当て馬にも、ワンチャンあってしかるべき!

紫蘇

文字の大きさ
115 / 586
学園3年目

讃美歌とキレる若者

しおりを挟む
言語学の研究室にワルド先輩を迎えに行って、いきなり言語学の教授に「言語学に興味があるだろうそうだろう」と勧誘を受けた後、4人で講堂へ向かった。

「讃美歌なんて言葉自体、久々に聞くな」
「俺も入学式で聴いたっきりですね」
「揃いも揃って信心のないやつらだな!
 まあ俺もだが」
「僕も…入学前は聖歌隊に入ってたんですけど、辞めてしまったから」

そんなもんだよね。
俺なんか神様(ゲーム制作者)を一時いっとき恨んでたくらいだしなあ。
そういえば30人にフラれるのを回避するって頑張ってたっけ…回避できてんのかね?これ。
まあ、最近じゃ「フラれたくらいで死にゃしないよ」ってなってるけどな。

もうこれ俺の現実だもん。

「さて講堂…確か普段はこっちから入るんだ」
「あ、そうなんですね」
「ここからだと、入って正面に祭壇がくるようになってるんです…確か」
「なるほどー、そういうことかぁ」

質素な扉を開けて中に入る。
中には2~3人の生徒がいて、教典を読んでいた。
邪魔をするのも何なので、誰かが気づいてくれるまで後ろの席に座って待つことに。

「教典くらい持ってくれば良かったかな」
「僕、小さいのなら持ってますよ」
「ほんと?見せて見せて」

俺ら3人はルディ君の小さな教典を覗き込んだ。
普通はこういうの持ってるもんなのかな?
俺も買っとこ…購買にあるかなぁ。

そうやって4人で団子になって教典を読んでいると、ついに俺たちに気が付いた生徒…?らしき人が声を掛けてくれた。

「神殿に何の御用ですか?」

やべ、ちょっと怒ってる。
邪魔しちゃったかな…。
信心の無い俺たちに代わり、ルディ君が言った。

「はじめまして、僕たち、賛美歌について知りたくてやってきました。僕はルディ・マグノリア、こちらは先輩のワルド・ラナンキュラスさん、それから」
「ああ、後の方は知っています。
 マグノリア教授と、ルース…さんでしょう」
「あ、はい、ルース・ユーフォルビアです」
「ああ、ユーフォルビア…でしたか、それは」

うーん、やっぱり怒ってんのかな?
変な嫌味を食らってしまった。
そして信心が無さすぎる俺に代わって、またまたルディ君がこの彼と交渉してくれた。

「あの、ここにある賛美歌の楽譜を見せて頂くことは出来ますか?なるべく古いものから、順に」
「何故です?」
「かつて神に捧げられていた歌を復活させたいと」
「分かりました…神官長様に聞いて参ります」

彼が奥へ引っ込むと同時に、ふっと気が抜けた。

「すごいねルディ君…あの人と話せるの」
「そう…でしょうか、小さい頃から、神殿の方と話すのは、慣れてるから、かな…」
「あの「理由」の説明もさ…俺なら古代魔法の研究に使うって言っちゃいそうだもんな」
「神の為に用意されたものを、研究に使うのは、なかなか認められないんです、だから…」
「何にしろすげーよ、ルディ。機転がきくじゃん」
「本当だな、俺らと違って信心深いだけある」

そうやってヒソヒソやっていると、さっきの彼がやってきて言った。

「どうぞ、奥で神官長様がお待ちです」
「あ、はい…」

そそくさと彼に着いて奥の部屋へ入る……
が、何だか荒れた部屋の中には誰もいない。

「あの、神官長様は…」
「私ですよ」
「えっ」
「それで、今度は何を思いついたんです?
 ルース・ユーフォルビア。
 どうせロクでもないことでしょうが」
「あー、いや、あの…」
「貴方の存在は神への冒涜です、魔法という神がもたらした奇跡の力を、あのようなことに使うとは」
「えー、違うんです」
「ほう、何が違うのです?
 ただ楽をするために魔法を使うなど、神が与えて下さった力を馬鹿にしているからでしょう」
「あのー」
「まあ、ユーフォルビアは信心の欠片も無い家ですし、そこの次期当主ともなれば今更神をどれだけ崇め奉ろうと救われるはずもありませんが」

