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本気のざまぁを見せてやる!
魔術師は結婚を断りたい 6
しおりを挟む「後でかけ直す!」
親父から来た通信をぶった切り、俺は必死で竜の攻撃を避けながら攻撃パターンを探る。
一番大事なのはブレスを吐くタイミング。
それも何度目かで大体掴めてきた。
口を閉じて、下を向いて、左右に首を振り…
こっちに狙いを定めて、口を開けて、一度大きく息を吸って…
ブォウ!!
「うぉっと!!」
さすが地竜、吐いてくるのは砂粒と石が混じったサンドブレスだ。
完全に物理系だな…
「そろそろ諦めてくれよー!」
俺は地竜に呼びかける。
竜は賢い、人間の言葉が分かる。
それはどうやら本当らしい。
地竜は俺の声に、ブレスで答えるようだ。
口を閉じて、下を向いて、左右に首を振り…
こっちに狙いを定めて、口を開けて、一度大きく息を吸って…
ブォーーッ!!
「おおっと!」
……ほらね、もう……分かっちゃった。
どうしよう。どうしようかな。
もう一度、呼びかけてみようか……
それとも脅してみる?
「…雷矢!」ピキッ!
「ガガッ?」
「…雷矢、雷矢、雷矢っ!!」
「ギャ、ギギっ!?」
俺は地竜に当たらない位置へ何発も雷を放った。
竜は雷が弱点だと親父が言ってたから、嫌いなんじゃないかと思ったんだけど…
「ガァア!ォアー!」
あんまり効果はないみたい。
地竜は口を閉じて、下を向いて、左右に首を振り…
こっちに狙いを定めて、口を開けて、一度大きく息を吸って…
ブレスだろう?
もう、わかってるよ。
だから……。
俺は何度目かのブレスをひらりと躱す。
呼びかける。
「頼むよ、降参してお家へお帰りよ!」
「ウガァ!」
尻尾を振り回して怒る地竜。
帰りたくないみたい。
「頼むよ、帰ってくれよ!
俺はお前を殺したくない!!」
「ギャギャー!」
尻尾を地面に叩きつけ、石を飛ばしてくる地竜。
恫喝するような咆哮、へし折られる木々。
空を飛びながら避け続ける俺。
「なあってば!」
「ギギィィ゙!!ゴゥアーー!!」
なめとんかコラ、的な事だろうか。
短気なんだろうな、多分…
「……困ったなぁ」
さっき放った雷で、ますます火が着いたみたい。
あー、余計な事、しちゃったな…
「……そろそろ、魔力がやばい」
箒無しの飛行は割と消耗する。
風魔法出しっ放しだし…
「決めるしか、無いか」
俺はポケットから飴を出して口に入れる。
覚悟の一口…噛み砕いたら、決める。
地竜が口を閉じて下を向く。
首を左右に振り、そして…こっちに狙いを、定め…
口が、開き……
今だ!
「神罰の、一、撃!!」
俺の出せる、最大級の雷魔法。
地竜が開けた口に、俺の雷撃が、吸い込まれる。
口が閉じる。
そして……
バヅッ゙
鈍い爆発音が聞こえ、
ド・ドドドド・ドド
低い振動音が響き、
グバン!!
と裂けるような音がし……。
グシュ……ッ
「……っ、地竜っ!」
地竜は、自分の血に、没んだ。
さっきまでギラついてた目には、光が無く…
「地、竜……?」
死んだのだ、と分かってしまった。
……叫び声すらない、最期だった。
森は静かで、他に魔物の気配は無い。
「……やっ、た……」
俺の呟きも、森の中へ…消えた。
***
どのくらいそうしていたのだろう。
日は傾いて空は赤く染まり、その赤い空より赤いバイク型箒が目の前に降りてきた。
操縦者の顔は見えないけど、後ろに乗ってたのは王都にいるはずの親父だった。
もう臨月だっていうのに、親父は俺に駆け寄り、俺の手を握って…言った。
「おい、ロンバード…大丈夫か」
「…うん」
「まだ飛べるか?」
「…うん、飴が…ある、から…」
「そっか」
俺は地竜の死体に抱きつき、謝罪を繰り返していた。
ただ興味を持って近づいただけかもしれないのに…
俺が、殺す方法なんかじゃなくて、うまく追い返す方法を知っていたら…良かったのに。
殺してごめん、ごめんね、って。
だけどこうも思っていた。
魔物が増えすぎないように、誰かがやらなきゃならない事だったんだ。
身重の親父の代わりに、息子の俺がやったんだ。
この国1番の魔術師の代理として、役目を果たしただけなんだ、だから…ごめんな、って。
「まさか、地竜を一人で倒しちまうとは…な」
「…倒し方は、知ってたから」
「ちゃんと俺達の話、聞いてたんだな」
「…うん、小さかったけど、覚えてた」
あれは学園に入る前の事。
叔父さん夫夫が訪ねてきて、親父とシドさんが昔話に花を咲かせてたのを横から聞いてた時だった。
いいかロンバード。
もし竜と戦わなきゃならなくなったら、ブレスを吐く直前、口を開けた瞬間、そこを目掛けて雷をズドン!とやるんだ。
いきなり最大値をぶち込め。
竜が苦しまないように、一撃で仕留めろ…
「良くやったな、ロンバード」
親父が俺の頭をくしゃくしゃと撫でた。
まるで俺が傷ついてるのを、癒すかのように。
だから俺は…
少しだけ、心が軽くなった。
山ほどの魔物を殺してきた親父を疑う事なく父親として受け入れているように、俺もまた魔物を殺す側である事を受け入れていかなきゃ…と、思った。
だから、無理やりだけど、明るい声で、言った。
「…あんなアドバイス、役に立たないと思ってたけど、人生何が役に立つか分からないもんだね」
「ああ、そうだろ?」
「親父やシドさん…ビゼーさんたちの、おかげ」
「そうさ、倒し方不明のまま必死で戦った俺達第27騎士団のおかげだぞ?もっと敬え」
親父はそう言って笑うと、通信用ブレスレットの銀ビーズを1つ触って回線を開いた。
「あー、メルバ?今、北端。ロンバードは無事。
西はカリーナ様に任せてきた。
石碑が折られてる、作り直さなきゃ…え?自分で操縦はしてない、…ああ、グヴェン様が」
「えっ、グヴェン様?」
俺は真っ赤なバイク型箒にまたがる男性を見た。
そこには…
俺の記憶とは程遠い…
ダリル様によく似た美丈夫が、いた。
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