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第六節 えっ?アタシそろそろ疲れたんだけど?
第46話 ベルンと蛇と冠と鎚 後編その弐
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どおぉぉぉぉぉぉん
「がふッ。うっ、くっ」
苦しそうな表情のルミネの口から一言だけ言の葉が漏れていく。そしてルミネのその身体は黒い霧となって霧散していった。
「あ゛ぁ゛?それで終わりかぁ?あまりにもあっけねぇ!あ゛ぁ゛!全然大したこたぁ無かったなッ」
「あ゛ぁ゛!興醒めだ興醒め。だが、まいっか、とっとと我様は仕事に取り掛かるとすっか」
ルミネを倒し意気揚々とフヴェズルングが少女の元に戻ると、その顔には驚愕の2文字が浮かんでいた。
そこにはついさっき鎚の一撃を喰らい、黒い霧となって消えたハズのルミネの姿があったからだ。
一方でルミネは驚いているフヴェズルングに一切構う事なく、横たわっている少女を静かに抱きかかえると一目散に逃げていった。ルミネは驚きのあまりフリーズしているフヴェズルングに対して、一瞥もする事なく空へと舞い上がっていったのだ。
「あ゛あ゛ぁ゛?!おいッ待ちやがれッ!ソイツを置いてけッ!」
「あ゛ぁ゛ん!逃げんじゃねぇ!待てコラッ!!」
「あ゛ぁ゛!!我様をぶっ倒してから奪ってけって言っただろうがぁぁッ!」
フヴェズルングは理解が追い付かずフリーズしていたが、強制的に理解する事を自己解除すると、怒気を撒き散らし逃げるルミネの後を追い掛けていった。
ルミネは必死に空を翔び逃げていく。
少しでも遠くへ、そして、少女を生かす為に。
ルミネは「未来」を視てしまった。
ルミネは「未来」の否定を願った。
その結果、ルミネのもう1つの魔眼に掛けられた封印は、徐々に解かれつつあった。
ルミネが視た本来あるべきハズの「未来」はこうだった。
あの鎚の一撃で「ルミネは死に」その結果、「少女が生贄となり」、辺境伯の城を中心として「災いの蛇が召喚される」というモノだ。
強く否定を願った事でそうなるハズだったものは改変されていった。
然しながらそうならない為にも充てがうモノは必要だったのだ。
拠って「ルミネの死」には、急造した「魔力製素体」を充てがった。
その結果「生贄の少女」がいなくなった事で、「災いの蛇」の召喚は免れた。
あのまま災いの蛇が召喚されていれば、城の中にいる皆は壊滅的なダメージを負っていた。それこそが「ロキ」が考えていたワナだったのだ。
とは言うものの、少女を抱きかかえ空を翔ぶルミネを執拗に追い掛けるフヴェズルングに、再び捕らえられてしまった場合には元の木阿弥になってしまうだろう。
一方でフヴェズルングは荒れていた。荒れ狂っていた。
それはもう、怒気を吐き散らしながら荒れまくっていた。
何故ならば言わなくても分かるハズだが、せっかく捕まえた獲物が連れ攫われた事に……だ。
更には自身が殺したと思っていたハズの女が死んでおらず、その獲物が獲物を連れ去った事でより一層自身の感情に収まりがつかなくなっていた。
そして荒れに荒れまくった結果として、本能の赴くままに、鎚の権能を使うコトを決めた。
付け加えるならばその状況下に於いて鎚の権能を使う事を、半ば強制的に且つ、感情的に決めていた。
フヴェズルングの持つ「鎚」は「ロキ」が使っていた「グングニル」と同様に紛い物だった。
しかも今の使用者は「ロキ」ではなく、「フヴェズルング」である。
拠って「ロキ」が使用する以上に「鎚」が持ち得る権能を十全に使う事は出来ない。
更には少なからず何かしらのペナルティを負わなくてはならなかった。
それ故にフヴェズルングは鎚の持つ権能を使わずにただの武器としてだけ使っていたのだ。
