大魔導師と賢者

河内 祐

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白銀の街“世界樹”

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空気を切り裂いて空を飛ぶ。
箒にまたがり、目的地まで一直線、なんて素晴らしいものだ。
しかし、いつも晴れやかな気分も今回ばかりは乗らなかった。
ライバルを切り捨てている。
この現状、今回の件が既に地獄なのに終わっても地獄とは憂鬱としか言いようがない。

「帰って謝っても……死ぬね」

それくらい詰んでいて、もう笑うことしかできない。

「どうしようか……」

とりあえず、美味しい物をお土産に帰れば半殺し……いや5分の4殺しで助かるかもしれないし、それでいこう。

「さてと……あともう少しで“世界樹”だ」

遠くを見てみると、そこには微かに明かりがあった。
近づけば近づくほど明かりは増していき。
その全貌を明らかにする。

「半年前くらいかな?ここに来るのは」

そこにあるのは、巨大な木……ではなく、巨大な木に似せた建物だ。
高さは約千五百メートル、直径は約千メートルだ。

「相変わらずバカみたいな数字」

しかし、こんな建造物を作り上げるのが魔法使いの所業だ。

「入口は確か」

僕はキョロキョロと辺りを見回す。
ここの入口は複数箇所あり、どれにも検問がある。

「あっあそこだ」

木の洞のような形をした大きな穴がある。
そこから中に入り、箒を止めた。

カツカツ

箒から降りて歩くたびに響く音がここは木の中ではなく人工物の中であることを証明していく。

『何者ですか?』

少し歩くと、門がありそこにはローブを纏った人たちがこちらを見る。

「“秋明菊の大魔導師”エメル・サフィス。魔道連盟からの通達によりここに来ました。入場許可を」
『嘘の反応なし。その他の問題も無し。入場を許可します』

実は“世界樹”の検問は結構ゆるい、嘘偽り無く、他者を傷つける理由で無ければあっさり入れるのだ。

「感謝します」

僕は検問の人たちにそう言って奥へと進んでいく。
ある程度進むと開けた場所にでる。

「“アキンガエルの尻尾”はいかが!」
「“マンドゴラの花弁”があるよ!」

そこにあるのは巨大な市場、ここには様々な魔法使いご用達の材料、道具がある。
ここに来る魔法使い達はその購入が理由だったりする。

「“電撃フナの塩焼き”あるよ!」
「爆弾の材料が必要ならぜひ私のお店へ!」

少々独特なお店が目立つが、そこも魔法使い、特段問題無くこの市場は稼働していた。
市場のお店はどれも魅力的ではあるが、今回の目的はそれではない。

「すいません」
「はい。なんですか?」

市場の真ん中には巨大な受付がある。
列をなしている時間では無かったのが幸いだった。
中には一時間かかる場所もある。

「魔道連盟の通達により来ました“秋明菊の大魔導師”なのですが、ここに来るまでの期限しか知らされていなくて、これからの確認が出来ますかね?」

魔鳩も高性能じゃない。
集合場所など細かいことを知らせることは出来ないため、こうして確認を取る必要がある。

「なるほど。わかりましたしばらくお待ち下さい」

そう言って、受付の人は魔法陣を起動させ幾つもの情報を拾い上げていく。

「“秋明菊の大魔導師”エメル・サフィス様。貴方様の今後の予定は明後日に五十七階の132号会議室に来てくださいとの事です。それまでの間は15階、宿泊室15号でお休みください。また、それまでの間ルームサービスの代金は無料です。これがその部屋の鍵です」

そう言って受付の人は鍵をこちらに渡した。
“世界樹”では基本1~10階、全世界の魔法店やレストラン。
11~40階、ホテルなどの宿泊施設やレジャー施設。
41~魔法使い専用のエリア“会議室”や“実験室”“報告室”その他の特殊な施設がある。

……はっきり言って持て余しているだろ!
そう声を大にして言いたいが我慢する。

「ありがとうございました」

僕は受付の人にそう言うと所々に貼られている地図を見ながらエスカレーターやエレベーターを駆使して宿泊室に行った。
……凄い疲れる。
迷路のように入り組んだ道があるし。
“世界樹”の基本的構造なだけでおかしな店も点々とあるし。

「もう少し利便性を良くして欲しい!」

そうベットに倒れながら僕は呟く。
しかし、明後日までは何もしないのは暇だ。
こんな事なら、実験室でも借りようかな。

「いや……一日だけなら後片付けも面倒くさいしいいや」

その後、ベットから降りて部屋にある浴室でシャワーを浴びて、食べるのをルームサービスで済まそうか、それともレストランで美味しくいただくか悩んだ。

「ルームサービスにするか……」

降りるのが面倒くさいし、そう思いながら電話を使いルームサービスに載っている料理を頼み、届いた料理をいただいた。

「……物足りない」

量はしっかりとあったはずなのだが、何故か満足することが出来なかった。

「追加オーダーするか?いや……」

追加で来た物が食べきれるかはわからないし、レストラン街を散策し腹を軽く空かせてから何か食べるとしよう。

「結局降りるのか」

これなら初めから降りれば良かった。

「お~旨そうな匂い」

しばらくして降りてみると、辺りに良い匂いが立ち込めていた。
ジュ~ジュ~と肉を焼く音と油が跳ねる音や、トントンと食材をリズム良く叩く音も食欲を刺激する。

「さてと……どこにしようかな」

お店の前に飾ってある料理の見本を見ながらどこにしようか悩んでいた。
その時だった。

ムニュ

「ん?」

足が何か柔らかいものを踏んだ。
見てみるとそこには、

「……」

人が倒れていた。

「……はぁ⁉︎」

いきなりのことに事態が飲み込めずに、遅れて反応が来た。

「おい!君!大丈夫か!」

僕は慌ててその人の顔を叩く。

「……ん…」
「反応があった」

まだ生きていることにある程度安心した。

「一体何があったんですか?」
「すい……ません」
「?」

その人がゆっくりと何かを喋ろうしていた。

「お腹が空いて」
「さようなら」
「やめて!見捨てないで!」

あまりに馬鹿馬鹿しい理由に、僕が見限ろうとした瞬間、その人は慌てて僕を止めた。

「とりあえずおぶってください!そしてレストランの中に入れて何か奢ってください!」
「図々しいこと山の如し!」

何故、初対面の人にここまで遠慮がないのか!

「とりあえずお店に入りましょう!話はそれからです!」
「何故あなたが仕切っているのですか⁉︎」
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