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新婚旅行
The・オーバーツーリズム
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エランティス領の北東、他国との国境近くにある難関ダンジョン、それが「災禍の大穴」だ。
入口がでっかい竪穴になっていて、中に入るには監視塔の魔道エレベーターを借りなければならない。
受付で身元確認や審査もするそうだ。
さすが「難関」…誰でも入れるわけじゃないんだな。
道中、何人か大荷物を抱えた観光客を見た。
彼らに話を聞いてみると、すでにファンの間で「災禍の大穴観光=野宿」の図式が定着しているらしい。
発売から僅か2年程のうちに…なんてこった。
「監視塔には何人が勤務してるんですか?」
「常駐は5名。
だが、常時見回りに50~60名程出ている」
「そうなんですか、今までは?」
「観光客が増えるまでは常駐を含めて20名程度だ」
「むしろそれだけで良く足りてましたね?」
「自殺や殺しの名所を見回るだけで良かったからな」
お義祖父様たちによると、飛び込みたくなる場所と投げ込みやすい場所は同じなんだそう。
あんま知りたくなかったな、そういうの…。
「まあ、それはさておきだな。
あの小説がこの穴を『失われた魔法の爪痕』とか書いたものだから、本当の話を教えろと監視塔へ乗り込んでくるやつらまで出て、大騒ぎさ」
歴史では「災禍の大穴」は4帝国時代後期に起こった巨大地震の跡だって習うんだけど、ずっと昔から
「どっかの国が人為的に地震を起こすために魔法で穴を開けた」とか、
「地震を起こす魔法を秘匿するために国家が真実を隠している」とか、
いわゆる都市伝説みたいなものがあるんだって。
「地底の皇」は、実はその都市伝説が真実だった…っていうスタンスで書かれているんだけど…
元はと言えば俺とトレッドさんが「暗き森の遺跡」でしてた与太話。
本当に小説になるとは思わなかったし、
それがめっちゃ売れるとも思わなかったし、
書いてるのがトレッドさんの彼氏だとも思わなかった。
だからエランティス領の皆様を困らせる事になるなんて、想像もしなかったんだ…
はあ…どうしよう。
「観光客が来すぎて困るなんて事、あるんですね…」
「そうだな、私達も完全に想定外だった」
「昔から歴史好きがやって来る事はあったんだ。
ここはダンジョンだから少し離れれば小さくても宿屋はあるし、監視塔には食堂もある。
小さいが、それで足りていた…今までは」
「…つまり受け入れられる人数以上の観光客が来て困っている…ということですね」
「ああ、その通りだ」
「宿泊場所の不足だけでなく、衛生問題も…」
「あー…」
うーん、典型的オーバーツーリズム。
前世でも急に人が増えて困る話は良くあったけど…
まあ、トイレとゴミはスライム牧場で何とかなるか。
スライム捕まえる壺を作っておこう。
「それから、兵士を増やした事が隣国に不信感を与えているようで、色々と文句を言ってくるようになった」
「さらに困りましたね」
すると殿下が怪訝な顔でお義祖父様たちに言う。
「あちらに根回しはしなかったのですか?
急に国境沿いの警備が2倍3倍になったら警戒するのは分かり切っているではありませんか」
「当然している、だが最近になって難癖をつけ始めたんだ」
「ふむ、そうなると…何か狙いでもあるのか?」
「難癖の内容は何なんです?」
「ああ、うちの国が戦争を仕掛けるとでも思っているのかとか…そういう内容だな」
うーん、めっちゃありがちな内容だな。
そんなつもりはありませんよ、と言っても納得しないアレだ。
しかし、そんなの中央に直接言いに来ることじゃないの?
訳分らんな。
「怒っているぞ、というポーズですかね?」
「ふむ、国内向けのアピールに巻き込まれているのかもしれんな」
「脅して金をせびるパターンかもしれんがな」
それはそれでメンドクサイ話だなあ。
「王都に戻ったら大使の方に聞いてみましょう」
「そうだな、それが良い」
ともあれ、現場に行ってみない事には始まらない。
レッツゴー大穴!!
***
災禍の大穴に着いてみると、美しかったであろう草原にところどころ穴が開いている。
用を足すのに穴を掘ったんだろうけど、埋めるのが適当だったんだな…
あと焚火の跡がちらほら。
よく火事にならなかったもんだ…。
「ああいう場所は、ライフグロウで草を生やして誤魔化すとして…
観光客が最も集まりやすい所ってどこなんですか?」
「ああ、それは多分水汲み場だろう」
「じゃあ、早速そこに行って話をしてみましょう」
野宿は監視塔の周辺でしてもらう。
穴を観察に行くときは護衛を雇ってもらう…
ということは。
「お義祖父様、ギルドへの依頼料をください」
「…それは私達にではなくラウルに頼んでおくれ、ルース殿」
そりゃそうだ。
領税の決裁権は領主様だもんな…。
さすがに「義」祖父様には甘えられないか。
孫は甘やかさないなら孫の伴侶はもっと甘やかさないだろうしな…。
まあ、いざとなったらどうにかしてお金を稼ごう…
補佐室にブレーンは揃ってるしね!
