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第四節 The Finisher Take
第107話 Polite Newcomer Ⅱ 挿絵付
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『此の身はハンターになりたいのだ!だから、ここに来た!この地に来た!』
『執事殿、頼む!此の身をハンターにしてくれッ!』
『ま、まぁ、落ち着いて下さい、クリス様』
『ほらほら、ちゃんとお座り頂いてお茶でも召し上がって下さい』
『う、うむ。かたじけない』
『ところで「ハンターになる」と言っておられましたが、村はどうなさるのです?あの村には「掟」があったと認識しておりますが?』
『おっ?掟の事を知っているとは執事殿は救世主様同様博識なのだな!』
『恐れ入ります』
『だがそれは大丈夫だ。村の皆が送り出してくれた。だからこそ、あの村にはもう戻れないし戻らない!』
『此の身はあの救世主様の背中を追い掛けたいと思ったのだ。だから……』
『ハンターになりたいのですか?』
『うむ。もう一度言う。執事殿、此の身をハンターにして欲しい。頼むこの通りだッ!』
『はぁ、クリス様、頭をお上げ下さい』
『でわッ!』
『生憎ですが、当方に頼まれましても当方は試験官では御座いませんのでクリス様をハンターにして差し上げる事は叶いません』
『では、誰に頼めば良いのだ?執事殿、力を貸してはくれまいか?』
『ハッそうかッ!救世主様に頼めば良いのだな?』 / 『落ち着いて下さい』
『いや、そうに違いない!救世主様に頼めば此の身をハンターにしてくれるのだろう?』 / 『クリス様、落ち着いて下さい』
『そう言えば善は急げだ!執事殿、救世主様に取り次ぎを急ぎ頼みたい!』
/ 『クリス様ッ、お・す・わ・りッ!』
『は、はいぃぃぃッ』
『ごほんっ。クリス様宜しいですか?生憎ですがお嬢様は依頼に向かわれていますので、直ぐにはお屋敷に戻られないかもしれません。ですから急ぎ取り次ぎは致し兼ねます』
『そ、そうなのか?それならばここで救世主様の帰りを待たせてはくれまいかッ?』
『左様でございますか……』
『それでは率直に申し上げます。クリス様はハンターになりたいと仰っておられましたが、今の現状はハンター志願者ではなく、この国に対する不法な密入国者で御座います』
『えっ?それって?一体……?』
『要は正当な手続きを踏まずに入国すれば、それは密入国であり犯罪行為で御座います』
『更に付け加えればこの屋敷の主人であるお嬢様の許可が無くては、クリス様といえど勝手にお泊めする事は叶いません』
『えっ?えっと、それだと此の身は?』
『クリス様は不法に入国しておりますので、このままでは公安に突き出さねばならなくなります』
『そうなればハンター志願どころではなく、犯罪者として刑を課せられる事になるでしょうな』
クリスを襲った衝撃の事実。それに拠ってクリスの顔色はみるみる内に青く染められていく。そしてそんなクリスを見ながらも、何1つとして表情に出してはいない爺の姿は実に対照的だ。
これはまさにドS的とも言えるかもしれない。
『ご、後生だ、後生だッ!そんな事をされれば、此の身はどこにも居場所が無くなってしまう。だから、なんとかならないか?執事殿ぉッ!』
『クリス様、当方はただの執事に御座います。ただの執事になんとかなるとお思いなので御座いますか?』
『そ、そんなぁ……。ぐすっ』
クリスは半泣きの状態で爺の足元にへたり込み、縋るような目をして見上げていた。これが真性のドSなら、嗜虐心をくすぐられる事間違い無しの光景だ。
若しくはクリスの豊満な身体に目が眩む下心を持っていれば、手を差し伸べた挙句に手を出すかもしれないが、爺に関して言えばそんな事はどちらについても、微塵も持ち合わせていない。
