当て馬にも、ワンチャンあってしかるべき!

紫蘇

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学園2年目

無関係の人などいない

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可愛い2人とダンスした直後に殿下と3曲も踊ってへとへと。

「お前たちに警告する。
 ルースは俺のものだ」

って、子どもにする牽制じゃないと思う。
そのうえ3曲も踊るとか大人げないと思う。

「お疲れさんじゃったのう」
おじいちゃんがコーヒーで俺を労ってくれる。
「はあ…はあ……ダンス、踊れてましたかね」
「振り回されとるだけじゃったの」

やっぱりね。

コーヒーを飲んだらちょっと元気が出てきた。
俺が踊っている間にみんなある程度食事をしたようで、いくつかのテーブルでは議論が始まっている。
様子を伺いに、おじいちゃんと一緒に教授が固まっているところへ行ってみる。

魔石工学の教授が言うのが聞こえる。
「だからまず先に、魔石錬成の可能性について…
 おお、ルース君、ちょうどいいところに…
 話を聞かせてくれないか」

すると魔生物学の教授が言う。
「確か、瀕死の骸骨兵が集まってスカルキングになるときの現象がヒントになったと聞いたが…
 ルース君、そうだな?」
「ああ、はい、実際に見ましたから」

古代魔法のマグノリア先生が言う。
「その話は後でも宜しいでしょう?
 今は光属性についてしっかり検証すべきです、それに拳法家の方が使う「気」が魔力と似ていると…
 せっかくクリビア氏とケンタウレア師をお呼びしたのですから」

おじいちゃんが言う。
「そうじゃなあ、明日明後日と魔法師団の練習場を借りる予定にしとるから、学園で出来ん実験が必要なことから先に話し合っておくべきじゃな」
「となると、やっぱり賢者の杖関係ですね」

あれは持ち出せないよ。
無くしたらン十億だよ?

すると、そのン十億の魔道具を使う係のトレッドさんがやってきて言った。
「そういやなんで俺が使うことになったんだ?」
「魔法と縁が無いからですね」
「魔法の研究に魔法使えないやつが必要なの?」

とんでもなくシンプルな質問。
トレッドさんには魔力に対する誤解があるようで…

「魔法が使えないのは魔力が無いからだろ?」
「いや、生きている限りどんな生き物にも魔力はあるんですよ、不思議なことに」
「えっ、そうなのか?」

そう、無いと思っているから使わない、だから魔力が少ない…最初のアレクさんがそうだったように。

「だから無意識に体内に流れている魔力を使って、あの杖が「すべての属性の魔法が使えるようにできる」のかを知るのにちょうどいい人材…ということで、声をかけてみたところ…」
「いいよって言ったのが俺だけ…と」
「そうなんです、みんな怖がっちゃって。
 そんで、使えたとして、さらに「魔石も無いのに」光魔法も使えるかどうかっていうのがさっき追加されたところですね。
 杖に光の魔石らしきものが見当たらないので…」

ふんふん…とトレッドさんは頷いて、言った。
「ってことは、それやらないと話が始まんない研究もあるよな?」
「あー、まあ、そうなんですよね…」

ということで、今日ここで話し合う内容は…

「他にどんな実験をするか、とか…実験結果を予測するとか…そういう感じですね」
「つまり実験の予定と順を組むということじゃな」
「ですね。
 古代魔法を中心に、それが魔石工学や魔生物学にどう関連していくか…というところですかね」

その時、マグノリア先生の目が光った。

「では、私たちが考えてきた議題を中心にして良いということですね!?」
「ま、まあ、そうなるかの?」
「仕方ない…
 それが終わったら魔石錬成についてだからな!」

魔石工学の先生は悔しそうだ。
魔生物学の先生は…ソラン先輩と一緒にローストビーフをモリモリ食ってる。
いいなあ…俺もお腹空いたなあ。

あ、そうだ。
「魔石錬成と言えば、あの賢者の杖についてる魔石なんですけど…あそこまで高水準でレベルがそろってるって珍しいんですよね?あの魔石…実は錬成で作られた物だったりしないんですかね」
「何?」
「色と大きさから魔石に閉じ込められた魔力を数値化できてるんだから、数値的に揃うように合成する式があってもおかしくないんじゃないかなって」

そう、実は俺、古代魔法と共に失われた技術なんじゃないかなって疑ってるんだよね。
だから、この話はマグノリア先生も巻き込んじゃうことになるんだよなあ…。

「だって、誰でも考えつくと思うんですよ、二つをガッチャンコして強力な魔石にできないかって。
 で、かつてはそれが出来たんじゃないかなって。
 
「えええ!?」

冬休みに、覚えたての業火インフェルノで合成できるか色々やってみたんだけど駄目だったんだ。
まあ、折角ヘヴィさんもいるから地獄の業火グランド・インフェルノも念の為確認させてもらってから…ってことになるんだけど。