少女はただ漠然と目が覚めた。更にはいま自分の置かれている状況に混乱していた。
ルミネが自分の事を抱きかかえて翔んでいる理由が、一体全体よく分からない。そもそもさっきまでルミネはいなかったハズだ。
なのに、今の自分はルミネに抱きかかえられている。
しかもルミネにお姫様抱っこで抱えられてるなんて、普通に恥ずかしかった。
「アタシがフヴェズルングと闘っている時に床が抜けて、そして…あれ?記憶がないッ?!えっと、恐らくだけどアタシ気を失ってたってコト?」
「んでもって、なんやかんやが起きてルミネに抱きかかえられている?なんやかんやが凄っごく気になるけど、そればっかりはどうしようもないわね。はぁ。でも、本当になんでお姫様抱っこなんだろ?そして、ルミネがとても凛々しく見える」
少女は頭の中で考えを纏めると、現状の確認の為にルミネに声を掛ける事にした。
「おはよルミネ。ところでアイツはどうなったの?」
「御子様、気付かれたんですのね!」
「うん、ルミネがアタシを助けてくれたのね、ありがとう」
「ところでアイツは?」
「わたくし達の後ろを執拗に追っかけて来ていますわ。全く無粋ですわよね」
「後ろ?ちょっとごめんねルミネ。後ろ見るから動くわよ?」
「えッ?!ちょッ、アレってもしかしてやっぱりそうだったんだ!?」
「どうかなさったんですの?」
少女は急いでルミネの後方を確認すると、自分達の後ろで鎚を構えて今にも投げようとしているフヴェズルングを見付けたのだった。
そしてそれは2人の危機と言えた。
「ロキが使っていた槍がグングニルなら、あの鎚は間違いないッ!ミョルニルだ!!あれを投げられたら、アタシ達は撃墜される!」
少女は「ロキ」との関連からフヴェズルングが持っている武器も北欧神話由来の武器だと考えた。
そもそもの話し、今回の連戦で「ロキ」を始めとする神族達は、神話級の武器を惜しげもなく使っていた。
恐らく全てがオリジナルではないだろうが、紛い物であってもその火力は群を抜き過ぎていたのだ。
だから尚更、フヴェズルングにその武器を使わせるワケにはいかなかった。
「ルミネいい?よく聞いて!アイツが持っている鎚が投げられたら、アタシ達は確実に撃墜されるわ。アレはそういう因果律を持っている武器よ。だから、アイツがアレを投げるまでに仕留めないといけないの!!」
「どうすればいいんですの?」
「アタシは今、オドをかなり消耗しているからルミネのオドを貸して欲しい」
「そんな事でいいのでしたらお好きなだけどうぞ」
「ありがとう、ルミネ」
「パスを繋ぐから変な感じかもしれないけど、我慢してね」
「えっ?ちょ、御子様、どこを触ってらっしゃるのッ!」
「あ、あんっ///」
「だめ、声が漏れちゃいますわ///」
少女はルミネの、たわわに膨らんだ双丘の中央に右手を置いた。とは言っても服の上からなので直接ではないが、ルミネの双丘はたわわに膨らんでいるので両方の丘に手が触れる事になる。
拠って、多少ながら少女はイライラしていたというのは言うまでもない。
そして別段疾しい気持ちがあるワケでもない。
ルミネの赤らんでいく顔と艶めかしい声は、少女のイラだちを解消する嗜虐心を少しだけくすぐったが、緊急事態なのでそれどころではない。
拠って悦に浸る事なく、ルミネと自分の間にパスをスグ繋いでいった。
だから、ルミネの口から艶めかしい声が漏れていたが、それは余談であるので深く触れてはいけない。
「我らが力、1つに交わらん。我が手に集え、紅き炎よ。我が手に集え、蒼き水よ。我が手に集え、翠緑の大樹よ。我が手に集え、鮮黄の大地よ。我が手に集え、金色なる果実よ。我が内なる全ての力よ、1つに混じりて我らが敵を討たん」
「うぅっあんッ///」
