当て馬にも、ワンチャンあってしかるべき!

紫蘇

文字の大きさ
463 / 586
学園6年目

案の定発熱 ~アルファード視点~

しおりを挟む
招待制学術交流会が終わったその日、
ルースは案の定熱を出して寝込んだ。

「うー…頭痛い」
「頑張りすぎだ、少しは休め」
「うう…はい、ゴホゴホ」

今回はどうも風邪ひきらしい。
寝不足のうえに厨房でぎりぎりまで手土産のマフィンを作って汗をかいたまま寒空の下新年会に出席すれば、そうなるのは目に見えていると思うのだが。

「来年の手土産は外注にしろ」
「うー…、でも、俺が招待して…友達、だし…」
「な・ら・ん」
「すみませ…ずずっ」

まったく、風邪では手も出せんではないか。
さっさと治って貰わねば…。

「そういえば、薬学の2人はまだ居たな?」
「そうれす…後宮の裏庭に薬草畑を作るって…」
「風邪に効く薬が無いか聞いてくる。
 大人しく寝ていろ、いいな」
「うう、でも、色々読む物が」
「な・ら・ん」
「あい…」

まったく、何のために側室がいると思っているんだ。
あれは正室の仕事を分散させるためにあるのだぞ?
さっさと分担を決めて周知させねばならん。

「今のうちに決めてしまうか…」

俺もやる事をやらねば、愛想をつかされてしまうな。
さっさとやってしまうか…ふむ。

「しかし、まずは薬学のを探すのが先だ」

さてと、後宮の裏庭…ということは、やつらは王宮に泊まっているのだろうか?

「それにしても、庭に畑…とは?」

研究熱心な事だ…と言って、良いのだろうか。


***

後宮の裏庭に回ってみるとそこに薬学の2人がいた。
2人は庭の木々の間に縄を張り、畑の計画を練っているようだった。
気が付く様子の無い2人に声を掛ける。

「ブレティラ教授、スキルラ助手」
「これは、殿下!…今日はお一人で?」
「残念ながらな」

そう言うと2人は顔を見合わせ、頷き合い…
意を決したように教授の方が言った。

「とんでもありません。
 殿下がお一人になられるのを待っておりました」
「…なぜだ?」

そう聞くと、助手のほうがそっとピンク色の小瓶を差し出してきた。

「何だ、これは」
「カメリア王家に伝わるでございます」
「…何?」

と、いう事は…これは、媚薬…!?

「私共、カメリア城に潜入致しまして、そこで宮廷薬師の方と仲良くなりまして…少しだけ分けて頂きました」
「でかした」
「有難きお言葉」

勝手についてきて居なくなったと思ったら、そんな所に…潜入の手腕が上がってきたな。

「その方に、駄目で元々と思いつつもこの秘薬の調合について尋ねてみたのです」
「なるほど?」
「残念ながら、今はこの薬をローズで調合することは叶いません。
 材料がこちらに無いのです…カメリアでも王家が管理する森にしか生えていない薬草が元だそうでして」
「ほう」
「それで、その薬草をこちらでも育てられないかと思いまして…ここに、種を蒔こうかと」

そう言って教授の方が小さい紙袋に入った種を見せた。

「その種…いくらかかった」
「10万程でございます、それ以上は誤魔化しが効かぬからと」
「10万か…分かった、20万出そう」
「えっ…!良いのですか!?」
「うむ、こっちの薬の方の代金もあろう?
 上手く育てばさらに80万、計100万。
 その上で薬が完成すれば初年度は1本10万…
 その次の年からは毎年薬が出来上がった時点で、価格は両者の話し合いにより決定する、というのはどうだ」
「ははっ…有難き幸せ!!」

さすがにこれを商取引で真正面からは無理だろう。
一応、媚薬の類は法で禁じられているからな。
まあ後宮の事ならどうとでもなる……


ふふふ。


あ、いかん。
大事な事を忘れていた。

「そうだ、お前たち。
 風邪に効く薬は調合できるか?」
「ええ、症状に合わせて調合致しますが、どのような?」
「熱・鼻水・せきだな」
「典型的な風邪ですね…誰かからうつされたので?」
「いや、冷えただけだろう。
 汗をかいたまま外での宴に出たりするからだ」
「あ、あー…なるほど」
「後ほど離れへお持ち致します、お待ちを…
 行くぞ、シーマ!」
「はい、教授!」

そういうと2人はサササ…と最小限の足音で王宮薬草園のほうへ消えた。

「…まるで影だな」

彼らのうちどちらがこれから学園に残るのかこっちへ来るのかは分からんが…
いや、薬学の授業なら代わりもいるし、両方引き抜くのもアリか。

「…ふむ」


俺はそのまま離れへと戻り…
眠っているルースに気付かれないように、ベッド下の小箱へそっとピンクの小瓶をしまった。

しおりを挟む
感想 69

あなたにおすすめの小説

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!

MEIKO
BL
 本編完結しています。お直し中。第12回BL大賞奨励賞いただきました。  僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!  「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」  知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!  だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?  ※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。

転生したらBLゲームのホスト教師だったのでオネエ様になろうと思う

ラットピア
BL
毎日BLゲームだけが生き甲斐の社畜系腐男子凛時(りんじ)は会社(まっくろ♡)からの帰り、信号を渡る子供に突っ込んでいくトラックから子供を守るため飛び出し、トラックに衝突され、最近ハマっているBLゲームを全クリできていないことを悔やみながら目を閉じる。 次に目を覚ますとハマっていたBLゲームの攻略最低難易度のホスト教員籠目 暁(かごめ あかつき)になっていた。BLは見る派で自分がなる気はない凛時は何をとち狂ったのかオネエになることを決めた オチ決定しました〜☺️ ※印はR18です(際どいやつもつけてます) 毎日20時更新 三十話超えたら長編に移行します メインストーリー開始時 暁→28歳 教員6年目 凛時転生時 暁→19歳 大学1年生(入学当日) 訂正箇所見つけ次第訂正してます。間違い探しみたいに探してみてね⭐︎ 11/24 大変際どかったためR18に移行しました 12/3 書記くんのお名前変更しました。今は戌亥 修馬(いぬい しゅうま)くんです

転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが

松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。 ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。 あの日までは。 気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。 (無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!) その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。 元日本人女性の異世界生活は如何に? ※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。 5月23日から毎日、昼12時更新します。

同室のアイツが俺のシャワータイムを侵略してくるんだが

カシナシ
BL
聞いてくれ。 騎士科学年一位のアイツと、二位の俺は同じ部屋。これまでトラブルなく同居人として、良きライバルとして切磋琢磨してきたのに。 最近のアイツ、俺のシャワー中に絶対入ってくるんだ。しかも振り向けば目も合う。それとなく先に用を済ませるよう言ったり対策もしてみたが、何も効かない。 とうとう直接指摘することにしたけど……? 距離の詰め方おかしい攻め × 女の子が好きなはず?の受け 短編ラブコメです。ふわふわにライトです。 頭空っぽにしてお楽しみください。

メインキャラ達の様子がおかしい件について

白鳩 唯斗
BL
 前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。  サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。  どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。  ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。  世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。  どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!  主人公が老若男女問わず好かれる話です。  登場キャラは全員闇を抱えています。  精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。  BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。  恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

処理中です...