99 / 113
第二章
私は私、あなたはあなた
しおりを挟む
返された言葉で、やはりアリアにはイザベルが恋をするならエドガー達攻略対象だと、勘違いされていたのだと思った。
(まぁ、ネット小説でよく読んだけど)
とは言え、いくら乙女ゲームの世界でも、ゲームと同じ名前や見た目でも――私達には、心がある。エマが殿下の婚約者になったのは、ゲームに沿った訳じゃない。確かに前世の推しキャラらしいが、ゲームの設定を知っているからこそ彼の為に身を退こうとしたが、私と話してそのまま婚約者としていられることになり、恋心を自覚したらしい。
(確かに、相手の為にって行動するのは『愛』よね)
(カナさんが私や、皆の為にって行動するのも『愛』よ?)
(……本当、イザベルってば天使)
可愛いことを言う現世の私にときめくが、それこそ聞いた乙女ゲームのキャラクターと一番違うのが現世の私だ。そして自画自賛ではあるんだけど、元々良い子だったけど彼女には私がいたから、自分の境遇に自暴自棄になることも拗らせることもなく可愛く元気に成長した。
(……そんなイザベルが、許してくれたんだから。「誰?」って言われたのには、怒っていいよね? そりゃあ、脳筋一筋だから関心がないんだろうけど……ラウルさんは、あんなに優しくて素敵なのに)
私は、乙女ゲームのキャラクターじゃない。あと、見た目は十代だけど前世で生きた年数も追加したらアラサーどころかアラフォーだ。
だから怒鳴って悪目立ちしたりはしないけど、目の前の子にははっきりキッパリ言おうと――私は気合いを入れてにっこり笑い口を開いた。
「私の好きな人のことを、そんな風に言わないで下さい」
「……あ」
「殿下達とは確かに、子供の頃からの知り合いですが……ラウルさんは、修道院に入ってからずっと私を守って、支えてくれたんです。そんな素敵な人がいるのに、他に目なんていきません」
だから私は、あなたの恋敵ではありません。
最後は言葉にしなかったが、アリアには通じたようだ。先程までの躊躇はなく、男子用の制服なのでスカートを摘まむのではなく、胸に手を当てて私に頭を下げた。
「今までの数々の無礼、申し訳ございませんでした……私は、どんな罰でも受けます。ですからどうか、家や両親はお許し下さい」
「反省しているのなら良いですよ、あなたを許します。これから、気をつけて下さいね……あなたはあなたとして、卒業まで学園生活を満喫して下さい」
乙女ゲームのキャラクターとしてではなく、一人の人として――言葉に込めた意味が通じたらしく、アリアは顔を上げて今までの王子様のではなく泣き笑いの、可愛い女の子の表情で頷いた。
「はい」
(まぁ、ネット小説でよく読んだけど)
とは言え、いくら乙女ゲームの世界でも、ゲームと同じ名前や見た目でも――私達には、心がある。エマが殿下の婚約者になったのは、ゲームに沿った訳じゃない。確かに前世の推しキャラらしいが、ゲームの設定を知っているからこそ彼の為に身を退こうとしたが、私と話してそのまま婚約者としていられることになり、恋心を自覚したらしい。
(確かに、相手の為にって行動するのは『愛』よね)
(カナさんが私や、皆の為にって行動するのも『愛』よ?)