「ちょっと苛めてあげ過ぎなんじゃない?」
『きゅ、救世主様ッ!』
「お早いお帰りで御座いますね、お嬢様。依頼は完結されたので御座いますか?」
「えぇ、モチのロンよッ!ぶいッ!えへへ」
「それでは当方はお茶の用意を致しますので、お嬢様はクリス様の事をお願い致します」
「おっけぇ!分かったわ。お茶はカモミールがいいなッ!」
「かしこまりました。ご用意致します。少々お待ち下さいませ」
『さてと、じゃ、お話ししましょッ!』
『救世主様、此の身に慈悲をくれまいかッ!?』
『えっ?えっと、それってどぉゆぅ事?』
『此の身はこのままでは捕まって牢屋に入れられてしまうのであろう?』
『それは後生だッ!なんとか助けてくれまいかッ!』
『此の身はハンターになる為にここまで来たのだッ!捕まる為に来たワケではないッ!』
『あぁ、えっと、最初から話しを聞いてたワケじゃないから、掻い摘んで聞くけど、クリスはハンターになる為に神奈川国に来たって事かしら?』
『そうだ!その通りだ!此の身は救世主様のようなハンターを目指してこの国に来たッ!』
『そっかぁ、大体の事情は察したわ。じゃあ説明するわよ、いいかしら?』
『うむ、お願い致す』
『さっき爺が言ってた事は残念ながら本当なのよ。ハンターは犯罪者を取り締まる役目も負っているの。そのハンターが犯罪者ってワケにはいかないでしょ?』
『うむ、それはその通りだ』
『サラやレミの様に被害者であれば、保護が出来るし望むなら戸籍を作ってこの国に住む事が出来るわ。そうなれば密入国者ではないし不法入国の罪には問われない』
『でもクリスは違うわよね?国に対して認められていないか、自分達から関わりを持たないようにしている龍人族みたいな種族は厳しいわよ?』
『だって元々の戸籍が国に拠って管理されていないんだもの、それだと正式な手順も踏めないから他の国に入ればどうしても不法入国の犯罪者になってしまうわ』
『じゃ、そうゆう事で、手を出してもらえる?』
少女は口角を少し上げながらクリスに対して言の葉を紡ぎ説明していた。無表情だった爺とは違って嗜虐心に囚われていたのかもしれない。
然しながら少女はクリスを見据えたまま龍人族の現状も踏まえて選びながら言の葉を紡ぎ結んだ。
そして最後に少女が紡いだ言葉で、ダメ出しを受けたクリスは遂に崩壊した。
『ま、ままま、ままままま……』
『ママ?アタシはダフドと結婚なんてしないわよ?』
『ちがう!そぉじゃない!ななな、なぜにててててて、てをだだだだだだっすのだ?』
『こっここここここ』
『どしたの、クリス?今度はニワトリか何かの真似でもしてるの?』
『ちっちちちちがってだな』
『なな、ななな、なななななんとか、そこをなんとか、ならないのか?』
『クリス、深呼吸して!ちょっと何を言ってるか分からないわよ?』
すうぅぅぅぅ
『此の身を捕まえないでくれえぇぇぇぇぇぇ!!』
クリスは緊張のあまりか、それとも追い詰められたからなのか分からないが、見ていられない程に壊れていた。壊れた結果としてクリスの呂律はどこかへと旅立ってしまったようだった。流石にそこまではデバイスも面倒を見てくれないのは当然と言える。
だが一方で少女の表情はクリスにつられて徐々に崩壊しつつあった。ポーカーフェイスを気取っていても、整った眉毛はピクピクしていたし上がっていた口角は更に角度を増やしていた。
更に付け加えるなら目は最初から笑っていた。
「あーもう、無理ッ!駄目ッ!あっははははッ。もーなんて顔なのーーッ!!」
「ってかこの状況でよく爺はポーカーフェイス維持出来るわね。ホントにもう信じらんない!」
「恐れ入ります、お嬢様」
少女はクリスの取り乱した顔と、カモミールティーを持ってきた爺のポーカーフェイスがあまりにも対照的でツボに嵌まってしまい大爆笑を繰り広げていた。
