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第三節 The Surface Take
第83話 Time Spinner Ⅲ
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「まぁ、そんなに沢山持ってっても、当たらなきゃ意味がねぇし、仕様的に連発は出来ねぇんだから、数よりは腕だろ。腕」
「で、どこに置いたっけかなぁ?ちょっくら探してくっから、本当に飾りには触んじゃねーぞ!触ったら本当にやらんからな」
「えっ?じゃあ、うん、大人しくしてるねッ!」
ドクは自分の腕をピシピシと2回程叩きながら、また奥へと引っ込んでいった。
少女はドクが出てくるまでの間、まるで尻尾を振りながら飼い主のコトをお座りして待っている犬のようだった。
「ほらよッ!見付けてきてやったよ。LAM3本だ」
「ん?何だその手は?」
「ちゃんと良い子にして待ってたんだから、ちょーだい!」
「ほらよッ」
「ずしっと重たい……。ってこれはLAMでしょ!これは貰ってくけど、そーじゃなくて、そっちの飾りよ飾り!!」
「あぁん?やるなんて言ったか?」
「言ってたわよッ!」
「ったく、しゃーねーな。まぁ、こりゃ元々は嬢ちゃんのモンだからな。完成したらやるよ。それまで待ってな」
「えっ?それってどーゆー事?」
「じゃ聞くけどよ、嬢ちゃん、何か忘れてねぇか?」
「えっと、LAMありがと?」
「ちげぇわ。そぉじゃねぇ!そぉじゃなくてだな、嬢ちゃん、魔犬種の素材の事を忘れてんだろぉが?」
「あッ!?」
少女は散々忘れないようにとあれほど考えていた、魔犬種の素材とハーフメイルの修理とウージーの改造などをすっかりド忘れしていた。
ハーフメイルはマムからさっき貰ったから修理依頼はしなくなったとは言え……
素材も炎龍ディオルギア討伐には多分使わないと考えていたとは言え……
ウージーの改造は討伐に使うかもしれないが多分使わないかもしれないと考えていたとは言え……
あの時の決闘で色々疲れた事もあったし更にあの日は昏睡したクリスを抱えていたとは言え……それらも含めたうえで、戸籍を作り終わったサラとレミを屋敷に連れて帰る事に考えが向いてしまったが為に、完全に失念していたのだ。
よって結局連絡が少女から来なかったドクは、少女が忘れている=いらないモノだと考えた為に勝手に装備品を造っていた。
要は魔銀鋼製のハーフメイルも少女が狩った素材と等価交換したものであり、少女が手に取ろうとしていた飾りもまた然りだった。
全てのネタバラシをされた少女は怒る気がすっかり失せていた。だがとどのつまりはホウ・レン・ソウが出来ていなかった少女の落ち度だった。
「でも魔犬種の素材ってそんなに高値なの?」
「確かに魔犬種自体はレアな部類だから高値っちゃ高値だが、嬢ちゃんが狩った中に王がいただろ?あれがハーフメイル造れる分くらいの魔銀鋼と交換になった」
「え?魔犬種の王?って、えぇぇぇぇぇ!!あれ、固有個体だったの?!」
「なんだなんだ?知らずに闘って知らずに狩ったのか?」
「だがそんな感じだ。でもあのハーフメイルとこの飾りだけでもお釣りがくっからな、他に何か欲しいモンがあるなら炎龍討伐に赴くまでに特急で仕立ててやっけど何かあるか?」
少女は正直なところ言葉を失っていた。それくらいの衝撃だった。
その傷心の余り、ドクに頼もうとしていたウージーの改造の件は再びド忘れする事になった。
更にはそのまま何も言わずにふらふらとB1Fを後にしたのだった。
ふらふらと地上に上がり公安のエントランスから亡霊のように外に出ると、そこにはセブンティーンが待っていた。
少女は呆けたままセブンティーンのトランクにLAMを投げ込むと運転席へと乗り込んでいく。
セブンティーンは「オ帰リナサイマセ、マイ・マスター。次ハ、ドチラマデ行カレマスカ?」といつもの通り抑揚の無い声で少女に話し掛けていたが、少女は「屋敷に帰るわ」と抑揚のない魂の抜けた声を返していた。
セブンティーンは少女が自分で運転する気がないと判断し、低いエグゾーストを奏でながら公安の敷地から出ていくのであった。
少女は屋敷に着くと急いで地下室に向かっていく。そして父親の遺品である剛龍の剣を手に取ると、抜き身にしていた。
-・-・-・-・-・-・-
少女は屋敷に戻るセブンティーンの中で考え事をしていた。炎龍ディオルギアを討伐する為の戦術を練っていた。
だがその中で少女の思考回路は様々なシュミレーションを重ねたが、炎龍ディオルギアを倒せる幻想はなかった。
「あぁ、あれが「固有個体」だったなんてねぇ」
「ちゃんと素材を確保しておけば良かったなぁ」
