続・異世界温泉であったかどんぶりごはん

渡里あずま

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王子の目的

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 その後、王子一行からカレー丼やカツ丼の注文が来た。恵理は出前のにそれらを渡し、岡持ちで運ばれていくのを見送った。
 次は、夕飯時に注文が来るだろうか――恵理がそう思っていると、外からまたざわめく声が聞こえた。

(ん? また、王子達が現れたのかな?)

 それは客も思ったのか、先程のように店の外に出て一目、王子一行を見ようとする。街を見に来たのかと思っていたが、客の声が恵理の耳に届いた。

「グルナの店に入っていったな。よっぽど、気に入ったのかね」

 その言葉を聞いた瞬間、先程以上に嫌な感じがして、恵理は戸惑った。

(え? グルナの料理が認められた、嫉妬? だとしたら、情けないけど……いや、でも)

 そう自問自答するが、嫌な感じは消えない。むしろ、ますます酷くなるだけだ。
 何故、どうしてこんな気持ちになるのか――そこまで考えて、恵理はようやくその理由に気づいた。

(王子の目が、私をただ見ていたんじゃなく……観察、していたからだ)

 王子は、恵理やグルナの作った料理を気に入り、食べる為にロッコに来たと言う。そして実際、出前で注文をして食べた結果、王子はグルナの店に行った。 
 ……今までの行動を考えると、どうもお礼を言うだけとは思えない。もしかしてだが、王子はグルナの料理を気に入るあまり、ニゲルに連れていこうとしているのではないか?

「ごめん、レアン! ちょっと、グルナの店行ってくるっ」
「店長!?」

 自分の勘違いかもしれない。だがそれなら後から謝って、笑い話にすれば良い話だ。
 けれど、今はまず動かなければと恵理は店を飛び出し、グルナの店へと走っていった。



 客がざわつく声がしたので、グルナが振り返って目を向けたら――そこには前世の、だが日本ではなく中国のような、更に現代ではなく時代劇で見たような格好をした青年が立っていた。とは言え、片眼鏡をしているのがグルナ的には少しミスマッチで、何と言うかコスプレのような感じもする。

(とは言え、周りは単に異国人としか思ってないみたいだから、これは一種の前世病だよな)

 そう思い、意識してにっこり笑うと、グルナは口を開いた。

「いらっしゃいませ。何名様ですか?」
「ああ、客ではない。俺は、ハオ・ラン。ニゲル国の王子だ。先程、出前でこちらの料理を食べて……礼を言いに来た。うまかった」
「ありがとうご……」
「今後は、我が国でその料理の腕を振るって欲しい。一緒にニゲルに行こう」
「「「っ!?」」」

 グルナのお礼を遮り、手を差し出して笑顔で言ってくるのに――居合わせた客達は驚いた。一方の、当のグルナは。

(……うわー、CMで見た少女漫画とか、乙女ゲーみてー)

 何でアラサーの、しかも男のグルナがイケメンからいきなりお誘いを受けているのか。今までのパターンだと、ここは恵理が言われるべきではないか。いや、実際恵理を口説かれると複雑だが。
 現実逃避するあまり、グルナはそんなことを考えていた。
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