19 / 40
また見つけた、と思ったら
しおりを挟む
その頃のハーヴェイ。
※
アガタに逃げられたハーヴェイだったが、不思議なことに追いかけてきたグールの群れはいなくなっていた。少し歩いたところにあった小屋には鍵かかけられ、水や食べ物を探すことは出来なかったがそれでも護衛騎士の持っていた携帯食を口にし一晩、休めたことで彼の体力は大分、回復した。
しかし朝になり、十人近くに減った護衛騎士達とアガタの降り立った森へと入ったところで――ハーヴェイは再び、現れた魔物の群れに追いかけられていた。いや、追いかけられているだけではなく、護衛騎士が三人ほど犠牲になった。
しかし、騎士を襲った魔物の動きは止まったが、他の魔物は相変わらず追いかけてくる。たまらず、ハーヴェイは怒りに任せて声を荒げた。
「何だ、あの妙な鹿は!?」
ハーヴェイが妙な鹿、と言ったのは頭と脚は鹿だが、胴体と翼は鳥なのだ。しかもその足元の影は、何故か人間の形をしている。
「ペリュトンと言う怪鳥です! 故郷から離れた場所で息絶えた旅人の、霊だと言われていて……自身の影を持たず、人間一人を殺すと自身の影を手に入れられるそうですっ」
「何だと……ふざけるな! おかしな鳥の自己満足で、殺されてたまるか!」
護衛騎士の言葉に、カッとなって振り向き様に叫んだハーヴェイの視界の隅に、眩しい光が飛び込んできた。
驚いて前を見ると優しく包み込む光が現れ、消えて――それを見た瞬間、ハーヴェイはたまらず叫んだ。
「結界だ!」
「殿下!?」
あんな風に光るのを見たことはないが、間違いない。今、見えた光はエアへル国を守ってくれていた結界と同じだ。と言うことは、あの光の中には必ず憎っくきアガタがいる。
そう思い、馬に鞭を打って光の方向へ走らせたハーヴェイだったが――瞬間、目に見えない壁により、突っ込んだ勢いのまま弾き飛ばされた。
「へぶっ!?」
「殿下ぁっ」
結果、馬が倒れ、乗っていたハーヴェイは振り落とされた。
そんなハーヴェイにある護衛騎士は駆け寄り、慌てて馬に乗せ。別の者は馬に乗ったまま、目には見えないが触れば確かにある壁を確かめ、それ以上入れないとため息をついた。
もっとも、足を止めていてはペリュドンの群れに追いつかれる。
それ故、逃げる為にと迂回しようとした護衛騎士だったが、そこでハーヴェイが絶叫した。
「待て、行くなっ……行くなって、言ってるだろうがっ!」
「っ! 我々も、行きますよ!」
前回同様、白い鳥もどきがアガタと獣人の男を乗せて飛び立っていく。
喚くハーヴェイに顔を顰めつつも、護衛騎士達はペリュドンに捕まらないよう、見えない壁にぶつからないように迂回して――森を抜けたタイミングで夜になり、影が出なくなったところでペリュドンの追跡が止んだので、一同はその場にへたり込んだ。
ちなみにハーヴェイはと言うと、喚いていたことで気力と体力を消耗したのか、気づくと意識を失っていた。
そんな自国の王太子に対し、護衛騎士達が「息はしてるし、静かで良いか」と考えていたことを、気絶しているハーヴェイは知らなかった。
※
アガタに逃げられたハーヴェイだったが、不思議なことに追いかけてきたグールの群れはいなくなっていた。少し歩いたところにあった小屋には鍵かかけられ、水や食べ物を探すことは出来なかったがそれでも護衛騎士の持っていた携帯食を口にし一晩、休めたことで彼の体力は大分、回復した。
しかし朝になり、十人近くに減った護衛騎士達とアガタの降り立った森へと入ったところで――ハーヴェイは再び、現れた魔物の群れに追いかけられていた。いや、追いかけられているだけではなく、護衛騎士が三人ほど犠牲になった。
しかし、騎士を襲った魔物の動きは止まったが、他の魔物は相変わらず追いかけてくる。たまらず、ハーヴェイは怒りに任せて声を荒げた。
「何だ、あの妙な鹿は!?」
ハーヴェイが妙な鹿、と言ったのは頭と脚は鹿だが、胴体と翼は鳥なのだ。しかもその足元の影は、何故か人間の形をしている。
「ペリュトンと言う怪鳥です! 故郷から離れた場所で息絶えた旅人の、霊だと言われていて……自身の影を持たず、人間一人を殺すと自身の影を手に入れられるそうですっ」
「何だと……ふざけるな! おかしな鳥の自己満足で、殺されてたまるか!」
護衛騎士の言葉に、カッとなって振り向き様に叫んだハーヴェイの視界の隅に、眩しい光が飛び込んできた。
驚いて前を見ると優しく包み込む光が現れ、消えて――それを見た瞬間、ハーヴェイはたまらず叫んだ。
「結界だ!」
「殿下!?」
あんな風に光るのを見たことはないが、間違いない。今、見えた光はエアへル国を守ってくれていた結界と同じだ。と言うことは、あの光の中には必ず憎っくきアガタがいる。
そう思い、馬に鞭を打って光の方向へ走らせたハーヴェイだったが――瞬間、目に見えない壁により、突っ込んだ勢いのまま弾き飛ばされた。
「へぶっ!?」
「殿下ぁっ」
結果、馬が倒れ、乗っていたハーヴェイは振り落とされた。
そんなハーヴェイにある護衛騎士は駆け寄り、慌てて馬に乗せ。別の者は馬に乗ったまま、目には見えないが触れば確かにある壁を確かめ、それ以上入れないとため息をついた。
もっとも、足を止めていてはペリュドンの群れに追いつかれる。
それ故、逃げる為にと迂回しようとした護衛騎士だったが、そこでハーヴェイが絶叫した。
「待て、行くなっ……行くなって、言ってるだろうがっ!」
「っ! 我々も、行きますよ!」
前回同様、白い鳥もどきがアガタと獣人の男を乗せて飛び立っていく。
喚くハーヴェイに顔を顰めつつも、護衛騎士達はペリュドンに捕まらないよう、見えない壁にぶつからないように迂回して――森を抜けたタイミングで夜になり、影が出なくなったところでペリュドンの追跡が止んだので、一同はその場にへたり込んだ。
ちなみにハーヴェイはと言うと、喚いていたことで気力と体力を消耗したのか、気づくと意識を失っていた。
そんな自国の王太子に対し、護衛騎士達が「息はしてるし、静かで良いか」と考えていたことを、気絶しているハーヴェイは知らなかった。
153
あなたにおすすめの小説
【完結】追放された元聖女は、冒険者として自由に生活します!
