当て馬にも、ワンチャンあってしかるべき!

紫蘇

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学園2年目

ダンジョン再生計画6.逆から探索

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山登りから3日後。

なんやかんや言いながら必死こいて石をどけてダンジョン10層の出口を確保できたので、せっかくだから上から攻略してみようかという話になり、今日も馬に荷物を載せてもらって山登り。
ウィン兄とディー兄は今日も、馬と一緒にニコニコ着いてきてくれる。

1層ではおじいちゃん先生の指示のもと、天井に明かりを設置する作業が進められている。
足りない分は魔石工学のみんなで作ってくれているし、再生計画がひと段落したら労いのパーティーでもするか…なんて話をしたりしながら山を登る。

「とはいえ、ひと段落なんてまだまだ先の話だ」
「じゃあ菓子折りでも持って行きましょうか」
「そうだな、ダンジョン出たらアイリス商会へ行って相談してみるか」
「とりあえず無事に帰ってからだな、何事も」

参加してくれた人の名簿も作らないとな…
なんて話をしていたら、いつの間にかダンジョン10層出口の穴に着いた。

----------

ここからディー兄は馬を連れて学園へ戻り、ウィン兄はダンジョンに同行してくれることになった。

今日は6人パーティーだ。
10層は穴を取り戻したおかげで少し明るい。
広いワンフロアに柱が数本立っているような構造がよく分かる。

「やっぱりライトより断然明るいですよね…」
「魔法で日光と同じものを作るのは難しそうだね」
「出来たとして、魔力が持たなかったら意味ないですしね…。このあたりは、魔石工学の分野なのかもしれないな~」

10層のマップによると、この出口を起点に北東へ数メートル進んだ場所に泉があることになっている。
前回見落としたかもしれないので探してみることに…。

「柱の本数も数えた方がいいんでしょうかね?」
「増えたり減ったりしてないかってこと?」

するとケンタウレア先生が言う。

「すまん、柱の本数は自信がないんだ…」
「そうなんですか」
「壁の形や脇道のことは覚えているんだが…」
「仕方ないですよ、こんなに広いんだし」

過去のデータと比べられないのは残念だけど、現在の本数は確定しておいたほうが良いよな。

「全体が明るくなれば、確実に数えられるかな…。魔道灯待ちですね」
「そうだな、暗いと見落としそうだ」
「…ところで、この辺じゃない?泉のある場所…」
「全然水の音しませんね…ちょっと明るくしましょうか…「ライト、ちょっと強く光って~」」

今日も頭から光源を生やす。
昨日よりちょっと強めに光らせてみる。

「どうですかね?」
「お、かなり明るい…あれかな?」
「あっ…あれか!」

みんなで近くまで行ってみる。
水があまり溜まっている感じはない…
そもそもどこに流れて行くんだろう?
地面に染み込んでるにしては小さすぎる気が…。

俺は水がどこへ行くのか気になって、
水溜りの縁を調べてみることにした。

「確かに水は湧いているが…うーん…」
「地図に比べて、池の部分が小さくないですか?」
「私の記憶からしても、以前より縮んだかと…」
「そうだな、俺もそう思う」

ゴード先輩やケンタウレア先生の記憶からしても、どうやら池のサイズは小さくなっているらしい。

「こうなると乱獲だけが原因では無い…のか?」
「もし相手が自然だとすると、一筋縄ではいかなさそうですね…ん?」

なんだここ?穴が開いてるぞ…。

「この穴、なんでしょうね?」
「ん?なんだこれは…。
 この穴に湧水が流れ込んでいってるな。
 だから泉が小さくなってるのか…」
「でも、この前見たとき、下の層で天井から水漏れしてるところは無かったですよね?」

軽々しく埋めるのもまずい気がして、とりあえず置いておくことに。

「魔生物に、穴を掘って土の中を進むサンドワームというのがいるんですが、それでしょうか…」
「サンドワームって、乾燥地帯にいるんじゃなかったでしたっけ」
「そうだね、乾燥地帯では砂の中に住んでて、いきなり出てきて人を襲うんだ…確か、土属性だね」
「土属性だと、水にはやや弱い?」
「うん、でも生きている限りは水飲まないと生きていけないからね、水属性が弱点の敵でも生きてる魔生物には下位魔法が効きづらいんだよね。
 スライムもそうでしょ?」
「そうでした、水魔法の効きが悪いのが納得できないって…リリー君が言ってたんですけど、それは生きてるからってことなんですね?」
「そう、だから下位の水属性が効く魔生物は基本的にアンデッド系で、魔力だけで動いてるやつだね」

