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殺戮伯を枕に熟睡とは
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ウィラード視点
※
暗くなる前に、公道を少し外れて野宿の準備をする。天幕を張って火を起こし、交代で見張りを立てながら水を汲んで夕飯の支度をする。クララベルは手伝うと言っていたが、流石に襲撃されたばかりの女子供を働かせるつもりはない。
ちなみに野宿なのでパンと、玉ねぎと塩漬け肉の串焼きだ。戦で野宿に慣れているウィラード達はともかく、クララベルはどうかと思ったが──何だか、キラキラした目で見られた。
「美味しいですね」
笑顔でそう言うと小さな口を大きく開け、リスみたいに頬張っていた。そして咀嚼し、飲み込んで腹いっぱいになったら眠くなったのか、クララベルの瞼が閉じた。携帯椅子に座らせていたが、上半身がグラグラしている。
「クララベル?」
「……ふぁい」
隣に座っていたウィラードが名前を呼ぶと、ふにゃふにゃとした声が返ってきた。倒れては大変なので肩を抱き寄せ、自分にもたれさせると安心したのか完全に眠りに落ちた。スヤスヤと、安らかな寝息が聞こえてくる。
そんなクララベルを眺めながら、口を開いたのはウィラードの乳兄弟であり、右腕であるハーラルだった。
鳶色の髪と瞳。ウィラードより更に背が高く、厳つい顔な上、左頬には傷が走っているので女性には遠巻きにされるのが一般的だ。もっともクララベルは全く動じず、馬車の護衛をしてくれたハーラルに、笑顔でお礼を言って困惑させていた。
「可愛らしいが、逞しくもあるな。抂戦士呼ばわりされる俺を怖がらない上に、殺戮伯を枕に熟睡とは」
「そうだろう?」
「……まさか若に、惚気られる日が来るとは思わなかった。疲れておかしくなってるなら、さっさと寝ろよ?」
「酷いな」
とは言え、ハーラルだけならともかく他の騎士や兵士達に、こんなに可愛らしいクララベルを見せたくないと思った。
それ故、眠るクララベルを横抱きにして、ウィラードは自分も泊まる予定の天幕に連れていった。床に毛皮や寝具を敷いているので、彼女が言っていた「どこでも寝るしかなかった」環境よりはずっと寝心地は良い筈だ。
(って、言うか……この娘、随分と温かいな)
そう思いながら、クララベルの額や頬にそっと触ってみる。熱ではなさそうだが、それこそ赤ん坊や幼児並みに温かい。抱き上げていた腕から降ろした途端、離れたぬくもりに物足りなさを感じたくらいに。
(家族に恵まれないっていうのは、こういうことなんだな)
温かいが、クララベルはひどく痩せ細り、小さな手も荒れている。今回、侍女がいるだろうと女性騎士は連れてこなかったのでドレスを脱がせられないが、せめてとウィラードはクララベルの手に自分の軟膏を塗ってやった。
……恋愛というより、庇護愛な気がする。成人男性としては少々、情けないかもしれないが、変にその気になっても怖がらせそうなので、今はこれでいいだろう。
(これから一緒に、暮らすんだから)
恋人や夫婦にはすぐになれないかもしれないが、家族には思ったより早くなれる気がした。
そして少し離れた場所で、剣を抱えてクララベルの寝顔を眺めながら──いつしか、ウィラードも眠ってしまっていた。
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暗くなる前に、公道を少し外れて野宿の準備をする。天幕を張って火を起こし、交代で見張りを立てながら水を汲んで夕飯の支度をする。クララベルは手伝うと言っていたが、流石に襲撃されたばかりの女子供を働かせるつもりはない。
ちなみに野宿なのでパンと、玉ねぎと塩漬け肉の串焼きだ。戦で野宿に慣れているウィラード達はともかく、クララベルはどうかと思ったが──何だか、キラキラした目で見られた。
「美味しいですね」
笑顔でそう言うと小さな口を大きく開け、リスみたいに頬張っていた。そして咀嚼し、飲み込んで腹いっぱいになったら眠くなったのか、クララベルの瞼が閉じた。携帯椅子に座らせていたが、上半身がグラグラしている。
「クララベル?」
「……ふぁい」
隣に座っていたウィラードが名前を呼ぶと、ふにゃふにゃとした声が返ってきた。倒れては大変なので肩を抱き寄せ、自分にもたれさせると安心したのか完全に眠りに落ちた。スヤスヤと、安らかな寝息が聞こえてくる。
そんなクララベルを眺めながら、口を開いたのはウィラードの乳兄弟であり、右腕であるハーラルだった。
鳶色の髪と瞳。ウィラードより更に背が高く、厳つい顔な上、左頬には傷が走っているので女性には遠巻きにされるのが一般的だ。もっともクララベルは全く動じず、馬車の護衛をしてくれたハーラルに、笑顔でお礼を言って困惑させていた。
「可愛らしいが、逞しくもあるな。抂戦士呼ばわりされる俺を怖がらない上に、殺戮伯を枕に熟睡とは」
「そうだろう?」
「……まさか若に、惚気られる日が来るとは思わなかった。疲れておかしくなってるなら、さっさと寝ろよ?」
「酷いな」
とは言え、ハーラルだけならともかく他の騎士や兵士達に、こんなに可愛らしいクララベルを見せたくないと思った。
それ故、眠るクララベルを横抱きにして、ウィラードは自分も泊まる予定の天幕に連れていった。床に毛皮や寝具を敷いているので、彼女が言っていた「どこでも寝るしかなかった」環境よりはずっと寝心地は良い筈だ。
(って、言うか……この娘、随分と温かいな)
そう思いながら、クララベルの額や頬にそっと触ってみる。熱ではなさそうだが、それこそ赤ん坊や幼児並みに温かい。抱き上げていた腕から降ろした途端、離れたぬくもりに物足りなさを感じたくらいに。
(家族に恵まれないっていうのは、こういうことなんだな)
温かいが、クララベルはひどく痩せ細り、小さな手も荒れている。今回、侍女がいるだろうと女性騎士は連れてこなかったのでドレスを脱がせられないが、せめてとウィラードはクララベルの手に自分の軟膏を塗ってやった。
……恋愛というより、庇護愛な気がする。成人男性としては少々、情けないかもしれないが、変にその気になっても怖がらせそうなので、今はこれでいいだろう。
(これから一緒に、暮らすんだから)
恋人や夫婦にはすぐになれないかもしれないが、家族には思ったより早くなれる気がした。
そして少し離れた場所で、剣を抱えてクララベルの寝顔を眺めながら──いつしか、ウィラードも眠ってしまっていた。
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