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生まれた瞬間に決められた人生
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しおりを挟む「魂が半分欠けてる……?」
「そう。君の魂は半分しかないの。だから、君は魔力を保有して魔法を使うことが出来ない。先天的なものだからどうにも出来ないのよ。いくら神様に祈っても、何度も魔力計測しても無駄だよー」
笑顔のまま凛香はそう言った。
分かっていたことではあったが、こうやって言葉にされるとずしりと心にのしかかる。
魔力が今後も授からない。魔法を一生使うことが出来ない。
自分でも理解して納得していたことなのに、今更になって受け入れることが出来ないなんて。わがままに程があるだろう。
聞いているだけで何も言わない俺を凛香はつまらなさそうな顔をしていた。
どん底へと落とされて、お先真っ暗になった俺がどんな顔をするのか楽しみにしていたのだろう。自分が想定していた表情と、今の俺の表情が違うことに舌打ちでもしそうな顔を浮かべ始めた。
「なにこいつ……気持ち悪いんだけど」
「お前もいい加減にしないか。子供をいじめて何がしたいんだ」
「だって普通は魔法が使えないなんて言われたら絶望するじゃん。あたしそんなこと言われたら死にたくなるもん。それなのにこいつ……笑ってるんだよ?」
俺の顔を見て体を震わせ、その場から後ずさる凛香。他の魔道士達も俺から距離を置いて様子を伺っていた。
そりゃそうだろ。魔法が使えないことが確定した今、絶望して泣き出しているはずだ。
普通の子供ならどうしていいかわからず、母親の元に助けを求めて縋り付きに行くだろう。きっと凛香はその姿を見て、魔法が使えることに悦を感じ、陰でほくそ笑む。はずだったのだろう。
なんかそんな気がする。
だって笑うしかないだろ。魔法が使えない?魂が欠けてる?いや、そんなこと知らねぇよ。いいじゃないか。他人と違う個性ってことなんだろ?なら、それを生かした人生にしてやるよ。
俺は困惑している魔道士を放置したまま、部屋を出た。
もう二度と魔力計測はしない。魔法が使えない理由が今日ハッキリしたのだ。そりゃ何度も計測に来ても変わらないわけだわ。
魂が半分無いというのがいまいち理解し難いが。
「おかあさん」
「どうだった?今回は……」
「俺もう魔力計測はしないよ」
「もしかして魔力が宿ってたの!?」
「違う。俺は一生、魔法を使うことは出来ないから」
「それどういうことよ……ちょ、海!」
母が後ろで騒いでいるのを聞き流しながら俺は教会を後にした。
扉の前には相変わらず上水流さんが立っていて、にこやかに扉を開けてくれた。
今は見上げる位置にいるけれど、いつか同じ目線に立てるように頑張ります。
早めに来れるように努力しますので、どうか待っていてください。
「行ってらっしゃい」
「いってきます」
教会に来た時は重りを担いでいるのかと思うほど足取り悪かったのに、今では背中に翼が生えて体が浮いているかのような軽い気持ちで教会を出た。
きっとこれから大変だろう。人とは違うということに何度も悩んでは、苦悩して、悲観して、悔しくて自暴自棄な行動をとってしまうかもしれない。
でも、それでも。生まれたことに意味があるんだよ、と言ってくれた人の為にも。俺は俺の人生を精一杯生きていかなきゃならないんだ。
それが俺がここにいる理由だから。
「帰ったら怒られるかなぁ」
期待させて落としたようなものだ。きっと母は今頃魔道士を問い詰めていることだろう。あの女なら素直に答えるかもしれない。母があの女に掴みかかっていなければいいけれど。
母を一人教会の中に残してきてしまったのはやはりダメだっただろうか。
一刻も早くあの空間から逃げ出したいがために、母親に適当に話してしまったのが悪かったか。まぁ、仕方ない。あの女が少し嫌な目にあうだけだろう。ざまぁみろ、なんて言わないけれど。
あの高圧的な女が母に迫られて、怯えているとしたら……。地下でいじめられた甲斐が有るというものだ。
「あー……暑いなぁ」
見上げた空は高く、澄み切った青だった。
じりじりと焼け付くような太陽とセットになっているが、悪くないと思う。
すっきりとした心境で俺は駐車場へと歩を進めた。
これが俺の出発点。
魔力無しと言われた男の人生の始まり。
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