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羨ましい
榊side
しおりを挟む結衣様が倒れて救急車を呼んだその日の夜、再び電話がかかってきた。
榊「もしもし。」
結『あ…あの。榊さん。』
今度はちゃんと喋れている。
頭を打った様子だったから少し心配だったけど元気そうで何よりだ。
榊「ご無事だったのですね。」
俺は冷静にそう言った。
そう返すのが妥当だろうと思ったからだ。
結『あの…迷惑かけてごめんなさい。せっかくのお休みだったのに…』
迷惑という自覚はあったのか…。
ならばなぜかけて来たのは俺だったのだろう。
榊「いえ。私に出来ることならば…。でもなぜ私に電話したんでしょう。電話ならば他の誰でも…」
俺は思った事を率直に尋ねた。
すると彼女は続けた。
結『あの時すごく必死で…』
なるほど。
…と言うことは別に当てずっぽうに電話をかけたらたまたま俺にかかってきた…と。
結『でも…榊さんがきてくれたおかげで本当に助かりました。ありがとうございます。』
ありがとう…ねぇ。
一応俺も医者だし当然な事をしたまでだ。
でも…言われて悪い気はしない。
でも一つ残念なのが…
俺に電話をかけて来たのがまぐれだったって事。
榊「いや、別に大したことはしてないよ。でもさー本当に俺に感謝してんの?」
とわざと口調を変えて話してみる。
結『えっ?えと…はい。』
榊「じゃあ…俺暇してるし、結衣様の夏休みのどれか1日、俺にくれねぇ?いや…勤務外だし…結衣ちゃん、とでも呼ぶべきか。」
俺がそう意地悪を言うと彼女は少し戸惑っていた。
そりゃそうだ。
いつもなら“様”をつけ一人称は“私”。
そして日々の敬語。
こんだけ態度が変わりゃ流石に彼女でも怖がるのだろうか。
でも…彼女は俺にとってとても興味深い存在だ。
何事に対してもありがとうやごめんなさいといった挨拶を忘れない。
俺が接し方を間違え、追い詰めてしまったのにも関わらず今や何事も無かったかのように接してくれる。
そして…
……色んな人に愛されてる。
仕事だからこそ挨拶さえするが、彼女は俺とは全く真逆の世界に生きている。
俺だったらキレるところを彼女は笑って許してくれる。
そんな彼女に俺はとても興味があったのだ。
だからこの時誘ったのもただの気まぐれ。
別に断られるのを前提で話してる。
執事とお嬢様がプライベートで出かける意味わかんねぇし。
でもその答えは思っていたものとは違った。
結『うん。分かった。でも…まだ体調万全ではないし、予定がまだ分からないから分かったらまた連絡するね。』
榊「えっ」
結『え?』
正直予想外すぎて驚いた。
普通なら絶対断るだろう。
彼女は俺を信用してるのか?
こんな俺を?
ありえない。
でも……
榊「分かった。連絡、待ってる。」
俺はそう答えた。
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