「それとですね、今普通に集まる魔石…火・水・土・風・雷を固めるともしかして闇の魔石になったりしないのかなっていう疑問が…ありまして」
「…は?」
「前ね、殿下が『闇魔法を極めることは全部の属性を持つのと同じだ』って言ったんですよ、それが引っかかって…赤に黄色に茶色に青に緑でしょ、混ぜたら黒になりそうじゃないですか?」
「待て、待ってくれ、今の魔石工学は…」
「魔石をそのまま使うのが基本ですよね。
 こういう研究してる人が「今は」いないんです。
 ただ、闇魔法って表に出せない部分が多いんで、王家にならその記録が残ってるのかな~って…」

魔石工学の教授が殿下にロックオンした。
キッシュ食ってる場合じゃねえですよ、殿下。
あと、俺もローストビーフ食べたいなあ。

「それに、闇の魔石って大発生のときにしか出ないんですよね?何ででしょう?」
「な、なに、うちもか」

そりゃ魔生物学だって他人事じゃないでしょうよ…

「魔生物を倒してしか手に入らないんですよ、闇の魔石が出る魔生物の情報は大事になるでしょ?」
「なるほど、形状から何から、共通点が無いか文献を当たってみよう…そういえば、カメリアで起きた大発生の時、ミモザ卿は前線におられたんだったな」

うん、あっこでエルグラン王子と仲良く飯くってるおじさんに話を聞かないといけないよ?
なんならそこで弟子たちと和気あいあいとチキン食ってるおじさんもだよね。

「大体、魔石錬成を思いついたのはスカルキングの発生を見たことが発端なんですから…。
 色んな魔石を取り込んで体内で錬成してるのかも…って考えたら、もしかしたら鍵になりそうなのが…」

魔生物学の教授がケンタウレア先生を見る。
ケンタウレア先生もパッとこっちを見る。
見られてる気配に気づくのが早いなぁ…さすがだ。

「まさか…「気」なのか?」
「そうですね、ケンタウレア先生から借りた指南書に、体内で気を練るって書いてあったので…」
「魔物と一緒にされるのは癪だが…仕方ない」

そこで、どうやら他人事ではないのだと気づいたクリビアさんが俺に聞いた。
「待ってください、じゃあ、私は何のために?」
「クリビアさん、光魔法しか使えないんですよね?
 今の魔法の中でも光属性は極めて原始的な魔法なんじゃないかって…それで」

俺の言葉に、マグノリア先生が補足する。
「そうなんだ、今の魔法の中で、光魔法だけはかなり古代魔法のやり方と近いんだ…だから、光魔法しか使えないクリビアさんなら、古代魔法の方法を使えるかもしれないと思って」
「ええー!そうなんですか?」
「まあ、トレッドさんの杖実験待ちなとこはありますけど…ちょっとご協力いただけたらなと…」

そう、自分は無関係だと思ってのんびり飯を食ってると、痛い目に合いますよ、この会合。

何かを察したウィン兄とディー兄が俺に聞いた。
「ルー、僕らは関係ないよね?」
「うん、魔法のこと「は」ね」
「あー良かった…。
 俺、あっちでケーキ貰ってこよっと」

そんな2人の姿を見て、話しかける人が1人。
「アナガリス辺境伯の息子さん、貿易、話する」
「へ?」
「シャラパール、馬、欲しい」
すかさずノースさんの後からついてきていたアイリス商会の3人が言った。
「そうなんですよ、うちの商会で扱えないものの1つが、アナガリス産の馬なんで…
 なんせ軍馬ですからね、王家とご当主と両方に直接交渉してもらわないといけないんですよ」
「そういうことですから、是非別室でお話をと…」
「陛下もあちらでお待ちになっておられます」

ニコニコと2人を取り囲んで連行していく4人。
商取引のことになると俄然圧がすごい…
商売っ気の「気」も、もしかしたらもしかするな。

「俺らだけじゃ決められないよ!?」
「わかってる、でもご当主と話、縁ないと無理ね」

つまり、今ご縁を作りましょうってことだね。
行ってらっしゃい!

「俺のケーキがぁ~!」
「うええ…面倒くせえ…」
「そんな言わない、ね?」

これだけ他人に振っておけば、しばらく落ち着いてご飯が食べられるだろう。
やってやったぜ。
すると、かわいい2人がこっちへホットドッグを持ってやってきた。

「るーすたん、これふぁいあして!」
「ちょっとふぁいやーして!」

はいはい、ちょっとファイヤーね、
って、まさか。
あの王宮に似合わないコーナーは…

「ほれ、「ちょっとファイヤー」!」
「ちょっとファイヤー」
「ちょっとファイヤー!」
「ほら早く!ルース先生も!」

ちょっとファイヤーお披露目会かよ!!
結局ここまで来てホットドッグ食うのか…

あれ?

もしかして…

ホットドッグ温めるのが、俺のチート能力か…?
クッソしょぼっ!!
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