固有個体とはその魔獣の種の中に於ける最上位種を示している。要はその魔獣に於ける唯一無二の存在であるとも言える。
従ってそれから取れる素材も唯一無二だ。
だからこそ悔いていた。
少女が炎龍ディオルギアを倒す方法があるとすれば、それは極大魔術以外に方法はない。
だがそれは飽くまでも最後の手段であって、トドメの一撃に他ならない。
少女は今までに古龍種と闘った経験がある。そしてその際真っ先に苦労した事が、通常火力の弱さだった。
デバイスを通常使用の武器とするならそれを真っ先に味合わされる。それくらい龍種は硬い。
それが古龍種ともなれば、それ以上の硬度があるだろうという事は想像に難くない。
だからこそ、その硬度を撃ち破る事が可能な驚異的とも言える貫通力を誇るLAMに期待したのだが貰えた数は3本。それは同時に圧倒的に火力不足と言わざるを得なかった。
故に炎龍討伐に赴く前に、武器の調達をしなければならないのは分かりきっていた。
否、それは星持ちとなって魔獣の討伐依頼が増えたあたりから武器の火力不足の懸念はあった。しかしそれに見合う素材は、なかなか手に入らなかったのがそもそもの原因なのかもしれない。
だからこそ固有個体だという事が分かっていれば、真っ先に武器の製造を申し出たのだが今となっては後悔先に立たずと諦めるしかない。
然しながら後悔してももう後戻りは出来ない。拠って通常火力の底上げの方法を、セブンティーンの中で少女は必死に考えていたとも言える。
そこで辿り着いた考えが父親の愛刀だった。
刀身には綺麗な波紋があり一点の曇りもない。それは偏にちゃんと爺が手入れをしているからとも言える。
だがこの刀は「鈍ら」なのである。
古龍種の素材を使った武器は、持ち主以外の者が使うとその性能や仕様を100%使えないという定評があった。
そしてそれは、この「剛龍の剣」も決して例外では無かった。
武器には魂が宿ると言われている。それは作成者の魂なのか使用者の魂なのか、はたまた素材として使われたモノの魂なのかは分からない。
だからこそ少女がこの「剛龍の剣」を使おうとしても何も切れなかった。
「剣に認められていない」
それが少女の出した解答だったが、認めて貰う為の方法はその時は分からなかった。
だが今回の炎龍討伐に於いて……
少女が描いた戦術に於いて……
少女が導き出した戦略に於いて……今の現状で最も火力がある、この刀は必須だった。
だからこそ改めてこの刀と対話しをしに来たのだ。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
「爺、下のトレーニングルームで、父様のこの刀と対話するわ。だから準備をお願い」
「かしこまりました。暫くお待ち下さいませ」
「で、どこに置いたっけかなぁ?ちょっくら探してくっから、本当に飾りには触んじゃねーぞ!触ったら本当にやらんからな」
「えっ?じゃあ、うん、大人しくしてるねッ!」
ドクは自分の腕をピシピシと2回程叩きながら、また奥へと引っ込んでいった。
少女はドクが出てくるまでの間、まるで尻尾を振りながら飼い主のコトをお座りして待っている犬のようだった。
「ほらよッ!見付けてきてやったよ。LAM3本だ」
「ん?何だその手は?」
「ちゃんと良い子にして待ってたんだから、ちょーだい!」
「ほらよッ」
「ずしっと重たい……。ってこれはLAMでしょ!これは貰ってくけど、そーじゃなくて、そっちの飾りよ飾り!!」
「あぁん?やるなんて言ったか?」
「言ってたわよッ!」
「ったく、しゃーねーな。まぁ、こりゃ元々は嬢ちゃんのモンだからな。完成したらやるよ。それまで待ってな」
「えっ?それってどーゆー事?」
「じゃ聞くけどよ、嬢ちゃん、何か忘れてねぇか?」
「えっと、LAMありがと?」
「ちげぇわ。そぉじゃねぇ!そぉじゃなくてだな、嬢ちゃん、魔犬種の素材の事を忘れてんだろぉが?」
「あッ!?」
少女は散々忘れないようにとあれほど考えていた、魔犬種の素材とハーフメイルの修理とウージーの改造などをすっかりド忘れしていた。
ハーフメイルはマムからさっき貰ったから修理依頼はしなくなったとは言え……
素材も炎龍ディオルギア討伐には多分使わないと考えていたとは言え……
ウージーの改造は討伐に使うかもしれないが多分使わないかもしれないと考えていたとは言え……
あの時の決闘で色々疲れた事もあったし更にあの日は昏睡したクリスを抱えていたとは言え……それらも含めたうえで、戸籍を作り終わったサラとレミを屋敷に連れて帰る事に考えが向いてしまったが為に、完全に失念していたのだ。
よって結局連絡が少女から来なかったドクは、少女が忘れている=いらないモノだと考えた為に勝手に装備品を造っていた。
要は魔銀鋼製のハーフメイルも少女が狩った素材と等価交換したものであり、少女が手に取ろうとしていた飾りもまた然りだった。
全てのネタバラシをされた少女は怒る気がすっかり失せていた。だがとどのつまりはホウ・レン・ソウが出来ていなかった少女の落ち度だった。
「でも魔犬種の素材ってそんなに高値なの?」
「確かに魔犬種自体はレアな部類だから高値っちゃ高値だが、嬢ちゃんが狩った中に王がいただろ?あれがハーフメイル造れる分くらいの魔銀鋼と交換になった」
「え?魔犬種の王?って、えぇぇぇぇぇ!!あれ、固有個体だったの?!」
「なんだなんだ?知らずに闘って知らずに狩ったのか?」
「だがそんな感じだ。でもあのハーフメイルとこの飾りだけでもお釣りがくっからな、他に何か欲しいモンがあるなら炎龍討伐に赴くまでに特急で仕立ててやっけど何かあるか?」
少女は正直なところ言葉を失っていた。それくらいの衝撃だった。
その傷心の余り、ドクに頼もうとしていたウージーの改造の件は再びド忘れする事になった。
更にはそのまま何も言わずにふらふらとB1Fを後にしたのだった。
ふらふらと地上に上がり公安のエントランスから亡霊のように外に出ると、そこにはセブンティーンが待っていた。
少女は呆けたままセブンティーンのトランクにLAMを投げ込むと運転席へと乗り込んでいく。
セブンティーンは「オ帰リナサイマセ、マイ・マスター。次ハ、ドチラマデ行カレマスカ?」といつもの通り抑揚の無い声で少女に話し掛けていたが、少女は「屋敷に帰るわ」と抑揚のない魂の抜けた声を返していた。
セブンティーンは少女が自分で運転する気がないと判断し、低いエグゾーストを奏でながら公安の敷地から出ていくのであった。
少女は屋敷に着くと急いで地下室に向かっていく。そして父親の遺品である剛龍の剣を手に取ると、抜き身にしていた。
-・-・-・-・-・-・-
少女は屋敷に戻るセブンティーンの中で考え事をしていた。炎龍ディオルギアを討伐する為の戦術を練っていた。
だがその中で少女の思考回路は様々なシュミレーションを重ねたが、炎龍ディオルギアを倒せる幻想はなかった。
「あぁ、あれが「固有個体」だったなんてねぇ」
「ちゃんと素材を確保しておけば良かったなぁ」
固有個体とはその魔獣の種の中に於ける最上位種を示している。要はその魔獣に於ける唯一無二の存在であるとも言える。
従ってそれから取れる素材も唯一無二だ。
だからこそ悔いていた。
少女が炎龍ディオルギアを倒す方法があるとすれば、それは極大魔術以外に方法はない。
だがそれは飽くまでも最後の手段であって、トドメの一撃に他ならない。
少女は今までに古龍種と闘った経験がある。そしてその際真っ先に苦労した事が、通常火力の弱さだった。
デバイスを通常使用の武器とするならそれを真っ先に味合わされる。それくらい龍種は硬い。
それが古龍種ともなれば、それ以上の硬度があるだろうという事は想像に難くない。
だからこそ、その硬度を撃ち破る事が可能な驚異的とも言える貫通力を誇るLAMに期待したのだが貰えた数は3本。それは同時に圧倒的に火力不足と言わざるを得なかった。
故に炎龍討伐に赴く前に、武器の調達をしなければならないのは分かりきっていた。
否、それは星持ちとなって魔獣の討伐依頼が増えたあたりから武器の火力不足の懸念はあった。しかしそれに見合う素材は、なかなか手に入らなかったのがそもそもの原因なのかもしれない。
だからこそ固有個体だという事が分かっていれば、真っ先に武器の製造を申し出たのだが今となっては後悔先に立たずと諦めるしかない。
然しながら後悔してももう後戻りは出来ない。拠って通常火力の底上げの方法を、セブンティーンの中で少女は必死に考えていたとも言える。
そこで辿り着いた考えが父親の愛刀だった。
刀身には綺麗な波紋があり一点の曇りもない。それは偏にちゃんと爺が手入れをしているからとも言える。
だがこの刀は「鈍ら」なのである。
古龍種の素材を使った武器は、持ち主以外の者が使うとその性能や仕様を100%使えないという定評があった。
そしてそれは、この「剛龍の剣」も決して例外では無かった。
武器には魂が宿ると言われている。それは作成者の魂なのか使用者の魂なのか、はたまた素材として使われたモノの魂なのかは分からない。
だからこそ少女がこの「剛龍の剣」を使おうとしても何も切れなかった。
「剣に認められていない」
それが少女の出した解答だったが、認めて貰う為の方法はその時は分からなかった。
だが今回の炎龍討伐に於いて……
少女が描いた戦術に於いて……
少女が導き出した戦略に於いて……今の現状で最も火力がある、この刀は必須だった。
だからこそ改めてこの刀と対話しをしに来たのだ。
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