思い浮かべ、願うように語りかけた。
「世界を守りし力の源よ、その力を示し、我の願いを聞きたまえ」
黄金の粒子が辺り一面に広がると、森の水が噴水のように吹き出した。そして水を伝って泳いできた魚達が楽しそうに跳ね上がった。
「凄い……」
マーティスがその場に立ち尽くしていると、1匹の魚がマーティスの近くまで泳いできた。そして自分の体をマーティスの手のひらの上に乗せた。
「……!パープル様!みて?魚が僕の所に来てくれた!」
マーティスのはしゃぐ姿を見た俺は嬉しかった。彼が会って初めて見せた子どもらしい1面。普段は誰にも見せていないのであろう。子どものようにはしゃぐその姿は愛らしい表情をしていた。
「やっと笑ってくれましたね」
マーティスは俺の言葉を聞き、手を顔に当てた。俺はマーティスの顔をのぞきこんで笑った。
「あなたはそんな素敵な顔を見せる方なのですね」
俺が思わず笑みをこぼすと、マーティスは顔を少し赤らめながら薄く笑いかけた。
「僕がこの様な笑みを浮かべるのは、あなたが久しぶりです」
俺がその笑顔を見ていると、林の向こう側から小さな少女の声が聞こえた。
「パステリア王国を守りし癒しの大樹よ、その力を示し、悪たるものの行く手をはばめ」
その言葉が聞き届けられたように銀色の粒子は空に輝き、雲を黒く染めた。すると雷の音が鳴り響き始める。俺はマーティスの手を引き、水辺から引きあげた。
「早く建物のある場所に行きましょう」
俺が前に走り出すと、目の前に雷が落ちてきた。俺が怯んでその場で尻もちを着いていると、マーティスが手を引いて走ってくれる。
「……ちっ……これじゃあにえちゃんにも当たってしまう……」
雷は俺に目掛けて何度も何度も落ちるが、その度にマーティスは、雷を避け、走った。
「こっちだよ!」
目の前には小さな小屋が見えた。マーティスは小屋目掛けて走っていると、少女は両手を重ね、再度唱えた。
「さぁ、悪の王よ。おいでなさい……私のこの美しいダイヤのネックレスと引替えに、あの二人の間を引き裂くのです」
ダイヤのネックレスは黒く暗黒な光を纏うと、消えた。その瞬間、黒い水が一雫。2人の手にかかると、指が解けた。
「パープル様……!」
少女はその隙を狙い、雷を放つ。
「パープル様……!危ない!!」
マーティスが叫んだ瞬間。光の速さで走り、俺を抱えた男が一人いた。執事の佐野だ。佐野は俺を小屋まで連れていった。俺は一連の流れに気を失い、倒れた。少女は物陰から不気味な笑みを見せて消えた。
「佐野歩……指輪は2つしか渡してないのに、僕を追いかけるために死体の僕に指輪をつけるとは……でも君の嫁もここに転生している……という事は君があの指輪を作ったのかい?どちらにしても君は僕の予想を遥かに超えてくる……面白い男だ……」
少女は森の奥へと消えていった。マーティスと佐野は小屋の中に入り、ベットに寝かせた俺の意識が戻るのを待っていた。
「どうぞ」
俺は白い椅子に腰かけると、マーティスは反対側に回り込み、向かい側の席に着いた。
「今日の紅茶はアップルティーと、うちのシェフ自慢のケーキの盛り合わせです。ゆっくり楽しんでお召し上がりください」
俺はマーティスから手渡されたケーキを見た。赤いいちごが日に照らされてキラキラと輝き、クリームがふんわりと乗っている。1口サイズに切り分け、口に運ぶと、口の中で甘いホイップの味と、いちごの甘酸っぱい味がなんとも絶妙に絡み合っていた。
「美味しい……!」
俺が思わずその言葉を口にすると、マーティスは俺の顎に目を向けた。白いホイップがついているのに気がつくと、人差し指でとった。
「パープルさま、折角の可愛いお顔が台無しですよ」
マーティスの笑顔をみて、何だか腑に落ちないと感じた。
「なんでそんなに大人ぶってるの?」
マーティスはその言葉を聞いて表をつかれた。他人から、ましてや同じ歳の俺からそんな言葉を言われたことに驚いたのだ。俺はマーティスの顔も見ずに話し続けた。
「私はあなたが子供のように笑う顔が見たいわ」
俺はマーティスの手を引き、駆け出した。
ーーーーーーーーーーーーーーー
数分走った先には、大きな川が見えてきた。そこには小さな魚達がふよふよと気持ちよさそうに泳いでいた。俺は靴を投げ捨て、水の中へと飛び込んだ。
「い、いけません!パープルさま。折角の美しいドレスが台無しです……!」
俺は近寄るマーティスの手を引き、水の中へと足を引きずった。
「ふふっ、折角なのだから水遊びをすればいいのよ」
マーティスは濡れる靴の感触に不快感を覚えながら、さらに深く、深くと水の中に歩み寄る。すると、足元には無数の魚がよってきていた。赤や青の美しい鱗を持つ魚。足をパクパクと舐める小さな魚達。どれもマーティスにとって初めての体験だった。ふと近くの魚に触れようと水に手を入れると、魚たちは水を叩いて逃げた。
「魚に触れたいのですね、少しお待ちを」
俺はそう言うと、両手を重ね、目を瞑って祈りを捧げた。世界樹を思い浮かべ、願うように語りかけた。
「世界を守りし力の源よ、その力を示し、我の願いを聞きたまえ」
黄金の粒子が辺り一面に広がると、森の水が噴水のように吹き出した。そして水を伝って泳いできた魚達が楽しそうに跳ね上がった。
「凄い……」
マーティスがその場に立ち尽くしていると、1匹の魚がマーティスの近くまで泳いできた。そして自分の体をマーティスの手のひらの上に乗せた。
「……!パープル様!みて?魚が僕の所に来てくれた!」
マーティスのはしゃぐ姿を見た俺は嬉しかった。彼が会って初めて見せた子どもらしい1面。普段は誰にも見せていないのであろう。子どものようにはしゃぐその姿は愛らしい表情をしていた。
「やっと笑ってくれましたね」
マーティスは俺の言葉を聞き、手を顔に当てた。俺はマーティスの顔をのぞきこんで笑った。
「あなたはそんな素敵な顔を見せる方なのですね」
俺が思わず笑みをこぼすと、マーティスは顔を少し赤らめながら薄く笑いかけた。
「僕がこの様な笑みを浮かべるのは、あなたが久しぶりです」
俺がその笑顔を見ていると、林の向こう側から小さな少女の声が聞こえた。
「パステリア王国を守りし癒しの大樹よ、その力を示し、悪たるものの行く手をはばめ」
その言葉が聞き届けられたように銀色の粒子は空に輝き、雲を黒く染めた。すると雷の音が鳴り響き始める。俺はマーティスの手を引き、水辺から引きあげた。
「早く建物のある場所に行きましょう」
俺が前に走り出すと、目の前に雷が落ちてきた。俺が怯んでその場で尻もちを着いていると、マーティスが手を引いて走ってくれる。
「……ちっ……これじゃあにえちゃんにも当たってしまう……」
雷は俺に目掛けて何度も何度も落ちるが、その度にマーティスは、雷を避け、走った。
「こっちだよ!」
目の前には小さな小屋が見えた。マーティスは小屋目掛けて走っていると、少女は両手を重ね、再度唱えた。
「さぁ、悪の王よ。おいでなさい……私のこの美しいダイヤのネックレスと引替えに、あの二人の間を引き裂くのです」
ダイヤのネックレスは黒く暗黒な光を纏うと、消えた。その瞬間、黒い水が一雫。2人の手にかかると、指が解けた。
「パープル様……!」
少女はその隙を狙い、雷を放つ。
「パープル様……!危ない!!」
マーティスが叫んだ瞬間。光の速さで走り、俺を抱えた男が一人いた。執事の佐野だ。佐野は俺を小屋まで連れていった。俺は一連の流れに気を失い、倒れた。少女は物陰から不気味な笑みを見せて消えた。
「佐野歩……指輪は2つしか渡してないのに、僕を追いかけるために死体の僕に指輪をつけるとは……でも君の嫁もここに転生している……という事は君があの指輪を作ったのかい?どちらにしても君は僕の予想を遥かに超えてくる……面白い男だ……」
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