然しながら俄然意味が分からないクリスの顔面には「?」が貼り付き、頭の上には幾重にも「?」が浮かんでいた。
要するに一連の事は全て少女が仕組んだ事だったのである。
『執事殿、頼む!此の身をハンターにしてくれッ!』
『ま、まぁ、落ち着いて下さい、クリス様』
『ほらほら、ちゃんとお座り頂いてお茶でも召し上がって下さい』
『う、うむ。かたじけない』
『ところで「ハンターになる」と言っておられましたが、村はどうなさるのです?あの村には「掟」があったと認識しておりますが?』
『おっ?掟の事を知っているとは執事殿は救世主様同様博識なのだな!』
『恐れ入ります』
『だがそれは大丈夫だ。村の皆が送り出してくれた。だからこそ、あの村にはもう戻れないし戻らない!』
『此の身はあの救世主様の背中を追い掛けたいと思ったのだ。だから……』
『ハンターになりたいのですか?』
『うむ。もう一度言う。執事殿、此の身をハンターにして欲しい。頼むこの通りだッ!』
『はぁ、クリス様、頭をお上げ下さい』
『でわッ!』
『生憎ですが、当方に頼まれましても当方は試験官では御座いませんのでクリス様をハンターにして差し上げる事は叶いません』
『では、誰に頼めば良いのだ?執事殿、力を貸してはくれまいか?』
『ハッそうかッ!救世主様に頼めば良いのだな?』 / 『落ち着いて下さい』
『いや、そうに違いない!救世主様に頼めば此の身をハンターにしてくれるのだろう?』 / 『クリス様、落ち着いて下さい』
『そう言えば善は急げだ!執事殿、救世主様に取り次ぎを急ぎ頼みたい!』
/ 『クリス様ッ、お・す・わ・りッ!』
『は、はいぃぃぃッ』
『ごほんっ。クリス様宜しいですか?生憎ですがお嬢様は依頼に向かわれていますので、直ぐにはお屋敷に戻られないかもしれません。ですから急ぎ取り次ぎは致し兼ねます』
『そ、そうなのか?それならばここで救世主様の帰りを待たせてはくれまいかッ?』
『左様でございますか……』
『それでは率直に申し上げます。クリス様はハンターになりたいと仰っておられましたが、今の現状はハンター志願者ではなく、この国に対する不法な密入国者で御座います』
『えっ?それって?一体……?』
『要は正当な手続きを踏まずに入国すれば、それは密入国であり犯罪行為で御座います』
『更に付け加えればこの屋敷の主人であるお嬢様の許可が無くては、クリス様といえど勝手にお泊めする事は叶いません』
『えっ?えっと、それだと此の身は?』
『クリス様は不法に入国しておりますので、このままでは公安に突き出さねばならなくなります』
『そうなればハンター志願どころではなく、犯罪者として刑を課せられる事になるでしょうな』
クリスを襲った衝撃の事実。それに拠ってクリスの顔色はみるみる内に青く染められていく。そしてそんなクリスを見ながらも、何1つとして表情に出してはいない爺の姿は実に対照的だ。
これはまさにドS的とも言えるかもしれない。
『ご、後生だ、後生だッ!そんな事をされれば、此の身はどこにも居場所が無くなってしまう。だから、なんとかならないか?執事殿ぉッ!』
『クリス様、当方はただの執事に御座います。ただの執事になんとかなるとお思いなので御座いますか?』
『そ、そんなぁ……。ぐすっ』
クリスは半泣きの状態で爺の足元にへたり込み、縋るような目をして見上げていた。これが真性のドSなら、嗜虐心をくすぐられる事間違い無しの光景だ。
若しくはクリスの豊満な身体に目が眩む下心を持っていれば、手を差し伸べた挙句に手を出すかもしれないが、爺に関して言えばそんな事はどちらについても、微塵も持ち合わせていない。
「ちょっと苛めてあげ過ぎなんじゃない?」
『きゅ、救世主様ッ!』
「お早いお帰りで御座いますね、お嬢様。依頼は完結されたので御座いますか?」
「えぇ、モチのロンよッ!ぶいッ!えへへ」
「それでは当方はお茶の用意を致しますので、お嬢様はクリス様の事をお願い致します」
