続・異世界温泉であったかどんぶりごはん

渡里あずま

文字の大きさ
10 / 45

王子襲来

しおりを挟む
 夜、恵理の店にはルーベルと、ルーベルに呼ばれたグルナも来ていた。そしてルーベルは、ヴェロニカから――ではなく、帝都の冒険者ギルドマスター・デファンスが魔法使い経由で魔法の鳥を送ってきたと教えてくれた。
 帝都リーラにやって来たニゲル国王子は、王太子の婚姻祝いとしてシルクや真珠だけではなく、美しい花器や茶器まで持ってきたそうだ。
 そして皇宮で歓迎会を開いてもてなしたそうだが、そこでジェラルドは王子から思いがけないことを聞かれたと言う。

「これらの料理も十分、美味しいですが……帝都には、珍しくも美味しい料理があるそうですね」
「え……?」
「風の噂で聞いたのですよ。その料理は、食べられないのですか?」

 にこにこ、にこにこ。
 笑顔でそう言われては、断る訳にはいかない。それでもジェラルド達もお忍びで行くとは言え、庶民向けの食堂に他国の王子を連れていく訳にはいかない。
 それ故、食堂の料理人を王宮に呼んで恵理とグルナのレシピ料理を披露した。しかし、それで満足してくれると思ったが、王子は相変わらずの笑顔で言ったそうだ。

「元々は、とある温泉街で食べられる料理だそうですね? 国に戻る前に、立ち寄りたいのですが……一度、戻るとまたしばらく、来られなくなりますので」

 そう言われては、断る訳にもいかず――結果、王子一行はロッコに来ることになった。近くで守るのは皇宮に仕える騎士らしいが、万が一があっては困るので馬車の手配や周囲の警護として、冒険者ギルドにも依頼が入ったらしい。

「幸い、貴族向けの部屋はあるけどぉ~。田舎だから、もてなすのにも限界があるってギルドマスターが言ってくれたから、一泊二日になったわ。あ、他の料理は来てからの注文にするらしいけど、カレー丼はもう注文が入ってるから。悪いけどエリ、よろしくねぇ~?」
「わ、解りました」
「まぁ、頑張ってみるよ……たださ? 流石に王子サマに聞くのは無理だろうけど、お付きとかからは例の……ニゲルの食材については、何か聞けてるのか?」

 随分と大事になったとは思うが、恵理としては注文が入ったらただ精一杯に作るだけである。
 そう思い、気合いを入れていると気になっていたのか、グルナがルーベルに尋ねた。

「それがねぇ……今のところ、教えて貰えてないらしいのよぉ~。殿下もヴェロニカ様も頑張ってくれたらしいけど、どうも笑ってはぐらかされるんですって」
「え? レシピを教えるって言ってもか?」
「そうなのよねぇ。だからロッコ(ここ)で聞けないと、次にいつ聞けるか解らないから……アタシ、頑張るわねっ」
「ネェさん、ありがとうな!」
「ルビィさん、ありがとうございますっ」
「どうか、よろしくお願いしますっ」

 そして「任せなさい」と言うように、自分の厚い胸板を叩いて言うルーベルに、恵理とグルナに加えて新メニューが楽しみなレアンも真剣な表情で頼み込んでいた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

没落港の整備士男爵 ~「構造解析」スキルで古代設備を修理(レストア)したら、大陸一の物流拠点になり、王家も公爵家も頭が上がらなくなった件~

namisan
ファンタジー
大陸の南西端に位置するベルナ子爵領。 かつては貿易で栄えたこの港町も、今は見る影もない。 海底には土砂が堆積して大型船は入港できず、倉庫街は老朽化し、特産品もない。借金まみれの父と、諦めきった家臣たち。そこにあるのは、緩やかな「死」だけだった。 そんな没落寸前の領地の嫡男、アレン(16歳)に転生した主人公には、前世の記憶があった。 それは、日本で港湾管理者兼エンジニアとして働き、現場で散った「整備士」としての知識。 そして、彼にはもう一つ、この世界で目覚めた特異な能力があった。 対象の構造や欠陥、魔力の流れが設計図のように視えるスキル――【構造解析】。 「壊れているなら、直せばいい。詰まっているなら、通せばいい」 アレンは錆びついた古代の「浚渫(しゅんせつ)ゴーレム」を修理して港を深く掘り直し、魔導冷却庫を「熱交換の最適化」で復活させて、腐るだけだった魚を「最高級の輸出品」へと変えていく。 ドケチな家令ガルシアと予算を巡って戦い、荒くれ者の港湾長ゲンと共に泥にまみれ、没落商会の女主人メリッサと手を組んで販路を開拓する。 やがてその港には、陸・海・空の物流革命が巻き起こる。 揺れない「サスペンション馬車」が貴族の移動を変え、「鮮度抜群の魚介グルメ」が王族の胃袋を掴み、気性の荒いワイバーンを手懐けた「空輸便」が世界を結ぶ。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

私をいじめていた女と一緒に異世界召喚されたけど、無能扱いされた私は実は“本物の聖女”でした。 

さら
恋愛
 私――ミリアは、クラスで地味で取り柄もない“都合のいい子”だった。  そんな私が、いじめの張本人だった美少女・沙羅と一緒に異世界へ召喚された。  王城で“聖女”として迎えられたのは彼女だけ。  私は「魔力が測定不能の無能」と言われ、冷たく追い出された。  ――でも、それは間違いだった。  辺境の村で出会った青年リオネルに助けられ、私は初めて自分の力を信じようと決意する。  やがて傷ついた人々を癒やすうちに、私の“無”と呼ばれた力が、誰にも真似できない“神の光”だと判明して――。  王都での再召喚、偽りの聖女との再会、かつての嘲笑が驚嘆に変わる瞬間。  無能と呼ばれた少女が、“本物の聖女”として世界を救う――優しさと再生のざまぁストーリー。  裏切りから始まる癒しの恋。  厳しくも温かい騎士リオネルとの出会いが、ミリアの運命を優しく変えていく。

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

処理中です...