ターンオーバー

渡里あずま

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やることが、やることが多い

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 リゾートバイト初日。まず、ホール長の吉岡から勤務内容や料理の説明、飲み物についてなど書かれた資料を、今日から出勤の実緒達三人それぞれに渡された。
 お客様の案内。
 料理の提供。
 テーブルリセット。
 テーブルセッティングと、掃除。
 朝食サービスとランチとディナーがあり、今日の実緒のように朝晩や朝昼のシフトもあれば、朝から晩までの通しシフトもあるらしい。ちなみに食事は、朝シフトと昼シフトの間、それから昼シフトと夜シフトの間に賄いが食べられるようになっていた。一日二回だがシフト的には十分だし、ありがたすぎる。
 今の時期はスノーボードなどを目的にバイトに来ていた者達と、ゴールデンウィークや初夏の観光目的に来る者達との入れ替わり時期らしく、慣れるまでは先輩の補助をするように言われた。もっとも先輩の何人かは、しばらくするとバイトをやめるそうなので、休憩時間などに資料を読んで、早く慣れてほしいと言われている。

(やることが、やることが多い……でも、少なくとも今日はホール長や先輩から指示されて、空いたお皿を下げたり出来るから助かった)

 おかげで、六時半の勤務開始から十時までの時間があっという間だった。そして小田切が用意してくれた賄い(カルボナーラだった)を食べた後は、夜シフトの間までは自由時間である。

「大抵そうだけど、ここもホテル内は制服で移動しちゃ駄目なんだって。だからわたしら、着替えて寮に戻るけど……門倉さんは、どうするー?」
「あ、私もそうします」
「そっかー。ただ、昼は理仁と移動するけどいいー?」
「解りました」
「じゃあ、また後でねー。あ、朝と帰りは一緒だからよろしくー」
「はい」

 そう言うと晴は自分の分の皿を下げて、先に食べ終えていた理仁と一緒にレストランを後にした。店によるらしいが、このレストランは賄いを食べた後はそれぞれ、皿を下げれば席を立っていいと言われている。
 実緒としては、賄いが美味しくてゆっくり食べたかったのでむしろ、別行動はありがたかった。そう思い、頷いて見送ったし先輩達も「カップルでのバイト参加」は慣れていると言われた。恋人、あるいは友人との参加は本当によくある話らしい。

(これが学校だったりしたら、もうちょっとざわつくのかもだけど、職場だし……あとは二人とも、ちゃんと仕事してるしね)

 指示に従うのは実緒と一緒だが、晴も理仁もホールスタッフ経験者とのことで、実緒のように緊張したり、大丈夫かと躊躇したりすることはなかった。

(すぐは無理かもだけど、私も頑張ろう)

 まずは、休憩時間の間に貰った資料に目を通そう。
 そう気合いを入れて、でも、うたた寝した時の対策として部屋に置いていたスマートフォンで目覚ましをセットしておいたら──思ったより疲れていたらしく、目覚ましで目が覚めて実緒は自己嫌悪のあまり、顰めた顔を両手で覆ってしまった。



 再度、ホテルに出勤し着替えて賄い(今度はカレーだった)を食べる。美味しいが、洋食縛りでもないんだなと思う。
 その後、ミーティングに参加して予約しているお客様についての情報(アレルギーや記念日など)を共有し、夜シフトの開始である。
 とは言え、ここでも先輩達の指示を聞いてお客様の案内や、空いた食器やグラスを下げたりした。それから最後のお客様を見送った後、片づけをしながら朝食用のセッティングをする。
 夜の掃除は業者が入ってやるが、代わりに別の仕事があった。基本的に食器は洗い場担当がいてしているのだが、ワイングラスは乾燥機にかけると水滴が残るので、人力で拭くことになる。そんな訳で夜のシフトのホールスタッフでグラス拭きをして、本日のシフトは終了した。
 着替えてシャツをクリーニングに出し、新しいシャツを受け取ってロッカーに入れて退勤である。今回も、午後四時半から十時まであっという間だった。
 晴と二人で夜空の下、歩いて女子寮へと戻る。

「……佐久間さんの言う通り、これで仕事の後にコンビニに行くのは無理ですね」
「でしょー? だから本当、気にしないでね」
「すみません、お言葉に甘えます。ただ、口紅のお礼はしたいので……好きなお菓子とか、ありますか?」
「それじゃあ、わたしもありがたく♪ あのコンビニなら、ロールケーキ食べたいなー♡」
「解りました」

 こんな話をしたり、次の日からも先輩達から仕事を教えて貰い、夜シフトまでの間に寝落ちずに資料を見たり、書き込みなどして配膳の仕方や料理について覚えていくうちに──数日後、実緒の初めての休みの日になった。
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