話が違う2人

紫蘇

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ゲームの世界

最強村人・パッセルのチュートリアル

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地震で建物は倒壊したが、畑は割と無事だった。

森に近く、畑はあるが建物がない村…
そう、俺はここでピンと来た。

「これはチュートリアルだ!」

確か、まずは森の木を切ってきて、それを材木に変えるのだ。
だが片っ端から切れば良いと云うわけではない。
間伐の要領で、日が当たらないほどに生えてしまった場所から良さげなやつを頂かねばならない。
そうすることで、森の中から魔物が出てくる確率を減らせる…

そう、この世界には魔物がいる。
だが、魔物というより野生生物と言った方が正しい存在だ。

彼らの棲みかを奪わないように森も農地も育てる事が、このゲームの基本……
そのチュートリアルが、多分これだ。

「よっしゃ、まずは家の再建だ!」

使えそうな材木を選別する作業を村の人たちに頼み、俺は早速森へ切り出す木の選定をしに出掛ける事にした。
ゲーム内ではボタンひとつで行える作業だが、実際はそう簡単に……

そうか!

「だから魔法が使えるんだ!」

つまり、ボタンひとつの作業が実際にそのぐらい簡単に出来るように、この世界には魔法が存在しているのだ。

「さすがジオギーグ…隠し設定までちゃんとしている」

ちなみにジオギーグは「わたしの箱庭」シリーズを創っている会社だ。
日本が分割されるという悲劇さえ無ければ、俺も就職したかった…
ああ、兵庫が敵国の領土にさえならなければ!
33の歳で岡山へ転属させられた事が悔やまれる。

「まあその前に、戦争なぞ起きなければ良かったのだがな」

まったく、ソ連もアメリカも中国も…
核保有国ってのはどうしてああも仲良くしたがらんのかね。

「…結局、核戦争になっちまったしな」

実は、俺には死んだ後の記憶が数日間分ある。
俺が処刑された翌日に、何処の国かは知らんが核のボタンを押したのだ。
結果、世界中の生物は…。

「皆の魂は、何処へ行ったのだろうな」

核の熱で、魂も焼き尽くされてしまったので無ければ良いが…。

「…分からない、だからこそ、俺は生きねば」

俺は数十億の御霊の事を思いながら、森の中を歩いた。

****

木を切っては、魔法でヨイヨイと森の外へ出す。

それを何度か繰り返して、森の中の日当たりも多少良くなってきた頃、一旦森の外へ出てその木を今度は丸太に加工する。

手伝いに来てくれた友人達の父親がそれを見て言う。

「器用ですなぁパッセル様」
「その、パッセル『様』は止めてくれませんか。
 今まで通りパッセルと呼んで欲しいんですが」
「分かりました、皆にもそのように伝えまする」
「ついでに敬語も止めてください」

どうやら村の中で、俺は神の使いだと確定し始めたようだ。
うーん困った。

俺の中で、神様は敵国の宗教そのものなのだ。
戦争が起きる前は、神も仏も信じているような緩い宗教観だったのだが…苛烈な思想教育のせいで、神様という言葉が少々辛い。

とまあ、そんな事は置いておいて。

「使えそうな材木の仕分けは?」
「終わっております」
「では、早いとこ家を建て始めましょう」

ゲームでは、村人の住居を建てるのに3日しかかからない。
ただ、ここは現実世界だ。
魔法でどこまでそれに迫れるかは、やってみないと分からない。
それに、せめて筋交いぐらいは入れないと…。
今までの造りでは耐震性が無さすぎる。

「まずは一軒、建ててみるか」

何事もまずはやってみよう。
せっかくのチュートリアルだ、しっかり経験を積んで次に活かして行かねば。
前世での経験も多少あることだし。

「よーし、丸太を運ぼう!」
「おー!」

切り落とした枝も、使えるものは使って、残りは薪にしよう。
柱を建てる礎石は残っているから、利用できそうならそれも使って…。

「材木も、本来乾燥が必要だが…」

いちいちの事を言っている暇は無い。
住んでいるうちに乾燥する…と考えると、ふーむ。

「…頭の中に、設計図が浮かんでくる事は、無いか…」

どうやらそういうチートは付いていない様だ。
まあ、魔法だけでも充分助かる。
人命救助まで出来るのだしな。
俺は友人の父親に聞いてみた。

「家の建て方、分かりますか?」
「ええ、もちろんですよ」

家造りは農民の大事なスキルらしい…
俺も目覚めぬままここで暮らしていれば、いつか教えてもらうものだったのだろう。

「俺にも教えてもらえますか」
「もちろんですとも!」

おお、さすがチュートリアル!
ここで建築を学んで、畑の方は…

ん?

「確か、家を建てるチュートリアルと畑を作るチュートリアルは別…」

という事は、他の村にも行かねばならんという事だな。
よし!

「他の村でも、困っているかもしれません。
 皆さんの家をすべて再建したら、隣の村へ行ってみます」
「パッセル様…」
「だから『様』も敬語もやめてください」

覚える事は沢山ある!
やるぞ!

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