灰かぶり君

渡里あずま

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どうしてこうなった?2

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(あれ?)
 そんな会長の向かい側、そして副会長の隣に見たことのない奴がいた。
 黒髪ショートに、つぶらな黒い瞳。犬っぽいけどチワワって言うより、豆芝みたいな感じだ。
(……あ、生徒会の誰かとのペアか?)
 だとしたら、俺と同類だ。気まずい思いをしているか、それともここにいる幸運に感激しているのか――そんなことを考えていた俺の前で、豆芝君がニッコリ笑う。

「初めまして、谷様」
「様?」
「ぼくは、月ノ瀬桃里つきのせとうり。高良様の親衛隊長です」
「……月ノ瀬?」

 自己紹介をされて、誰かって言う疑問は解消した。ただし、何で様付けされるのかが解らない。そして少し変わった苗字は、俺の知っている人と同じだった。

「もしかして、桃香さんの……?」
「はい、弟です」
「…………」

 何だ、身内がいてしかも親衛隊長なら別に、俺が転校してくる理由はなかったじゃないか。まあ、桃香さんに聞いても「転校生ってところが重要!」とか言われて終わりそうだけど。

「それなら尚更、様付けなんてしないで下さい」
「……そんなっ!」
「えっ?」
「りぃ君りぃ君、許してあげて?」

 会うのは初めてだけど桃香さんの弟なら尚更、様付けされるなんて冗談じゃない。
 だから、と思って言ったのに、途端に泣きそうな顔をされてギョッとした。そんな俺の耳元に、かー君が顔を近づけて囁いてくる。

「とっ君、りぃ君のファンだから。様付け却下したら、可哀想から」
「……って」
「イラスト担当だから、俺のことも立ててくれてるけど……本命はりぃ君って言うか、三愛先生だから。むしろ、クリエーター名呼ぶの我慢してくれてるから」

 かー君の説明に、またしてもギョッとする。
 一茶の時も驚いたけど、そんな様付けしてくるような読者さんとこうして会うとは思わなかった。
 うん、でもクリエーター名呼ばれるのは困る。バレるバレないじゃなく、単純に恥ずかしい。

「……月ノ瀬、君? あの、よろしくお願いします?」
「はいっ、谷様!!」

 俺の本業については言えないんで、ぼかしつつまとめたけど――豆柴君改め、桃里君は満面の笑顔で答えてくれた。

「「出灰、あーん」」
「……食べ、る」
「あ、ポテチもあるよー?」
「…………」

 ああ、帰りたい。まだ目的地に着いてすらいないけど、出来ることなら帰りたい。
 チョコにクッキー、ポテトチップスをそれぞれ差し出してくる空青と海青、緑野とかー君に対して俺は無言で口を開けた。色んな味が混ざって、口の中がちょっとカオスだ。

「……お前ら、出灰を太らせる気か?」
「あの、谷様お飲みものを」

 そんな俺を気づかってか、刃金さんは呆れ声でツッコミを、桃里君は紅茶を入れてくれた。

「全く、随分と平凡に入れ揚げてますね」
「……オレも、出灰の横座りたかった」
「真白!?」
「……運転中、立ったら危ないから。遊園地着いたら、一緒に何か乗ろうな」

 副会長に「平凡が僕を差し置いて!?」って目で睨まれたのに、俺は内心ため息をつきながら真白にフォローを入れた。結果、全くフォローになってなかったけど副会長、どうせ指名された相手とデートするんだよな?
(……って言うか俺、本当に会長とデートすんのか?)
 一人、寝たままの会長を見てそう思う。狸寝入りだと思うけど、つまりは拒絶されてるってことだろう? 正直、嫌がられてまでデートなんてしたくない。
(さっき、真白にはああ言ったけど……弁当番とか理由つけて、バスに残ろうかな)
 王道学園らしく、イベント不参加は許されないんだけど――とりあえず、遊園地までは来た訳だし。弁当は作ってきたから、会長も大目に見てくれるんじゃないかな?
(うん、桃香さん。やっぱり俺には総受け、無理)
 と言うか、これだけ大人数に構われるのってしんどい。俺、聖徳太子じゃないんで、かなりいっぱいいっぱいだ。
(真白はよく相手出来てたな。流石、王道転校生は違うわ)
 しみじみと感心していた俺の、ささやかな願いは叶わなかった。

「あの、弁当たくさんあるんで俺、バスで留守ば」
「行くぞ」
「……はい?」

 遊園地に到着したんで、会長にお断りを入れようとしたんだけど――何故だか遮られて、弁当の入った鞄ごとバスから連れ出された。
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