夏芽みかん
ファンタジー
生まれながらに強大な魔力を持ち、聖女として大神殿に閉じ込められてきたレイラ。
けれど王太子に「身元不明だから」と婚約を破棄され、あっさり国外追放されてしまう。
「……え、もうお肉食べていいの? 白じゃない服着てもいいの?」
追放の道中出会った剣士ステファンと狼男ライガに拾われ、冒険者デビュー。おいしいものを食べたり、可愛い服を着たり、冒険者として仕事をしたりと、外での自由な生活を楽しむ。
一方、魔物が出るようになった王国では大司教がレイラの回収を画策。レイラの出自をめぐる真実がだんだんと明らかになる。
※表紙イラストはレイラを月塚彩様に描いてもらいました。
【2025.09.02 全体的にリライトしたものを、再度公開いたします。】
【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます
なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。
過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。
魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。
そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。
これはシナリオなのかバグなのか?
その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。
【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】
婚約破棄された竜好き令嬢は黒竜様に溺愛される。残念ですが、守護竜を捨てたこの国は滅亡するようですよ
水無瀬
ファンタジー
竜が好きで、三度のご飯より竜研究に没頭していた侯爵令嬢の私は、婚約者の王太子から婚約破棄を突きつけられる。
それだけでなく、この国をずっと守護してきた黒竜様を捨てると言うの。
黒竜様のことをずっと研究してきた私も、見せしめとして処刑されてしまうらしいです。
叶うなら、死ぬ前に一度でいいから黒竜様に会ってみたかったな。
ですが、私は知らなかった。
黒竜様はずっと私のそばで、私を見守ってくれていたのだ。
残念ですが、守護竜を捨てたこの国は滅亡するようですよ?
失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~
紅月シン
ファンタジー
聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。
いや嘘だ。
本当は不満でいっぱいだった。
食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。
だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。
しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。
そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。
二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。
だが彼女は知らなかった。
三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。
知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。
※完結しました。
※小説家になろう様にも投稿しています
【完結】婚約者と仕事を失いましたが、すべて隣国でバージョンアップするようです。
鋼雅 暁
ファンタジー
聖女として働いていたアリサ。ある日突然、王子から婚約破棄を告げられる。
さらに、偽聖女と決めつけられる始末。
しかし、これ幸いと王都を出たアリサは辺境の地でのんびり暮らすことに。しかしアリサは自覚のない「魔力の塊」であったらしく、それに気付かずアリサを放り出した王国は傾き、アリサの魔力に気付いた隣国は皇太子を派遣し……捨てる国あれば拾う国あり!?
他サイトにも重複掲載中です。
必要ないと言われたので、私は旅にでます。
黒蜜きな粉
ファンタジー
「必要ない」
墓守のリリアはある日突然その職を失う。
そう命令を下したのはかつての友で初恋相手。
社会的な立場、淡い恋心、たった一言ですべてが崩れ去ってしまった。
自分の存在意義を見失ったリリアに声をかけてきたのは旅芸人のカイだった。
「来る?」
そうカイに声をかけられたリリアは、旅の一座と共に世界を巡る選択をする。
────────────────
2025/10/31
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞をいただきました
お話に目を通していただき、投票をしてくださった皆さま
本当に本当にありがとうございました
悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
追放されたヒロインですが、今はカフェ店長してます〜元婚約者が毎日通ってくるのやめてください〜
タマ マコト
ファンタジー
王国一の聖女リリアは、婚約者である勇者レオンから突然「裏切り者」と断罪され、婚約も職も失う。理由は曖昧、けれど涙は出ない。
静かに城を去ったリリアは、旅の果てに港町へ辿り着き、心機一転カフェを開くことを決意。
古びた店を修理しながら、元盗賊のスイーツ職人エマ、謎多き魔族の青年バルドと出会い、少しずつ新しい居場所を作っていく。
「もう誰かの聖女じゃなくていい。今度は、私が笑える毎日を作るんだ」
──追放された聖女の“第二の人生”が、カフェの湯気とともに静かに始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる