灰かぶり君

渡里あずま

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遭遇と画策と予想外と3

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「親衛隊のこと、庇ってくれてありがとう」

 真白と奏水が部屋に戻った後、一茶がポツリと呟いた。

「別に庇った訳じゃない。クラスの奴らもだけど、俺個人としては煩いとしか思えない」
「確かにね……まあ、あれはストレス発散だから。大目にみてやって?」
「ストレス発散?」
「遊びたい盛りが、こんな山奥に閉じ込められてるからさ」

 一茶の言葉にふむ、と俺は考えた。
 確かに、出かけられるのは土日祝。しかも、外泊は基本不可(例外は実家に帰る時のみ)なら、ストレスも溜まるだろう。大声を出して解消出来るなら、むしろ健全だ。

「ストレス云々は解った。けど、やっぱりお礼は解らない」
「親衛隊のこと、悪く言う奴ばっかりだからさ」

 ……まあ、奏水ですらあれだけ嫌がってたからな。
 ただ理由は解ったけど、一茶がどうして親衛隊に思い入れをするのかはやっぱり解らない。

「親衛隊に、好きな奴でもいるのか?」
「俺は、ノーマル! でも健気で、可愛いじゃないか……よしっ、谷君に親衛隊の良さを教えてあげるよ!」
「いらない」
「オススメ小説のURL、送るね」

 俺の話を全く聞かず、一茶がスマートフォンを取り出して操作をし――携帯電話に送られてきたURLをクリックした途端、思わずゲンナリした。
(『デリ☆』の小説かよ)
 思わぬ接点に頭を抱えたくなったが、作品数およそ二百万のサイトなんで俺のことなんて知らないだろう。
 そう思いつつも念には念を入れ、俺は話を逸らすように口を開いた。

「腐男子親衛隊長総受けが多いな……お前も、その気になれば」
「ならないからね!? 親衛隊サイドの話の、チョイスの結果だから!」

 一茶の反論を聞き流し、まあ、勉強させて貰うか――とこっそりため息を吐いた俺に、一茶が更なる爆弾を投下してくる。

「チワワちゃんも可愛いけど、俺は、可愛い女の子が好きなんです! そんな訳で、そっちのオススメも送るから」
「はいは……」

 届いたURLをクリックした途端、俺の小説が出てきて固まった。イベントで頼み込んで、絵師様に描いて貰った表紙なんで間違いない。

「『天使の花園』略して、てんはな! 俺の一推しは、一年の香澄ちゃんね。ちょっと天然で、ふわふわしてて可愛いんだ♪」
「……へー」

(二次元かよ)
 思いっきり身近にいた読者に対し、俺はそうツッコミを入れるのを何とか堪えた。

 各部屋には、当然のようにインターネット回線が用意されている。やっぱりホテルだ、と思うが俺にとっては好都合だ。
(おかげでネットも、メールも出来るからな)
 そんな訳でプロットって言うか、あったことを箇条書きしたファイルを桃香さんに送る。
 ……すると五分くらいで、携帯にメールが届いてちょっと驚いた。

『キタ━━━(゜∀゜)━━━!! 出灰君、噂通りの王道学園ね(≧▽≦)』

 相変わらず、見た目のクールさからは想像出来ないメールを打つひとだよな。
 とは言え(色んな意味で)腐ってても編集者だ。あとは普通に締め切りなんかを打ち合わせして、俺の濃い転校初日は終了した。



「「「「…………」」」」

 そして、次の日。
 昨日同様、一緒に朝飯を食べて登校した俺達を待っていたのは、真白の机にある菊の花瓶だった。

「誰?」

 最初に、口を開いたのは真白――じゃなく、奏水だった。静かだけどよく通る声に、可愛い見た目に反した男気を感じる。

「奏水、いいって」
「でも!」
「気に食わないんなら、仕方ねぇよ」

 そして真白もまた、毬藻だけど男前だ。それってつまりは「嫌がらせされても、態度を変えない」ってことだろ?

「良くありませんよ、真白!」

 だけど、そこで割り込んできた声に教室中の空気が凍った――声の主が変態、改め副会長だったからだ。

「誰ですか? 僕の真白に、こんな酷いことをしたのは!?」

 きつい口調で問い詰められるのに、皆がビクッと肩を竦ませる。まあ、俺は「美形は怒っても美形なんだな」と思ってたけど。

「紫苑、いいって」
「真白!」
「それより、今日はどうしたんだ?」

 そんな中、真白が副会長に話しかけた。名前呼びに生徒達の眉が寄るけど、お前ら、下手に刺激するなよ?
(せっかく、真白が話題を変えてくれてんだから)

「真白を、迎えに来たんです。昨日は、ほとんど話せなかったので」
「そっか。でも、これから授業だぞ?」
「こんなところに、真白を置いていくなんて出来ません」

 副会長も煽るなって。『こんなところ』にも、あんたのファンはいるんだからさ。

「……今日だけだぞ?」
「はい……!」

 そして誘われたからって言うより、この場を収める為に真白は副会長と一緒にSクラスを後にした。
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