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学園6年目
マリッジ・ブルー的なやつ
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学園に戻る2日前。
俺はポンコツ4から試験問題を受け取る為に実家へ戻った。
「リチャードさん、ベルガモット教授と4つ子ちゃんの様子はどうかな」
「ええ、魔法侯爵様たちが頑張ってオムツを変えたり寝かしつけたりしておられますよ」
おお、ちゃんと父親してるじゃん!
さすが俺の手伝いを断っただけのことはある。
俺はもう一つの気がかりを執事リチャードに聞く。
「最近は代替乳、あまり買わなくなったって聞いたけど」
「ええ、乳の出が良くなったそうで…できるだけ自分の乳で育てると仰いまして」
「そっか…」
どうやら、その昔身体強化魔法を探してた時に見つけた古代魔法が役に立ったらしい。
豊胸の魔法なんか何に使うんだと思ったけど…思い出せて良かった。
この世界、人の乳と代替乳には大きな差がある。
魔力含有量だ。
魔力が成長にどう左右するかと言えば、まあ魔法を使えるようになるのが早くなるって事くらいだけど…
魔法侯爵家の血を引く子ならやっぱり早い方が良いだろう、って、ベルガモット教授が頑張ってるんだ。
「…魔力を抽出できる方法があればなあ」
「魔石を砕いて飲むわけにはいかないんですか?」
「成人にも使った事のない物を、乳幼児に与えるわけにはいかないよ。
安全のうえに安全を重ねていかないと、赤ちゃんってすぐ死んじゃうから…
あっ」
「どうしました坊ちゃま」
「乳は血液から作られるんだ。
その仕組みが解明できたら…魔力抽出に繋がるかも…?」
「それ、どうやって解明するんですか」
「それはまだ分からないけど、アイデアだけでもあると違うからさ…」
詠唱によれば水と雷の精霊…電気分解?
いや体内でそれは無理…、だけど、神経伝達は電気…だからワンチャン…
……ワンチャン、か。
「はあ」
「どうしました坊ちゃま」
「俺、本当に王子様と結婚していいのかな」
「何を急に…」
「俺、やっぱ政治とか無理…研究のほうが好き」
「坊ちゃま」
「俺、貧乏貴族だから許されてきた事いっぱいあると思って。
1人で何でもできる方が偉いと思ってたし。
仕事や身分で人を見るなって言われたから、年上には誰でも「さん」付けでやってきたし。
でも、結婚したら仕事に集中するのに掃除や片付けを人にやってもらわなきゃいけないし。
今度からリチャードさんの事もリチャードって呼べって…」
「坊ちゃま…」
ただただ、不安だった。
自分で本当に務まるのか。
ユーフォルビアという、由緒正しい奴隷の子が。
貴族らしい優雅さも品も無い人間が。
ローズという大国の、たった一人の王子様の正室になるプレッシャーが苦しい。
「何をするにしても経済効果だとか政治的思惑だとか…ついてくるし。
確かに、経済学も政治学もさんざんやってきたし、学者さんの知り合いもいる、だけど…、俺、俺みたいな凡人、パッとしない見た目の、こんなんが…流行作るとかって、笑い話にもならないし」
「そんなこと…ありませんよ」
「ううん、自分の見た目は自分が一番分かってる。
兄弟の中で一番地味だし」
「そうですかね?」
兄たちはどうだったんだろう。
みんなその国で最高峰の一人っ子に嫁いだ。
プレッシャーは?
「リチャードさんは、兄さんたちが結婚するとき…どうだったか、分かる?」
「…そうですね、この国を出てゆかれる時の事なら…多少は。
皆様、不安を抱えられて…出立の日が来るまで、泣いていらっしゃいました。
でも…どなたも、恋人と別れて仕方なくという事はありませんでしたから…
そこは、救いだったかもしれません」
「そっか」
「ローズから出れば恋が出来ると…相手は決まっていても、恋が出来るということを希望に、皆様ここをお発ちになりました。
皆様、子どもを産む事だけを期待されて輿入れなさいました…
産む以外の事を期待されて輿入れされるのは、ルース坊ちゃまが初めてです」
「…そっか」
「ユーフォルビア家は産む以外の事を期待されない家だと…ゼフ様は、悲し気に言っておられました。
産む・育てる以外の仕事は取り上げられて、残されたのは年に1回、ハーブティーを紹介する茶会だけだと…」
「あっ…」
そうか、それだ。
出産と子育て以外の仕事を取り上げられたら、自分のしてきた事が無になる気がしたんだ。
不安の元はきっとそれだ。
今まで色んな人と繋がって、色んな事をしてきた。
それが無くなったら…殿下の隣にいるのは俺じゃなくてもいいんじゃないかって、考えてしまうんだ。
だって、王家がユーフォルビアの血縁だけを必要とするなら、ダグさんだってそうだから。
だけど、俺には何を取り上げられても使命が1つ残っている。
王の隣を譲れない理由がある。
それは、この家の当主としての使命。
「…もう二度と、そんな家にはさせない」
「坊ちゃま?」
「その為に、ユーフォルビアに王家の血を入れる。
父さんを子どもを産む奴隷にした奴らには報いを受けさせる。
俺はその為にもこの地位に着くんだ。
……知らんけど」
「知らないんですか?」
「うん、でもそんな気がする…だけ」
「そうですか」
「うん、腹をくくれた気がする。
俺は次期国王の正室にならなきゃいけないんだ。
何としてでもね」
「それは何よりです」
そう言って執事リチャードはニッコリ笑った。
その笑顔を見て、うちの執事の良い所は「左様で御座いますか」って言わないところだな…と、
ふと思った。
============
身体強化魔法を探してた時に見つけた古代魔法のお話しは
学園3年目の7話「武術棟と古代魔法」ご参照ください!
