続・異世界温泉であったかどんぶりごはん

渡里あずま

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どんぶりを笑う者は、どんぶりに泣く

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 ハオはともかく、カレーの香辛料がフェリシアの口に合うか解らないので、魯肉飯ルーローハンとカツカレー丼は半どんぶりサイズの器に入れた。
 その時に聞いたが、ニゲルではどんぶり料理自体がないらしい。この器も、元々はスープ用だそうだ。

「ご飯とおかずで、器を分けるってこと?」
「ご飯に炒めた肉や野菜を乗せる料理自体はあるんだけど、お椀じゃなく皿に載せるから……イメージは、ワンプレートかな?」

 ただ、カレー食べるんなら最初は皿より、どんぶりの方が安心しないか?
 グルナの言葉に、恵理は「確かに」と同意した。カレーもだし、あと汁だくにするのなら深い器の方が安心出来る。そんな訳で今回はスープ用の器を代用するが、いずれはロッコでそうしたように丼鉢を広めようと恵理は決意した。
 そしてハオだけではなく、今日はフェリシア。更に、レアン達が待つ食堂へと向かい、グルナと共にまずはどんぶり料理を、次いで豚角煮まんを食卓に並べた。

「まあ……こちらは初めて見ますが、蓋飯ガイファンですか?」

 聞き慣れない名前を口にしたのは、フェリシアだ。おそらく先程、グルナが教えてくれたワンプレートのことだろう。

「……全部、その女が作ったのか?」
「いや? カツカレー丼は恵理で、魯肉飯ルーローハンは俺。豚角煮まんは、生地は二人で用意して包んだけど、まあ、俺かな」
「こぼしにくいのは良いが、どうせならグルナがカレーも作った方が良かったんじゃないか……」

 そこまで言って、不意にハオが黙った。それにフェリシアが首を傾げるが、グルナが場を仕切るように話す。

「さ、食べてくれよ!」
「…………」

 グルナの声に答えず、ハオがカツカレー丼に口をつける。それに合わせて、他の者達も陶製スプーン(日本でのレンゲ)で料理を口に運んだ。レアン達は初めての魯肉飯ルーローハンから、フェリシアはハオが口をつけたカツカレーから食べ始めた。

「いつもの魚醤も良いですけど、このしょっぱいのは何だか優しい感じですね」
「おう。しかも何か甘くもあるし、美味ぇ。あと、この豚角煮まん? ふかふかだな」
「ん、美味」
魯肉飯ルーローハンと肉包は、屋台のご飯ですね。どちらも美味しいですが……この、カレーですか? 辛いスープ? ソース? が、お肉にもお米によく合いますね」

 いつものレアン達の感想に、フェリシアも加わる。
 けれど、ハオだけは静かで――やっぱり、物足りなかったのかと思って目をやり、恵理はギョッとした。
 その視線の先で、ハオの右目から一筋、涙がこぼれ落ちる。それをグイっと乱暴に拭って、ハオが話し始めた。

「野菜も肉も大きくて、でも、芋は少し崩れて、溶けてて……おふくろのカレーと、同じだ」

 涙の代わりにぽつり、ぽつりと呟きが落ちる。

「トンカツも、美味い……家庭料理だからと、馬鹿にして悪かった。値段を考えるとすぐには無理だが、いずれカレーを、民が家族で食べられるようにする。その時に食べるのは、このカレーがいい……このカレーのレシピを、教えてくれ」
「かしこまりました」

 そしてそう言って頭を下げたハオに、恵理は答えて――グッと親指を立てたグルナに、こっそり笑って見せた。
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