少女が詠唱を開始した。周囲のマナはそれに拠って急速に少女の手元に集まっていく。
一方で少女とのパスが繋がれたルミネは、自身のオドが急激な勢いで吸われていっているのが分かったが、どうしても艶めかしい声は止められなかった。
対するフヴェズルングは追い掛けている敵に、膨大な魔力が集まっていくのを感じ取り、自分のケツに火がついたコトを悟った。だからこそ、感情的に投げようと決めながらもペナルティを恐れるあまり投げられずにいたミョルニルを、ケツに火が付いた事に因って今度は理性的に投げる決意に変えた。
別に本能的にだろうと感情的にだろうと、理性的にだろうと投げる動作は変わりはないが、ペナルティは生命にも関わるので躊躇っていたに過ぎない。
だがこのまま敵の膨大な魔力に拠る魔術を喰らえば死ぬ可能性は非常に高い。拠って投げてペナルティを負ったとしても先に当てさえすれば生き残れる確率は高いと踏んだ。
要するにペナルティと生命を天秤に掛けた時に、生命の方がウェイトが重かったのだ。
「我が手に集いし大いなる力よ、空虚なる微睡みに揺蕩う力よ。全て切り裂く顎となれ!」
「んあぁぁぁん///」
詠唱を紡ぎ、マナと2人のオドを編み上げた少女は大きく掌を開き、視界の中のフヴェズルングを自身の掌と重ねていった。
「極大五色・鳳鶚龍顎!!!!」 / 「喰らえッ!偽神征鎚ッ!!」
少女の掌は力ある言葉と共に一気に閉じられた。フヴェズルングの持っているミョルニルはその内に秘める概念能力を解放し、フヴェズルングの手を離れていった。
少女の掌から放たれた虹色の力は、見ように拠っては巨大な龍とも鷹とも表現出来るそれらの「顎」のようなモノへと変化した。
そしてミョルニルと、ミョルニルから手を離したばかりのフヴェズルングを飲み込んだ。
ばくんッ
巨大な「顎」がそんな音を立てたかは定かではないが、「顎」に因って飲まれる瞬間に、フヴェズルングは断末魔の叫びを上げた。
一方でミョルニルは、概念能力を完全に解放する事なく消滅していった。
「がふッ。うっ、くっ」
苦しそうな表情のルミネの口から一言だけ言の葉が漏れていく。そしてルミネのその身体は黒い霧となって霧散していった。
「あ゛ぁ゛?それで終わりかぁ?あまりにもあっけねぇ!あ゛ぁ゛!全然大したこたぁ無かったなッ」
「あ゛ぁ゛!興醒めだ興醒め。だが、まいっか、とっとと我様は仕事に取り掛かるとすっか」
ルミネを倒し意気揚々とフヴェズルングが少女の元に戻ると、その顔には驚愕の2文字が浮かんでいた。
そこにはついさっき鎚の一撃を喰らい、黒い霧となって消えたハズのルミネの姿があったからだ。
一方でルミネは驚いているフヴェズルングに一切構う事なく、横たわっている少女を静かに抱きかかえると一目散に逃げていった。ルミネは驚きのあまりフリーズしているフヴェズルングに対して、一瞥もする事なく空へと舞い上がっていったのだ。
「あ゛あ゛ぁ゛?!おいッ待ちやがれッ!ソイツを置いてけッ!」
「あ゛ぁ゛ん!逃げんじゃねぇ!待てコラッ!!」
「あ゛ぁ゛!!我様をぶっ倒してから奪ってけって言っただろうがぁぁッ!」
フヴェズルングは理解が追い付かずフリーズしていたが、強制的に理解する事を自己解除すると、怒気を撒き散らし逃げるルミネの後を追い掛けていった。
ルミネは必死に空を翔び逃げていく。
少しでも遠くへ、そして、少女を生かす為に。
ルミネは「未来」を視てしまった。
ルミネは「未来」の否定を願った。
その結果、ルミネのもう1つの魔眼に掛けられた封印は、徐々に解かれつつあった。
ルミネが視た本来あるべきハズの「未来」はこうだった。
あの鎚の一撃で「ルミネは死に」その結果、「少女が生贄となり」、辺境伯の城を中心として「災いの蛇が召喚される」というモノだ。