(……本当、イザベルってば天使)
可愛いことを言う現世の私にときめくが、それこそ聞いた乙女ゲームのキャラクターと一番違うのが現世の私だ。そして自画自賛ではあるんだけど、元々良い子だったけど彼女には私がいたから、自分の境遇に自暴自棄になることも拗らせることもなく可愛く元気に成長した。
(……そんなイザベルが、許してくれたんだから。「誰?」って言われたのには、怒っていいよね? そりゃあ、脳筋一筋だから関心がないんだろうけど……ラウルさんは、あんなに優しくて素敵なのに)
私は、乙女ゲームのキャラクターじゃない。あと、見た目は十代だけど前世で生きた年数も追加したらアラサーどころかアラフォーだ。
だから怒鳴って悪目立ちしたりはしないけど、目の前の子にははっきりキッパリ言おうと――私は気合いを入れてにっこり笑い口を開いた。
「私の好きな人のことを、そんな風に言わないで下さい」
「……あ」
「殿下達とは確かに、子供の頃からの知り合いですが……ラウルさんは、修道院に入ってからずっと私を守って、支えてくれたんです。そんな素敵な人がいるのに、他に目なんていきません」
だから私は、あなたの恋敵ではありません。
最後は言葉にしなかったが、アリアには通じたようだ。先程までの躊躇はなく、男子用の制服なのでスカートを摘まむのではなく、胸に手を当てて私に頭を下げた。
「今までの数々の無礼、申し訳ございませんでした……私は、どんな罰でも受けます。ですからどうか、家や両親はお許し下さい」
「反省しているのなら良いですよ、あなたを許します。これから、気をつけて下さいね……あなたはあなたとして、卒業まで学園生活を満喫して下さい」
乙女ゲームのキャラクターとしてではなく、一人の人として――言葉に込めた意味が通じたらしく、アリアは顔を上げて今までの王子様のではなく泣き笑いの、可愛い女の子の表情で頷いた。
「はい」
41
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢がヒロインからのハラスメントにビンタをぶちかますまで。
倉桐ぱきぽ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私は、ざまぁ回避のため、まじめに生きていた。
でも、ヒロイン(転生者)がひどい!
彼女の嘘を信じた推しから嫌われるし。無実の罪を着せられるし。そのうえ「ちゃんと悪役やりなさい」⁉
シナリオ通りに進めたいヒロインからのハラスメントは、もう、うんざり!
私は私の望むままに生きます!!
本編+番外編3作で、40000文字くらいです。
⚠途中、視点が変わります。サブタイトルをご覧下さい。
【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。
なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。
本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
死に戻りの元王妃なので婚約破棄して穏やかな生活を――って、なぜか帝国の第二王子に求愛されています!?
神崎 ルナ
恋愛
アレクシアはこの一国の王妃である。だが伴侶であるはずの王には執務を全て押し付けられ、王妃としてのパーティ参加もほとんど側妃のオリビアに任されていた。
(私って一体何なの)
朝から食事を摂っていないアレクシアが厨房へ向かおうとした昼下がり、その日の内に起きた革命に巻き込まれ、『王政を傾けた怠け者の王妃』として処刑されてしまう。
そして――
「ここにいたのか」
目の前には記憶より若い伴侶の姿。
(……もしかして巻き戻った?)
今度こそ間違えません!! 私は王妃にはなりませんからっ!!
だが二度目の生では不可思議なことばかりが起きる。
学生時代に戻ったが、そこにはまだ会うはずのないオリビアが生徒として在籍していた。
そして居るはずのない人物がもう一人。
……帝国の第二王子殿下?
彼とは外交で数回顔を会わせたくらいなのになぜか親し気に話しかけて来る。
一体何が起こっているの!?
【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。
《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》
モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します
みゅー
恋愛
乙女ゲームに、転生してしまった瑛子は自分の前世を思い出し、前世で培った処世術をフル活用しながら過ごしているうちに何故か、全く興味のない攻略対象に好かれてしまい、全力で逃げようとするが……
余談ですが、小説家になろうの方で題名が既に国語力無さすぎて読むきにもなれない、教師相手だと淫行と言う意見あり。
皆さんも、作者の国語力のなさや教師と生徒カップル無理な人はプラウザバック宜しくです。
作者に国語力ないのは周知の事実ですので、指摘なくても大丈夫です✨
あと『追われてしまった』と言う言葉がおかしいとの指摘も既にいただいております。
やらかしちゃったと言うニュアンスで使用していますので、ご了承下さいませ。
この説明書いていて、海外の商品は訴えられるから、説明書が長くなるって話を思いだしました。
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる