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どうしてこうなった?3
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「あー、紅河抜け駆け!」
「……真白」
「出灰は俺と、アレに乗るんだ!」
会長に名前を呼ばれた真白が、ビシッと指差したのはコーヒーカップだった。って随分、可愛らしいチョイスだな。
「デートではアレに乗ってはしゃぐと、好感度アップなんだろ?」
「……真白、それはどこ情報だ?」
しかも、相手に言っちゃうとか。そうツッコミを入れた俺は、悪くないと思う。まあ、胸を張ってる真白を可愛いとも思うけど。
「それは、女がやったらだろう? ってか、お前こそ抜け駆けするな」
そんな俺と真白のやり取りに、刃金さんが乱入してきた。
背後から俺に抱き着いてきて言う刃金さんを、真白がキッと睨みつける。
「紅河と一緒にすんな! オレはちゃんと、出灰と約束したんだからなっ」
「そうかよ、じゃあ……次はおれと、オバケ屋敷行こうぜ。出灰」
「なっ!?」
俺を腕の中に収めたまま、耳元でわざわざ甘く囁いてくる刃金さんに、俺はやれやれとため息をついた。本当、この人ってオイシイところかっ攫うの上手い。
(そして真白は、刃金さんとだと口で負けちゃうよな)
性格なのか、本人はあまり言わないけど育ちの良さなのか――うん、両方だな。王道転校生だもんな。
「って言うか、一緒に乗ればいいんじゃないですか?」
「「……えっ?」」
「コーヒーカップ、四人まで乗れますよね?」
そこまで言って、俺は空気と化していた会長を思い出した。どこに行こうとしていたかは解らないけど、この後でも良いのか聞こうとしたら。
「……そうだな、行くぞお前ら」
「「「はっ?」」」
今度は、不覚にも俺まで声を上げてしまった。えっ、乗るの? 会長も、このファンシーなコーヒーカップに乗るのか?
「他にも乗るんなら、これの後に飯食うぞ。どの乗り物も結構、並ぶからな」
「……はあ」
「紅河……ああ、もうっ」
「……チッ」
到着後同様、話を進めて俺を連れて行く会長に真白と刃金さんがついて来た。
(あ、そっか)
そこで俺は、今更ながらに気がついた。
(会長、真白の気を引きたくて俺にちょっかいかけてるんだ)
『将を得んとせば馬を射よ』ってことだな。うん、それなら今までの意味不明な行動もスッキリする。
(俺様が、まさかの遊園地好きかって勘違いしそうになったぞ……まあ、それはそれで面白いけど)
心の中で呟きながら、俺はコーヒーカップに乗った。そんな俺を挟んで刃金さんと真白、そして真白の隣には会長が座る。
「うわっ、スゲェ回るな!」
「……お前が、回してるからだろうが」
「…………」
嬉々としてコーヒーカップを回す真白。そんな真白にツッコミを入れつつ俺の肩を抱く刃金さんと、無言(真白の可愛さをかみ締めてるのか?)の会長。
「りぃ君、こっち向いてーっ」
「谷様ー!」
「美形サンド、萌えっ」
「……こっ、ちも」
(コラコラ、お前ら。遊園地に来て、何をやってるんだ)
そして、何故かスマホで俺達を撮り出したかー君達と一茶達に、俺は心の中でツッコミを入れた――いつの間にか馴染んでる緑野が、ちょっとだけ心配になった。
※
コーヒーカップに乗った後、俺達は早めの昼を食べることになった。
……なったけど。
結果的に、ほとんど食べられなかったのは――頑張って多めには作ったけど思った通りかー君達や双子、あと副会長までが乱入してきたからだ。
ちなみに、双子と副会長の相手はいない。空青(ピンを右側につけてる)曰く「これ以上、分け前を減らされたくないから別行動♪」だそうだ
(相手さん達、よく訓練されてるよな……それにしてもこいつら、よく食うな)
「出灰! この豚肉のアスパラ巻、美味いぞっ」
「いつでも嫁に来られるな」
「安来さん、相変わらず攻め攻めですね!」
「……コロッ、ケ、里芋?」
「この海老とブロッコリーのサラダ、美味しいよりぃ君♪」
「谷様、料理もお上手なんですね!」
「「唐揚げ、美味しいねっ」」
「よく、これだけ茶色いおかずばかり作れますね……まあ、何とか食べられますけど」
口々に言いながら食べていく生徒会の面々の中、会長も俺同様にほとんど食べていない。
文句を言いつつも食べている副会長より食べてないって、俺様どこ行った?
(一人っ子で、こう言う争奪戦に慣れてないのか?)
