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変わらない想いと共に
マーティスの思いー3ー
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マーティスと佐野は気が気でなかった。雷に当たってはいないとはいえ、気を失い、目を覚まさない俺に不安がよぎる。ふと佐野はマーティスを見るなり、近くのティーポットにお茶を入れ始めた。
「マーティス様。気が気でないのは承知しておりますが、一旦ここはゆっくりと休まれてはいかがですか?」
佐野は持参していたアプリコットティーの入った袋を取り出すと、それをポットの中に入れた。紅茶の匂いが部屋中に広がり、心が穏やかになっていく一方で、マーティスは悲しげな表情を浮かべていた。
「すみません……今はそのような気分になれないのです」
佐野はマーティスの顔を見るなり、少し上を向いて声をこぼした。
「お嬢様なら、この様な時は自分を心配することはやめて欲しいと言われております。誰かが自分のために悲しんでいるのが気が収まらなくなると……だから、こーゆー時こそ落ち着いてお茶でも飲みながら本を読んでくれとのことですので、マーティス様も1度椅子に座ってゆっくりとしてみてください」
マーティスは佐野の言葉に渋々椅子に座った。アプリコットティーの匂いが強くなり、心が少しずつ暖かくなった。マーティスは佐野の顔を見るなり、申し訳なさそうに俯いた。
「あまりお気になさらないでください。マーティス様は一生懸命にパープル様を守ってくださいました。その気持ちは伝わっていますよ」
佐野がそうマーティスを諭すが、マーティスの心は晴れなかった。
「僕は……何も出来なくて寂しいて……初めて心から話せる友達ができたと思ったのに……」
マーティスが細々と呟くと、佐野はお茶をティーカップに入れ、マーティスの目の前に置いた。
「お嬢様を守ってくれて、今息があるのです。そのように悲観的になる必要はないです」
マーティスがアプリコットティーを手にすると、体の芯から甘い匂いに包まれるような気がした。佐野に笑みをむけ、小さく呟いた。
「パープル様の執事様は、とても優しいお方なのですね」
佐野はアプリコットティーを一口飲むと、ティーカップを皿の上に乗せた。天井を見上げ、ふうっと一息つく。
「そーですか?私は心をなくしたと思っています……あの人を失ってから、私の心はずっと冷たくなっている……」
遠くに思い浮かべる前世の自分。澤田が起こした護送車事故による過去を思い出しては、黒く心が染った。ふと佐野は俺とマーティスを交互に見ると、薄く笑った。
「貴方も私と同じように心が閉ざされているように感じていたのですが、それはどうやら思い過ごしだった様ですね」
マーティスはその言葉を聞くと、俺に目を向けた。自分が自然と笑みを浮かべられる相手は俺であると気づくと顔が暑くなった。マーティスの顔を見た佐野はやさしくえみをむける。
「お嬢様を心配なさる気持ちがあるなら、お嬢様に笑顔を向けてください。あなたの心からの笑顔を見たら、お嬢様もすごく喜ばれると思います」
「マーティス様。気が気でないのは承知しておりますが、一旦ここはゆっくりと休まれてはいかがですか?」
佐野は持参していたアプリコットティーの入った袋を取り出すと、それをポットの中に入れた。紅茶の匂いが部屋中に広がり、心が穏やかになっていく一方で、マーティスは悲しげな表情を浮かべていた。
「すみません……今はそのような気分になれないのです」
佐野はマーティスの顔を見るなり、少し上を向いて声をこぼした。
「お嬢様なら、この様な時は自分を心配することはやめて欲しいと言われております。誰かが自分のために悲しんでいるのが気が収まらなくなると……だから、こーゆー時こそ落ち着いてお茶でも飲みながら本を読んでくれとのことですので、マーティス様も1度椅子に座ってゆっくりとしてみてください」
マーティスは佐野の言葉に渋々椅子に座った。アプリコットティーの匂いが強くなり、心が少しずつ暖かくなった。マーティスは佐野の顔を見るなり、申し訳なさそうに俯いた。
「あまりお気になさらないでください。マーティス様は一生懸命にパープル様を守ってくださいました。その気持ちは伝わっていますよ」
佐野がそうマーティスを諭すが、マーティスの心は晴れなかった。
「僕は……何も出来なくて寂しいて……初めて心から話せる友達ができたと思ったのに……」
マーティスが細々と呟くと、佐野はお茶をティーカップに入れ、マーティスの目の前に置いた。
「お嬢様を守ってくれて、今息があるのです。そのように悲観的になる必要はないです」
マーティスがアプリコットティーを手にすると、体の芯から甘い匂いに包まれるような気がした。佐野に笑みをむけ、小さく呟いた。
「パープル様の執事様は、とても優しいお方なのですね」
佐野はアプリコットティーを一口飲むと、ティーカップを皿の上に乗せた。天井を見上げ、ふうっと一息つく。
「そーですか?私は心をなくしたと思っています……あの人を失ってから、私の心はずっと冷たくなっている……」
遠くに思い浮かべる前世の自分。澤田が起こした護送車事故による過去を思い出しては、黒く心が染った。ふと佐野は俺とマーティスを交互に見ると、薄く笑った。
「貴方も私と同じように心が閉ざされているように感じていたのですが、それはどうやら思い過ごしだった様ですね」
マーティスはその言葉を聞くと、俺に目を向けた。自分が自然と笑みを浮かべられる相手は俺であると気づくと顔が暑くなった。マーティスの顔を見た佐野はやさしくえみをむける。
「お嬢様を心配なさる気持ちがあるなら、お嬢様に笑顔を向けてください。あなたの心からの笑顔を見たら、お嬢様もすごく喜ばれると思います」
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コメントありがとうございますm(*_ _)m
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ありがとうございますm(*_ _)m
全ての作品お気に入り登録しました(^^)
コメントありがとうございます(*´ω`*)
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こちらも素敵な作品にお気に入り登録させていただきました(*^^*)💕
登録ありがとうございます(*´ω`*)