強く否定を願った事でそうなるハズだったものは改変されていった。
然しながらそうならない為にも充てがうモノは必要だったのだ。
拠って「ルミネの死」には、急造した「魔力製素体」を充てがった。
その結果「生贄の少女」がいなくなった事で、「災いの蛇」の召喚は免れた。
あのまま災いの蛇が召喚されていれば、城の中にいる皆は壊滅的なダメージを負っていた。それこそが「ロキ」が考えていたワナだったのだ。
とは言うものの、少女を抱きかかえ空を翔ぶルミネを執拗に追い掛けるフヴェズルングに、再び捕らえられてしまった場合には元の木阿弥になってしまうだろう。
一方でフヴェズルングは荒れていた。荒れ狂っていた。
それはもう、怒気を吐き散らしながら荒れまくっていた。
何故ならば言わなくても分かるハズだが、せっかく捕まえた獲物が連れ攫われた事に……だ。
更には自身が殺したと思っていたハズの女が死んでおらず、その獲物が獲物を連れ去った事でより一層自身の感情に収まりがつかなくなっていた。
そして荒れに荒れまくった結果として、本能の赴くままに、鎚の権能を使うコトを決めた。
付け加えるならばその状況下に於いて鎚の権能を使う事を、半ば強制的に且つ、感情的に決めていた。
フヴェズルングの持つ「鎚」は「ロキ」が使っていた「グングニル」と同様に紛い物だった。
しかも今の使用者は「ロキ」ではなく、「フヴェズルング」である。
拠って「ロキ」が使用する以上に「鎚」が持ち得る権能を十全に使う事は出来ない。
更には少なからず何かしらのペナルティを負わなくてはならなかった。
それ故にフヴェズルングは鎚の持つ権能を使わずにただの武器としてだけ使っていたのだ。
少女はただ漠然と目が覚めた。更にはいま自分の置かれている状況に混乱していた。
ルミネが自分の事を抱きかかえて翔んでいる理由が、一体全体よく分からない。そもそもさっきまでルミネはいなかったハズだ。
なのに、今の自分はルミネに抱きかかえられている。
しかもルミネにお姫様抱っこで抱えられてるなんて、普通に恥ずかしかった。
「アタシがフヴェズルングと闘っている時に床が抜けて、そして…あれ?記憶がないッ?!えっと、恐らくだけどアタシ気を失ってたってコト?」
「んでもって、なんやかんやが起きてルミネに抱きかかえられている?なんやかんやが凄っごく気になるけど、そればっかりはどうしようもないわね。はぁ。でも、本当になんでお姫様抱っこなんだろ?そして、ルミネがとても凛々しく見える」
少女は頭の中で考えを纏めると、現状の確認の為にルミネに声を掛ける事にした。
「おはよルミネ。ところでアイツはどうなったの?」
「御子様、気付かれたんですのね!」
「うん、ルミネがアタシを助けてくれたのね、ありがとう」
「ところでアイツは?」
「わたくし達の後ろを執拗に追っかけて来ていますわ。全く無粋ですわよね」
「後ろ?ちょっとごめんねルミネ。後ろ見るから動くわよ?」
「えッ?!ちょッ、アレってもしかしてやっぱりそうだったんだ!?」
「どうかなさったんですの?」
少女は急いでルミネの後方を確認すると、自分達の後ろで鎚を構えて今にも投げようとしているフヴェズルングを見付けたのだった。
そしてそれは2人の危機と言えた。
「ロキが使っていた槍がグングニルなら、あの鎚は間違いないッ!ミョルニルだ!!あれを投げられたら、アタシ達は撃墜される!」
少女は「ロキ」との関連からフヴェズルングが持っている武器も北欧神話由来の武器だと考えた。
そもそもの話し、今回の連戦で「ロキ」を始めとする神族達は、神話級の武器を惜しげもなく使っていた。
恐らく全てがオリジナルではないだろうが、紛い物であってもその火力は群を抜き過ぎていたのだ。
だから尚更、フヴェズルングにその武器を使わせるワケにはいかなかった。