サラマンダーでも水飲むからね~と、ソラン先輩が教えてくれる。

「そういえば、乾燥地帯でこちらのスライムに該当する魔生物って何なんですか?」
「アリとか、サンドワームの幼体なんかだよね。砂漠の魔物は卵を沢山産むものが多くてね、その卵も魔生物の食物連鎖を支えてると言われてるよ」
「なるほど…。ローズ王国には砂漠がないですけど、それでもサンドワームは出るもんなんですか?」
「ミミズが魔力を持った結果がサンドワームだから…表に出てこないだけで、土の中には意外といるんじゃないかって話だね。
 土の中にいる生き物を食べて生活できるんだったら、表に出なくても生きていけるでしょ?」
「そうですね、わざわざ出てきて討伐されたくないですもんね」
「出てきて討伐されるやつも大きくはないんだ。
 ミミズの10倍程度だもん…だから、乾燥した地域以外では大きくならないと言われてるね」
「そう…なんですね」

ん?ちょっと待て。

今まさに乾燥してるダンジョン。
乾燥地帯で大きくなるサンドワーム。
乾燥地帯で大きくなる理由はなんだ?
生き物は水を飲まなきゃ生きられない。
乾燥地帯の水源は…地下の奥深くになるよな?
つまり地下深くまで土を掘る力を得るために大きくなるんじゃないのか?
どうやって?
そりゃ飯を食って…だろ…?

あれ、待って待って。

「水が沢山あれば、そのぶん大きくなる…
 ってことはないんです…よね?」
「乾燥地帯にいないサンドワームは小さいから、それはないと思うな…そもそも土属性だから、水が多すぎると弱ったり死んだりするはずだよ」
「なるほど、ある程度大きくなるためには水の量が多すぎないことがポイントでもある、と…。
 ところで、ある程度大きくなってしまうと、その先の成長過程では逆に土地を乾燥させてしまう…ってことはないですよね?」
「どういうこと?」
「乾燥地帯が大きなサンドワームを育てて、そのサンドワームが乾燥を招くっていう循環が、摂理として成立しているんだとしたら…どうですか?」

何か、嫌な予感がするんですけど。

「生き物は水を飲むんですよね、大きければそのぶん水も飲みますよね?大きくなる段階で摂取する水の量が増えることになりませんか?サンドワームは土に含まれてる水分を摂るんですよね?

 もしも、の話ですけど。

 もしも、このダンジョンの地下で、めちゃくちゃでかいサンドワームが生活していたとしたら…

 すごいたくさん水分を摂りますよね?
 それこそダンジョンが乾燥するくらいに…。

 食べる量も多くなりますよね?
 ダンジョンの魔物を食い尽くすくらいに…。

 そう考えると、ですよ?
 何となく今の状態に、説明がつきません?」

俺の言葉に、ソラン先輩が固まる。
その意味は多分…「可能性はある」ってことだ。

「おい、どういうことだ」
「もしかしてこのダンジョンのどこかに…でかいサンドワームが隠れてるかもしれないって…ことです」
「そんな、まさか!」
「もしも、頂上をふさいでた石が石じゃなくて、何かの糞とか分泌物だったとしたら…あそこにがあったことにも説明がつく気がするんです」

資料収集の時に新聞を片っ端から調べたけど、山が崩れるほどの地震の記録も大雨の記録も無かった。
あの石がこの山に現れるような自然現象は…
ここ20年、調べても無かったんだ。
ここ2~3年で、あんなに大きな石が山の中腹に突然現れた理由が、自然現象では説明がつかないんだ。
それに、あの石は…丸かった。

「すぐに持って帰って成分を調べましょう!」
「今ならまだ、ディーも遠くまで行ってないよ!しばらく馬を休ませてから帰るって言ってたから」
「ウィン兄、ディー兄に声かけてきて!」

俺たちは慌ててダンジョンの出口へ向かう。

「1層で何も起きていなければいいけど…」
「大丈夫だ、校長もいるし、ミモザ卿もトルセンもいる。あの校長の研究室に出入りしてるやつらが1層に集まってる、何とかなる…それに、アナガリス兄弟なら馬で山を走り下りられる。伝令を頼む!」
「分かりました!石のサンプルは拾っていきます、ルー、一緒に来るんだ!」
「え!」
「ルーは足が遅い、だから馬に乗せていきます。
 いいですかケンタウレア師!」
「構わん」
「そ、ソラン先輩は!?」

ソラン先輩も足は速くない。
足が遅いから馬に乗せるならソラン先輩はどうなるんだ、と思ったら…

「どうみたってルーより重いから乗せられない!
 ゴード、カイト、ソランのこと頼む!」

ちょっと、ウィン兄!?
ソラン先輩が太ってるみたいな言い方しなくても!
見せつけるみたいにお姫様抱っこしなくても!

「確かにソランじゃ…そうはいかないよな」
「身長も高いし…体格もいいからな」

ゴード先輩、カイト君、追い打ちかけないで!

ぐんぐん遠くなる4人。
小さくつぶやく声が聞こえる…

「僕って…デブ?」



そんなことない!
そんなことないよ!?
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