灰かぶり君

渡里あずま

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話してみなくちゃ解らない、ってか解るか1

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「いい? 紅河様はあんたなんて、何とも思ってないんだからね?」
「平凡だから、舞い上がっちゃうだろうけど」
「勘違いしたら、ただじゃおかないんだから!」

 ……今、俺はトイレでチワワ達に囲まれている。
 朝っぱらからこうなったのは、早めに登校して紫子さんにお礼を言いに行ったからだ。手ぶらも何なんで、クッキー作って持っていったら、随分と感激された。

「まぁ、あなた乙女のツボを心得てるわね!」

 本当に乙女なのか、オネェのツボなのかは知らないけど、まあ喜んでるからいいだろう。
 そして保健室を出て、教室に向かおうとしたところで俺はチワワ達に捕まり、現在に至る。

「……あの、これは『警告』なんでしょうか?」

 疑問形になったのは、俺に対する心構えは求められてるけど「会長に近づくな」とは言われていないからだ。まあ、遊園地デートは拒否出来ないらしいから、実際に言われても困るけどな。

「「「そうだけど……好きにならないのは無理だもの。だって、紅河様は素敵な方だから!」」」

 本当に、噂は当てにならないと思う。会長の親衛隊は過激派だって聞いてたけど、こいつらただのファンじゃないか。そうなると、話は早い。

「……すみません、俺なんかがでしゃばって」

 下を向いたのは、怖がってるからじゃなく考えてることに気づかれないようにだ。そして、周りの戸惑う気配を感じながら俺は言葉を続けた。

「あんな(俺様な)方、今までいなかったから……どうすれば(適当にあしらって)失礼にならないように出来るでしょう?」

 リサーチするには最適な相手だ。早起きは三文の徳――本音を隠しつつ尋ねた俺に、しばし沈黙が落ちる。

「……そっ、そんなに言うなら紅河様のこと教えてあげる!」
「放課後、迎えに行くから。逃げたら承知しないんだからねっ」

(助かるけど、ちょろいなこいつら)

「ありがとうございます」

 内心、ツッコミつつも俺はチワワ達にお礼を言った。
 そしてチワワ達が出て行った後、俺も急いで教室へ向かおうとしたら――不意に、後ろから声をかけられた。



「待て、廊下は走るな」

 言われた内容に「もしや」と思いつつ、振り返ると――そこには、風紀委員長がいた。
 美形って言うか、中性的な美人って感じだ。前にあった時、茶髪だって思ったけど色抜いたり染めたりした感じじゃないから、地毛なんだろうな。

「すみませんでした」
「待て」

 そう言って立ち去ろうと俺を呼び止めると、綺麗だけど無表情なまま俺を見て口を開いた。

「私こそ、すまなかった」
「えっ?」
「駆けつけたのが遅くて、怪我をさせてしまった」
「いえっ、一昨日は助かりました! ありがとうございましたっ」

 素直に謝ってくる風紀委員長に、俺は慌ててお礼を言った。そんな俺に、風紀委員長がつ、と眉を寄せる。

「礼は不要だ。風紀として、当然なことだからな」
「助けて貰って、お礼を言うのも当然です」
「……真面目だな」

 俺からすれば、それは風紀委員長の方だと思う。美人なだけじゃなく、こういう性格だから他の風紀委員も付いて来るんだろうな――女王様と近衛隊って感じではあるけど。
(新歓の時、遅いとか思って悪かったな)
 反省しつつ、逃げるように走り去ろうとすると――風紀委員長から「だから、走るな」と注意された。うん、俺が悪いけど何これ、ギャグ?
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