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王子様と皇太子殿下 5
王子、逃げる
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「おい、あの野郎、あんなとこに居やがるぜ」
「お前、あっちから回れ。オレはこっちから…それで、お前はここで、見張りな」
「了解」
----------
…あーあ。
やっぱり、どうしても、最後までは…できん。
あの時のあの顔がちらついて…
苦しくなって、出来んのだ。
首輪に、手錠、乗馬用の鞭…
何も映さなくなった瞳。
背中に残る、ミミズ腫れ、焼印。
がっ、がっ、という呻き声。
半開きの口から、だらだらと垂れる、何か。
辛くて、苦しくて、堪らなかったろう。
儂はあいつとは違う、というけれど、
することは同じだ。
言葉を変えようが、中身は変わらぬ。
ただ、ちゃんと気持ちいいかどうか…だけ。
だったら、ただ気持ちいいだけの睦事で…
それでいいのではないか?
深い口づけをして、感じる部分を探って…、
そうやってきもちいいことだけ、すれば。
そうすれば、怖がらせなくて済む。
…ここまできて。
……嫌われるような事は、
「おらあ、捕まえたぞ!」
「なっ、ロウ!?」
----------
「先生が呼んでるぞ。
ユーゴも何か怒ってるし」
…とロウが儂を小脇に抱えて走る。
こいつ、儂よりちょっとデカいだけなのに…クソっ。
すぐに家の前へ着いてしまう。
「ほら、早く行けよ」
「やめろ、押すな」
「おい」
「わっ、ユーゴ!」
「ロウ、右、確保」
「おう」
そうやって、儂より背の高い2人に両脇を固められる。
…家から先生が、出てくる。
「エース!」
「すまん、その…」
「よくやった!!」
「…っ、最後まで……は?え?」
「条件」が解除されてる、と先生が言った。
そんな馬鹿な、最後まで…しとらんのに?
「何でかよく分からないけど、「あの子が自分のものになった」実感が君の中にあって、それがキスを通じて作用したんじゃないかな…と思うんだ。
そもそも術者である人の内面が条件として作用することも謎だし、君のように眷属になってまだ300年でここまで複雑な、しかも解除するまで効果が続くような術が使えるなんて想定外だし…何か術、というより呪い、あるいは祝福って感じだな」
うんうん、と先生が頷く。
ユーゴが呆れる。
「また偶然なのか」
「またとは何じゃまたとは」
「結局自分で蒔いた種ですったもんだしたあげく、何でか上手いこと解決しちまうってことだろ。」
「う…否定できん」
先生が
「もうエースじゃなくてジョーカーじゃん」
と褒めて(?)くれたし、もう問題はないな…とほっとしていると、ユーゴが改まって告げた。
「それで、今回もなんの報告もないわけだが?」
「あっ…」
「作戦中は毎日報告するのが義務だろうが」
「それは…うん、忘れとった、すまん」
「お前、一応軍属だろ」
「いやーもうただの助手じゃし?」
「懲罰食らわすぞテメエ!!」
「そこに正座しろ」
すると後ろから声がした。
「それには及ばないっすよ」
「なー」「なあ」
は?何、猟犬…と鬼神?
剣…と…斧?
「とりあえず1回、殺すので」
「1回ね」「とりあえず1回ね」
いや、儂は最後までしたわけじゃ、
「エースさまが、カラス君を泣かしたら泣かせた回数ぶん、その頭をかち割って差し上げようと思いまして」
「なな、何のことじゃ!?」
「大事なトコ触らない…って、泣いてたので」
「なっ…何で、し…知って」
「は?カラス君の相談に乗ったからですが?
幼馴染み、舐めないでください」
「あれは、クロエのことを思ってじゃぞ!?」
横暴じゃ、生き返るけど痛いんじゃよ!?