俺はポンコツ4から試験問題を受け取る為に実家へ戻った。
「リチャードさん、ベルガモット教授と4つ子ちゃんの様子はどうかな」
「ええ、魔法侯爵様たちが頑張ってオムツを変えたり寝かしつけたりしておられますよ」
おお、ちゃんと父親してるじゃん!
さすが俺の手伝いを断っただけのことはある。
俺はもう一つの気がかりを執事リチャードに聞く。
「最近は代替乳、あまり買わなくなったって聞いたけど」
「ええ、乳の出が良くなったそうで…できるだけ自分の乳で育てると仰いまして」
「そっか…」
どうやら、その昔身体強化魔法を探してた時に見つけた古代魔法が役に立ったらしい。
豊胸の魔法なんか何に使うんだと思ったけど…思い出せて良かった。
この世界、人の乳と代替乳には大きな差がある。
魔力含有量だ。
魔力が成長にどう左右するかと言えば、まあ魔法を使えるようになるのが早くなるって事くらいだけど…
魔法侯爵家の血を引く子ならやっぱり早い方が良いだろう、って、ベルガモット教授が頑張ってるんだ。
「…魔力を抽出できる方法があればなあ」
「魔石を砕いて飲むわけにはいかないんですか?」
「成人にも使った事のない物を、乳幼児に与えるわけにはいかないよ。
安全のうえに安全を重ねていかないと、赤ちゃんってすぐ死んじゃうから…
あっ」
「どうしました坊ちゃま」
「乳は血液から作られるんだ。
その仕組みが解明できたら…魔力抽出に繋がるかも…?」
「それ、どうやって解明するんですか」
「それはまだ分からないけど、アイデアだけでもあると違うからさ…」
詠唱によれば水と雷の精霊…電気分解?
いや体内でそれは無理…、だけど、神経伝達は電気…だからワンチャン…
……ワンチャン、か。
「はあ」
「どうしました坊ちゃま」
「俺、本当に王子様と結婚していいのかな」
「何を急に…」
「俺、やっぱ政治とか無理…研究のほうが好き」
「坊ちゃま」
「俺、貧乏貴族だから許されてきた事いっぱいあると思って。
1人で何でもできる方が偉いと思ってたし。
仕事や身分で人を見るなって言われたから、年上には誰でも「さん」付けでやってきたし。
でも、結婚したら仕事に集中するのに掃除や片付けを人にやってもらわなきゃいけないし。
今度からリチャードさんの事もリチャードって呼べって…」
「坊ちゃま…」
ただただ、不安だった。
自分で本当に務まるのか。
ユーフォルビアという、由緒正しい奴隷の子が。
貴族らしい優雅さも品も無い人間が。
ローズという大国の、たった一人の王子様の正室になるプレッシャーが苦しい。
「何をするにしても経済効果だとか政治的思惑だとか…ついてくるし。
確かに、経済学も政治学もさんざんやってきたし、学者さんの知り合いもいる、だけど…、俺、俺みたいな凡人、パッとしない見た目の、こんなんが…流行作るとかって、笑い話にもならないし」
「そんなこと…ありませんよ」
「ううん、自分の見た目は自分が一番分かってる。
兄弟の中で一番地味だし」
「そうですかね?」
兄たちはどうだったんだろう。
みんなその国で最高峰の一人っ子に嫁いだ。
プレッシャーは?
「リチャードさんは、兄さんたちが結婚するとき…どうだったか、分かる?」
「…そうですね、この国を出てゆかれる時の事なら…多少は。
皆様、不安を抱えられて…出立の日が来るまで、泣いていらっしゃいました。
でも…どなたも、恋人と別れて仕方なくという事はありませんでしたから…
そこは、救いだったかもしれません」
「そっか」
「ローズから出れば恋が出来ると…相手は決まっていても、恋が出来るということを希望に、皆様ここをお発ちになりました。
皆様、子どもを産む事だけを期待されて輿入れなさいました…
産む以外の事を期待されて輿入れされるのは、ルース坊ちゃまが初めてです」
「…そっか」
「ユーフォルビア家は産む以外の事を期待されない家だと…ゼフ様は、悲し気に言っておられました。
産む・育てる以外の仕事は取り上げられて、残されたのは年に1回、ハーブティーを紹介する茶会だけだと…」
「あっ…」
そうか、それだ。
出産と子育て以外の仕事を取り上げられたら、自分のしてきた事が無になる気がしたんだ。
不安の元はきっとそれだ。
今まで色んな人と繋がって、色んな事をしてきた。
それが無くなったら…殿下の隣にいるのは俺じゃなくてもいいんじゃないかって、考えてしまうんだ。
だって、王家がユーフォルビアの血縁だけを必要とするなら、ダグさんだってそうだから。
だけど、俺には何を取り上げられても使命が1つ残っている。
王の隣を譲れない理由がある。
それは、この家の当主としての使命。
「…もう二度と、そんな家にはさせない」
「坊ちゃま?」
「その為に、ユーフォルビアに王家の血を入れる。
父さんを子どもを産む奴隷にした奴らには報いを受けさせる。
俺はその為にもこの地位に着くんだ。
……知らんけど」
「知らないんですか?」
「うん、でもそんな気がする…だけ」
「そうですか」
「うん、腹をくくれた気がする。
俺は次期国王の正室にならなきゃいけないんだ。
何としてでもね」
「それは何よりです」
そう言って執事リチャードはニッコリ笑った。
その笑顔を見て、うちの執事の良い所は「左様で御座いますか」って言わないところだな…と、
ふと思った。
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身体強化魔法を探してた時に見つけた古代魔法のお話しは
学園3年目の7話「武術棟と古代魔法」ご参照ください!
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