「ルミネいい?よく聞いて!アイツが持っている鎚が投げられたら、アタシ達は確実に撃墜されるわ。アレはそういう因果律を持っている武器よ。だから、アイツがアレを投げるまでに仕留めないといけないの!!」
「どうすればいいんですの?」
「アタシは今、オドをかなり消耗しているからルミネのオドを貸して欲しい」
「そんな事でいいのでしたらお好きなだけどうぞ」
「ありがとう、ルミネ」
「パスを繋ぐから変な感じかもしれないけど、我慢してね」
「えっ?ちょ、御子様、どこを触ってらっしゃるのッ!」
「あ、あんっ///」
「だめ、声が漏れちゃいますわ///」
少女はルミネの、たわわに膨らんだ双丘の中央に右手を置いた。とは言っても服の上からなので直接ではないが、ルミネの双丘はたわわに膨らんでいるので両方の丘に手が触れる事になる。
拠って、多少ながら少女はイライラしていたというのは言うまでもない。
そして別段疾しい気持ちがあるワケでもない。
ルミネの赤らんでいく顔と艶めかしい声は、少女のイラだちを解消する嗜虐心を少しだけくすぐったが、緊急事態なのでそれどころではない。
拠って悦に浸る事なく、ルミネと自分の間にパスをスグ繋いでいった。
だから、ルミネの口から艶めかしい声が漏れていたが、それは余談であるので深く触れてはいけない。
「我らが力、1つに交わらん。我が手に集え、紅き炎よ。我が手に集え、蒼き水よ。我が手に集え、翠緑の大樹よ。我が手に集え、鮮黄の大地よ。我が手に集え、金色なる果実よ。我が内なる全ての力よ、1つに混じりて我らが敵を討たん」
「うぅっあんッ///」
少女が詠唱を開始した。周囲のマナはそれに拠って急速に少女の手元に集まっていく。
一方で少女とのパスが繋がれたルミネは、自身のオドが急激な勢いで吸われていっているのが分かったが、どうしても艶めかしい声は止められなかった。
対するフヴェズルングは追い掛けている敵に、膨大な魔力が集まっていくのを感じ取り、自分のケツに火がついたコトを悟った。だからこそ、感情的に投げようと決めながらもペナルティを恐れるあまり投げられずにいたミョルニルを、ケツに火が付いた事に因って今度は理性的に投げる決意に変えた。
別に本能的にだろうと感情的にだろうと、理性的にだろうと投げる動作は変わりはないが、ペナルティは生命にも関わるので躊躇っていたに過ぎない。
だがこのまま敵の膨大な魔力に拠る魔術を喰らえば死ぬ可能性は非常に高い。拠って投げてペナルティを負ったとしても先に当てさえすれば生き残れる確率は高いと踏んだ。
要するにペナルティと生命を天秤に掛けた時に、生命の方がウェイトが重かったのだ。
「我が手に集いし大いなる力よ、空虚なる微睡みに揺蕩う力よ。全て切り裂く顎となれ!」
「んあぁぁぁん///」
詠唱を紡ぎ、マナと2人のオドを編み上げた少女は大きく掌を開き、視界の中のフヴェズルングを自身の掌と重ねていった。
「極大五色・鳳鶚龍顎!!!!」 / 「喰らえッ!偽神征鎚ッ!!」
少女の掌は力ある言葉と共に一気に閉じられた。フヴェズルングの持っているミョルニルはその内に秘める概念能力を解放し、フヴェズルングの手を離れていった。
少女の掌から放たれた虹色の力は、見ように拠っては巨大な龍とも鷹とも表現出来るそれらの「顎」のようなモノへと変化した。
そしてミョルニルと、ミョルニルから手を離したばかりのフヴェズルングを飲み込んだ。
ばくんッ
巨大な「顎」がそんな音を立てたかは定かではないが、「顎」に因って飲まれる瞬間に、フヴェズルングは断末魔の叫びを上げた。
一方でミョルニルは、概念能力を完全に解放する事なく消滅していった。
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