======
「地底の皇」の元になった与太話につきましては
・学園3年目/怒涛の学外研修(暗き森の遺跡)
ご参照ください!
入口がでっかい竪穴になっていて、中に入るには監視塔の魔道エレベーターを借りなければならない。
受付で身元確認や審査もするそうだ。
さすが「難関」…誰でも入れるわけじゃないんだな。
道中、何人か大荷物を抱えた観光客を見た。
彼らに話を聞いてみると、すでにファンの間で「災禍の大穴観光=野宿」の図式が定着しているらしい。
発売から僅か2年程のうちに…なんてこった。
「監視塔には何人が勤務してるんですか?」
「常駐は5名。
だが、常時見回りに50~60名程出ている」
「そうなんですか、今までは?」
「観光客が増えるまでは常駐を含めて20名程度だ」
「むしろそれだけで良く足りてましたね?」
「自殺や殺しの名所を見回るだけで良かったからな」
お義祖父様たちによると、飛び込みたくなる場所と投げ込みやすい場所は同じなんだそう。
あんま知りたくなかったな、そういうの…。
「まあ、それはさておきだな。
あの小説がこの穴を『失われた魔法の爪痕』とか書いたものだから、本当の話を教えろと監視塔へ乗り込んでくるやつらまで出て、大騒ぎさ」
歴史では「災禍の大穴」は4帝国時代後期に起こった巨大地震の跡だって習うんだけど、ずっと昔から
「どっかの国が人為的に地震を起こすために魔法で穴を開けた」とか、
「地震を起こす魔法を秘匿するために国家が真実を隠している」とか、
いわゆる都市伝説みたいなものがあるんだって。
「地底の皇」は、実はその都市伝説が真実だった…っていうスタンスで書かれているんだけど…
元はと言えば俺とトレッドさんが「暗き森の遺跡」でしてた与太話。
本当に小説になるとは思わなかったし、
それがめっちゃ売れるとも思わなかったし、
書いてるのがトレッドさんの彼氏だとも思わなかった。
だからエランティス領の皆様を困らせる事になるなんて、想像もしなかったんだ…
はあ…どうしよう。
「観光客が来すぎて困るなんて事、あるんですね…」
「そうだな、私達も完全に想定外だった」
「昔から歴史好きがやって来る事はあったんだ。
ここはダンジョンだから少し離れれば小さくても宿屋はあるし、監視塔には食堂もある。
小さいが、それで足りていた…今までは」
「…つまり受け入れられる人数以上の観光客が来て困っている…ということですね」
「ああ、その通りだ」
「宿泊場所の不足だけでなく、衛生問題も…」
「あー…」
うーん、典型的オーバーツーリズム。
前世でも急に人が増えて困る話は良くあったけど…
まあ、トイレとゴミはスライム牧場で何とかなるか。
スライム捕まえる壺を作っておこう。
「それから、兵士を増やした事が隣国に不信感を与えているようで、色々と文句を言ってくるようになった」
「さらに困りましたね」
すると殿下が怪訝な顔でお義祖父様たちに言う。
「あちらに根回しはしなかったのですか?
急に国境沿いの警備が2倍3倍になったら警戒するのは分かり切っているではありませんか」
「当然している、だが最近になって難癖をつけ始めたんだ」
「ふむ、そうなると…何か狙いでもあるのか?」
「難癖の内容は何なんです?」
「ああ、うちの国が戦争を仕掛けるとでも思っているのかとか…そういう内容だな」
うーん、めっちゃありがちな内容だな。
そんなつもりはありませんよ、と言っても納得しないアレだ。
しかし、そんなの中央に直接言いに来ることじゃないの?
訳分らんな。
「怒っているぞ、というポーズですかね?」
「ふむ、国内向けのアピールに巻き込まれているのかもしれんな」
「脅して金をせびるパターンかもしれんがな」
それはそれでメンドクサイ話だなあ。
「王都に戻ったら大使の方に聞いてみましょう」
「そうだな、それが良い」
ともあれ、現場に行ってみない事には始まらない。
レッツゴー大穴!!
***
災禍の大穴に着いてみると、美しかったであろう草原にところどころ穴が開いている。
用を足すのに穴を掘ったんだろうけど、埋めるのが適当だったんだな…
あと焚火の跡がちらほら。
よく火事にならなかったもんだ…。
「ああいう場所は、ライフグロウで草を生やして誤魔化すとして…
観光客が最も集まりやすい所ってどこなんですか?」
「ああ、それは多分水汲み場だろう」
「じゃあ、早速そこに行って話をしてみましょう」
野宿は監視塔の周辺でしてもらう。
穴を観察に行くときは護衛を雇ってもらう…
ということは。
「お義祖父様、ギルドへの依頼料をください」
「…それは私達にではなくラウルに頼んでおくれ、ルース殿」
そりゃそうだ。
領税の決裁権は領主様だもんな…。
さすがに「義」祖父様には甘えられないか。
孫は甘やかさないなら孫の伴侶はもっと甘やかさないだろうしな…。
まあ、いざとなったらどうにかしてお金を稼ごう…
補佐室にブレーンは揃ってるしね!
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「地底の皇」の元になった与太話につきましては
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