おーおー、言いたい放題だなー。
まあ、ウチに神殿に寄進する金はないから、感謝なんかされるはずないし信心がないのも本当だ。
しかし問題はそこじゃないんだよな…

「仰ることは分かりますけど、違うんです」
「何が違う!今度は神をも利用する気か?
 この不信心者!神をも畏れぬ不敬者が!!」
「えーと、思いついたのは俺じゃありません」
「はっ、『俺じゃない』だって?」

そう、問題は…

「あ…あの、僕…が…」
「…えっ…」
「ぼ、ぼくが、かんがえついたん、です…」

神官長の顔がみるみる青くなる。

「あ、あ!え!いや、す、すみません、その!」
「ごめんなさい…、ごめんなさい…!」

ついにルディ君はポロポロと泣き出してしまった。
あーあ。わーるいんだ、悪いんだー。
ワルド先輩が言いたてる。

「おい、神官長シンカンチョーが歳下を泣かしたぞ」
「うわー最低ー」
「ルディ大丈夫だ、おじさんが付いてるからなっ」

あからさまなくらいにルディ君をしっかと抱きしめるマグノリア先生。

「う、う~、ぐすっ、うう~」
「いや、その、私は、君を傷つけるつもりは」
「ろ、ろくでもない、って、う、う~」
「違う、違うんだ、その、こいつが!」

こら、神職が人を指差すでねえ!
すると更にワルド先輩が言いたてる。

「いや、最初から説明してたのはルディですよ」
「う、うるさい!お前がいるから悪いんだ!
 不信心者のユーフォルビア野郎!!」
「ユーフォルビア野郎?」
「うるさい!うるさい!うるさーーい!!」

ついに神官長様が錯乱し始めた。
泣くルディ君、慰める教授、煽るワルド先輩。
そしてビタイチ寄付をしないユーフォルビア野郎。


何なんだユーフォルビア野郎って…
それって悪口なんか?
しおりを挟む
感想 69

あなたにおすすめの小説

お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!

MEIKO
BL
 本編完結しています。お直し中。第12回BL大賞奨励賞いただきました。  僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!  「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」  知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!  だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?  ※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。

転生したらBLゲームのホスト教師だったのでオネエ様になろうと思う

ラットピア
BL
毎日BLゲームだけが生き甲斐の社畜系腐男子凛時(りんじ)は会社(まっくろ♡)からの帰り、信号を渡る子供に突っ込んでいくトラックから子供を守るため飛び出し、トラックに衝突され、最近ハマっているBLゲームを全クリできていないことを悔やみながら目を閉じる。 次に目を覚ますとハマっていたBLゲームの攻略最低難易度のホスト教員籠目 暁(かごめ あかつき)になっていた。BLは見る派で自分がなる気はない凛時は何をとち狂ったのかオネエになることを決めた オチ決定しました〜☺️ ※印はR18です(際どいやつもつけてます) 毎日20時更新 三十話超えたら長編に移行します メインストーリー開始時 暁→28歳 教員6年目 凛時転生時 暁→19歳 大学1年生(入学当日) 訂正箇所見つけ次第訂正してます。間違い探しみたいに探してみてね⭐︎ 11/24 大変際どかったためR18に移行しました 12/3 書記くんのお名前変更しました。今は戌亥 修馬(いぬい しゅうま)くんです

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

当て馬的ライバル役がメインヒーローに喰われる話

屑籠
BL
 サルヴァラ王国の公爵家に生まれたギルバート・ロードウィーグ。  彼は、物語のそう、悪役というか、小悪党のような性格をしている。  そんな彼と、彼を溺愛する、物語のヒーローみたいにキラキラ輝いている平民、アルベルト・グラーツのお話。  さらっと読めるようなそんな感じの短編です。

同室のアイツが俺のシャワータイムを侵略してくるんだが

カシナシ
BL
聞いてくれ。 騎士科学年一位のアイツと、二位の俺は同じ部屋。これまでトラブルなく同居人として、良きライバルとして切磋琢磨してきたのに。 最近のアイツ、俺のシャワー中に絶対入ってくるんだ。しかも振り向けば目も合う。それとなく先に用を済ませるよう言ったり対策もしてみたが、何も効かない。 とうとう直接指摘することにしたけど……? 距離の詰め方おかしい攻め × 女の子が好きなはず?の受け 短編ラブコメです。ふわふわにライトです。 頭空っぽにしてお楽しみください。

転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが

松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。 ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。 あの日までは。 気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。 (無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!) その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。 元日本人女性の異世界生活は如何に? ※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。 5月23日から毎日、昼12時更新します。

処理中です...