「だから、とりあえず「1回」なんじゃないすか」
「そそ、結構譲ってる方よ?」「大いなる譲歩よ」
「そ…そんな、むちゃくちゃな…」
「まあ、触っても殺すけどね」
「最後までしたら3回は殺すね」
「んだな」
「お前ら鬼か!?」
「まあ、一応、鬼神って呼ばれてるんで?」
「ほんとだ鬼だ」「しかも鬼の神」
「殺す以外の選択肢は無いんか!?」
「ない」
「無いだと!?」
そんな阿呆なやり取りの後…
だけどまあ、そうだな…と鬼神がソラに戻って言う。
「カラス君が笑えてるなら、許してあげます」
「お前、あっちから回れ。オレはこっちから…それで、お前はここで、見張りな」
「了解」
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…あーあ。
やっぱり、どうしても、最後までは…できん。
あの時のあの顔がちらついて…
苦しくなって、出来んのだ。
首輪に、手錠、乗馬用の鞭…
何も映さなくなった瞳。
背中に残る、ミミズ腫れ、焼印。
がっ、がっ、という呻き声。
半開きの口から、だらだらと垂れる、何か。
辛くて、苦しくて、堪らなかったろう。
儂はあいつとは違う、というけれど、
することは同じだ。
言葉を変えようが、中身は変わらぬ。
ただ、ちゃんと気持ちいいかどうか…だけ。
だったら、ただ気持ちいいだけの睦事で…
それでいいのではないか?
深い口づけをして、感じる部分を探って…、
そうやってきもちいいことだけ、すれば。
そうすれば、怖がらせなくて済む。
…ここまできて。
……嫌われるような事は、
「おらあ、捕まえたぞ!」
「なっ、ロウ!?」
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「先生が呼んでるぞ。
ユーゴも何か怒ってるし」
…とロウが儂を小脇に抱えて走る。
こいつ、儂よりちょっとデカいだけなのに…クソっ。
すぐに家の前へ着いてしまう。
「ほら、早く行けよ」
「やめろ、押すな」
「おい」
「わっ、ユーゴ!」
「ロウ、右、確保」
「おう」
そうやって、儂より背の高い2人に両脇を固められる。
…家から先生が、出てくる。
「エース!」
「すまん、その…」
「よくやった!!」
「…っ、最後まで……は?え?」
「条件」が解除されてる、と先生が言った。
そんな馬鹿な、最後まで…しとらんのに?
「何でかよく分からないけど、「あの子が自分のものになった」実感が君の中にあって、それがキスを通じて作用したんじゃないかな…と思うんだ。
そもそも術者である人の内面が条件として作用することも謎だし、君のように眷属になってまだ300年でここまで複雑な、しかも解除するまで効果が続くような術が使えるなんて想定外だし…何か術、というより呪い、あるいは祝福って感じだな」
うんうん、と先生が頷く。
ユーゴが呆れる。
「また偶然なのか」
「またとは何じゃまたとは」
「結局自分で蒔いた種ですったもんだしたあげく、何でか上手いこと解決しちまうってことだろ。」
「う…否定できん」
先生が
「もうエースじゃなくてジョーカーじゃん」
と褒めて(?)くれたし、もう問題はないな…とほっとしていると、ユーゴが改まって告げた。
「それで、今回もなんの報告もないわけだが?」
「あっ…」
「作戦中は毎日報告するのが義務だろうが」
「それは…うん、忘れとった、すまん」
「お前、一応軍属だろ」
「いやーもうただの助手じゃし?」
「懲罰食らわすぞテメエ!!」
「そこに正座しろ」
すると後ろから声がした。
「それには及ばないっすよ」
「なー」「なあ」
は?何、猟犬…と鬼神?
剣…と…斧?
「とりあえず1回、殺すので」
「1回ね」「とりあえず1回ね」
いや、儂は最後までしたわけじゃ、
「エースさまが、カラス君を泣かしたら泣かせた回数ぶん、その頭をかち割って差し上げようと思いまして」
「なな、何のことじゃ!?」
「大事なトコ触らない…って、泣いてたので」
「なっ…何で、し…知って」
「は?カラス君の相談に乗ったからですが?
幼馴染み、舐めないでください」
「あれは、クロエのことを思ってじゃぞ!?」
横暴じゃ、生き返るけど痛いんじゃよ!?
「だから、とりあえず「1回」なんじゃないすか」
「そそ、結構譲ってる方よ?」「大いなる譲歩よ」
「そ…そんな、むちゃくちゃな…」
「まあ、触っても殺すけどね」
「最後までしたら3回は殺すね」
「んだな」
「お前ら鬼か!?」
「まあ、一応、鬼神って呼ばれてるんで?」
「ほんとだ鬼だ」「しかも鬼の神」
「殺す以外の選択肢は無いんか!?」
「ない」
「無いだと!?」
そんな阿呆なやり取りの後…
だけどまあ、そうだな…と鬼神がソラに戻って言う。
「カラス君が笑えてるなら、許してあげます」
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