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「十分よ! ありがとう、ティート」
恵理も、ティートにお礼を言った。
最悪、存在しないと解ったらそれはそれで、あるもので作ろうと思える。少なくとも今みたいにあるかないかも解らず、途方に暮れた状態で立ち止まっているよりは大きく前進だ。
そんな恵理に、ティートが頷くように眼鏡の奥の青い瞳を細める。けれどつ、と申し訳なさそうに眉を顰めた。
「少しでも、女神のお役に立てれば幸いです……ただ、申し訳ありません。交渉の材料として、女神やグルナさんのレシピを求められる可能性があります」
「それは構わないわ。美味しいものが、もっと広まるだけだもの!」
「俺も同感」
「……そう言うと、思っていました」
料理のレシピも、技術の一つだ。だからこそ、異世界では簡単に人に教えないのだが――恵理は勿論、グルナもあっさり異世界料理のレシピを提供すると言ったのに、ティートはやれやれと言うように笑った。これまでの付き合いでお金や名誉ではなく、美味しいものの提供自体が恵理達の要望だと解っているからだろう。
「とは言え、もし醤油やキクラゲ、しいたけがあったら……豚の角煮とか、茶碗蒸し自体はニゲル国にもありそうなのよね。だから、逆にトマテを使った洋食のレシピとか……豚の角煮まんとか、ピザまんはあるのかしら? あと、やっぱりプリンかしら」
「お、良いな。ああ、トマテ料理もプリンも作れるし、交流さえ出来ればアイテムボックスもあるから、材料を運ぶのも問題ないもんな」
恵理の思いつくままの呟きに、グルナも賛成した。一方、新たな単語が気になったのか、レアン達が目を輝かせて聞いてくる。
「豚のカクニマンとかピザまんって、何ですか?」
「んー……パン屋さんの惣菜パンみたいな感じかな? 載せるって言うより中に具が入っていて、パンに当たる皮は柔らかいけど」
「豚ってことは、肉が入ってるんスか? でも、ピザ? ピザ生地が、別の皮の中に?」
そう聞いてきたのは、肉好きなサムエルだ。野菜も臭み取りのネギくらいなので、彼好みのメニューかもしれない。そしてピザまんは、サムエルよりミリアムの方が好きかもしれない。
「ええ、一口大に切って醤油って魚醤みたいな調味料で煮た、豚のバラ肉が入ってるの。その肉を煮て、ご飯に載せると豚の角煮丼ね。ピザまんは全部じゃなく、挽き肉にトマテソースとチーズで味つけしてピザっぽい味の具にするの」
「……美味し、そう」
それは正しかったようで、サムエルの隣でミリアムが無表情ながらもうっとりと呟く。
「ただ、時間がかかるなら確かに角煮まんはともかく、どんぶりメニューには現実的じゃないわよね」
「あ、じゃあ、蒸し料理からは外れるけど魯肉飯は?」
「ルーローハン?」
「台湾料理。材料は近いけどもっと手軽に作れるし、これはこれで美味い」
「あとで詳しく教えて」
グルナの提案に、つい食いついてしまう。とは言え、まずはニゲルの話の方が先だ。
「早速、ヴェロニカ様にお願いしますね」
「ありがとう、ティート。よろしく頼むわね」
ティートがそう話を締め括り、恵理達は返事を待つことにしたのだが。
……ニゲル国の王子が、帝都に来てから数日後。事態は思わぬ展開を見せた。
恵理も、ティートにお礼を言った。
最悪、存在しないと解ったらそれはそれで、あるもので作ろうと思える。少なくとも今みたいにあるかないかも解らず、途方に暮れた状態で立ち止まっているよりは大きく前進だ。
そんな恵理に、ティートが頷くように眼鏡の奥の青い瞳を細める。けれどつ、と申し訳なさそうに眉を顰めた。
「少しでも、女神のお役に立てれば幸いです……ただ、申し訳ありません。交渉の材料として、女神やグルナさんのレシピを求められる可能性があります」
「それは構わないわ。美味しいものが、もっと広まるだけだもの!」
「俺も同感」
「……そう言うと、思っていました」
料理のレシピも、技術の一つだ。だからこそ、異世界では簡単に人に教えないのだが――恵理は勿論、グルナもあっさり異世界料理のレシピを提供すると言ったのに、ティートはやれやれと言うように笑った。これまでの付き合いでお金や名誉ではなく、美味しいものの提供自体が恵理達の要望だと解っているからだろう。
「とは言え、もし醤油やキクラゲ、しいたけがあったら……豚の角煮とか、茶碗蒸し自体はニゲル国にもありそうなのよね。だから、逆にトマテを使った洋食のレシピとか……豚の角煮まんとか、ピザまんはあるのかしら? あと、やっぱりプリンかしら」
「お、良いな。ああ、トマテ料理もプリンも作れるし、交流さえ出来ればアイテムボックスもあるから、材料を運ぶのも問題ないもんな」
恵理の思いつくままの呟きに、グルナも賛成した。一方、新たな単語が気になったのか、レアン達が目を輝かせて聞いてくる。
「豚のカクニマンとかピザまんって、何ですか?」
「んー……パン屋さんの惣菜パンみたいな感じかな? 載せるって言うより中に具が入っていて、パンに当たる皮は柔らかいけど」
「豚ってことは、肉が入ってるんスか? でも、ピザ? ピザ生地が、別の皮の中に?」
そう聞いてきたのは、肉好きなサムエルだ。野菜も臭み取りのネギくらいなので、彼好みのメニューかもしれない。そしてピザまんは、サムエルよりミリアムの方が好きかもしれない。
「ええ、一口大に切って醤油って魚醤みたいな調味料で煮た、豚のバラ肉が入ってるの。その肉を煮て、ご飯に載せると豚の角煮丼ね。ピザまんは全部じゃなく、挽き肉にトマテソースとチーズで味つけしてピザっぽい味の具にするの」
「……美味し、そう」
それは正しかったようで、サムエルの隣でミリアムが無表情ながらもうっとりと呟く。
「ただ、時間がかかるなら確かに角煮まんはともかく、どんぶりメニューには現実的じゃないわよね」
「あ、じゃあ、蒸し料理からは外れるけど魯肉飯は?」
「ルーローハン?」
「台湾料理。材料は近いけどもっと手軽に作れるし、これはこれで美味い」
「あとで詳しく教えて」
グルナの提案に、つい食いついてしまう。とは言え、まずはニゲルの話の方が先だ。
「早速、ヴェロニカ様にお願いしますね」
「ありがとう、ティート。よろしく頼むわね」
ティートがそう話を締め括り、恵理達は返事を待つことにしたのだが。
……ニゲル国の王子が、帝都に来てから数日後。事態は思わぬ展開を見せた。
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