「おっけぇ!分かったわ。お茶はカモミールがいいなッ!」
「かしこまりました。ご用意致します。少々お待ち下さいませ」
『さてと、じゃ、お話ししましょッ!』
『救世主様、此の身に慈悲をくれまいかッ!?』
『えっ?えっと、それってどぉゆぅ事?』
『此の身はこのままでは捕まって牢屋に入れられてしまうのであろう?』
『それは後生だッ!なんとか助けてくれまいかッ!』
『此の身はハンターになる為にここまで来たのだッ!捕まる為に来たワケではないッ!』
『あぁ、えっと、最初から話しを聞いてたワケじゃないから、掻い摘んで聞くけど、クリスはハンターになる為に神奈川国に来たって事かしら?』
『そうだ!その通りだ!此の身は救世主様のようなハンターを目指してこの国に来たッ!』
『そっかぁ、大体の事情は察したわ。じゃあ説明するわよ、いいかしら?』
『うむ、お願い致す』
『さっき爺が言ってた事は残念ながら本当なのよ。ハンターは犯罪者を取り締まる役目も負っているの。そのハンターが犯罪者ってワケにはいかないでしょ?』
『うむ、それはその通りだ』
『サラやレミの様に被害者であれば、保護が出来るし望むなら戸籍を作ってこの国に住む事が出来るわ。そうなれば密入国者ではないし不法入国の罪には問われない』
『でもクリスは違うわよね?国に対して認められていないか、自分達から関わりを持たないようにしている龍人族みたいな種族は厳しいわよ?』
『だって元々の戸籍が国に拠って管理されていないんだもの、それだと正式な手順も踏めないから他の国に入ればどうしても不法入国の犯罪者になってしまうわ』
『じゃ、そうゆう事で、手を出してもらえる?』
少女は口角を少し上げながらクリスに対して言の葉を紡ぎ説明していた。無表情だった爺とは違って嗜虐心に囚われていたのかもしれない。
然しながら少女はクリスを見据えたまま龍人族の現状も踏まえて選びながら言の葉を紡ぎ結んだ。
そして最後に少女が紡いだ言葉で、ダメ出しを受けたクリスは遂に崩壊した。
『ま、ままま、ままままま……』
『ママ?アタシはダフドと結婚なんてしないわよ?』
『ちがう!そぉじゃない!ななな、なぜにててててて、てをだだだだだだっすのだ?』
『こっここここここ』
『どしたの、クリス?今度はニワトリか何かの真似でもしてるの?』
『ちっちちちちがってだな』
『なな、ななな、なななななんとか、そこをなんとか、ならないのか?』
『クリス、深呼吸して!ちょっと何を言ってるか分からないわよ?』
すうぅぅぅぅ
『此の身を捕まえないでくれえぇぇぇぇぇぇ!!』
クリスは緊張のあまりか、それとも追い詰められたからなのか分からないが、見ていられない程に壊れていた。壊れた結果としてクリスの呂律はどこかへと旅立ってしまったようだった。流石にそこまではデバイスも面倒を見てくれないのは当然と言える。
だが一方で少女の表情はクリスにつられて徐々に崩壊しつつあった。ポーカーフェイスを気取っていても、整った眉毛はピクピクしていたし上がっていた口角は更に角度を増やしていた。
更に付け加えるなら目は最初から笑っていた。
「あーもう、無理ッ!駄目ッ!あっははははッ。もーなんて顔なのーーッ!!」
「ってかこの状況でよく爺はポーカーフェイス維持出来るわね。ホントにもう信じらんない!」
「恐れ入ります、お嬢様」
少女はクリスの取り乱した顔と、カモミールティーを持ってきた爺のポーカーフェイスがあまりにも対照的でツボに嵌まってしまい大爆笑を繰り広げていた。
然しながら俄然意味が分からないクリスの顔面には「?」が貼り付き、頭の上には幾重にも「?」が浮かんでいた。
要するに一連の事は全て少女が仕組んだ事だったのである。
応援ありがとうございます!
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