あくまでもきっかけだが、そもそも弁当を作ったのは会長が言ったからだ。
流石に可哀想なので、玉子焼きと唐揚げを一個ずつ取って差し出してやると――ちょっと驚いた顔をしながらも、素直に受け取って口に入れたんで逆に驚いた。
(あ、そうか。こうして給仕されるのが、当たり前ってことか)
とは言え、これ以上面倒を見るつもりはない。男なら、頑張って勝ち取れ――応援って言うより、背中を蹴るような気持ちでそう思い、俺はコロッケへと箸を伸ばした。
※
真白は、会長と俺のデートの邪魔をすると言っていた。刃金さんも、仲の悪い真白と手を組んだって言うことは同じ目的なんだろう。
それは、確かに成功していて――昼飯の後、連れて行かれたお化け屋敷(と言うか、ゾンビ館)では刃金さんと一緒だったし、次のジェットコースターでは緑野と一緒に乗った。まあ、会長はどっちも真白と一緒だったんで良かったんだろうけど。
(帰る時間があるから、乗るとしたらあと一個かな)
俺としては疲れたから、ジュースでも飲んでのんびりでも良いけど――そう思ってたら、後ろから不意に腕を掴まれた。
「乗るぞ」
「…………は?」
返事と言うか、間の抜けた声を上げた俺に構わず会長は歩き出した。
一瞬、遅れて気づいた真白達には構わず、観覧車に乗り込んだかと思ったら、いきなり迫ってきて――そして、冒頭の展開に戻る。
「……真白」
「出灰は俺と、アレに乗るんだ!」
会長に名前を呼ばれた真白が、ビシッと指差したのはコーヒーカップだった。って随分、可愛らしいチョイスだな。
「デートではアレに乗ってはしゃぐと、好感度アップなんだろ?」
「……真白、それはどこ情報だ?」
しかも、相手に言っちゃうとか。そうツッコミを入れた俺は、悪くないと思う。まあ、胸を張ってる真白を可愛いとも思うけど。
「それは、女がやったらだろう? ってか、お前こそ抜け駆けするな」
そんな俺と真白のやり取りに、刃金さんが乱入してきた。
背後から俺に抱き着いてきて言う刃金さんを、真白がキッと睨みつける。
「紅河と一緒にすんな! オレはちゃんと、出灰と約束したんだからなっ」
「そうかよ、じゃあ……次はおれと、オバケ屋敷行こうぜ。出灰」
「なっ!?」
俺を腕の中に収めたまま、耳元でわざわざ甘く囁いてくる刃金さんに、俺はやれやれとため息をついた。本当、この人ってオイシイところかっ攫うの上手い。
(そして真白は、刃金さんとだと口で負けちゃうよな)
性格なのか、本人はあまり言わないけど育ちの良さなのか――うん、両方だな。王道転校生だもんな。
「って言うか、一緒に乗ればいいんじゃないですか?」
「「……えっ?」」
「コーヒーカップ、四人まで乗れますよね?」
そこまで言って、俺は空気と化していた会長を思い出した。どこに行こうとしていたかは解らないけど、この後でも良いのか聞こうとしたら。
「……そうだな、行くぞお前ら」
「「「はっ?」」」
今度は、不覚にも俺まで声を上げてしまった。えっ、乗るの? 会長も、このファンシーなコーヒーカップに乗るのか?
「他にも乗るんなら、これの後に飯食うぞ。どの乗り物も結構、並ぶからな」
「……はあ」
「紅河……ああ、もうっ」
「……チッ」
到着後同様、話を進めて俺を連れて行く会長に真白と刃金さんがついて来た。
(あ、そっか)
そこで俺は、今更ながらに気がついた。
(会長、真白の気を引きたくて俺にちょっかいかけてるんだ)
『将を得んとせば馬を射よ』ってことだな。うん、それなら今までの意味不明な行動もスッキリする。
(俺様が、まさかの遊園地好きかって勘違いしそうになったぞ……まあ、それはそれで面白いけど)
心の中で呟きながら、俺はコーヒーカップに乗った。そんな俺を挟んで刃金さんと真白、そして真白の隣には会長が座る。
「うわっ、スゲェ回るな!」
「……お前が、回してるからだろうが」
「…………」
嬉々としてコーヒーカップを回す真白。そんな真白にツッコミを入れつつ俺の肩を抱く刃金さんと、無言(真白の可愛さをかみ締めてるのか?)の会長。
「りぃ君、こっち向いてーっ」
「谷様ー!」
「美形サンド、萌えっ」
「……こっ、ちも」
(コラコラ、お前ら。遊園地に来て、何をやってるんだ)
そして、何故かスマホで俺達を撮り出したかー君達と一茶達に、俺は心の中でツッコミを入れた――いつの間にか馴染んでる緑野が、ちょっとだけ心配になった。
※
コーヒーカップに乗った後、俺達は早めの昼を食べることになった。
……なったけど。
結果的に、ほとんど食べられなかったのは――頑張って多めには作ったけど思った通りかー君達や双子、あと副会長までが乱入してきたからだ。
ちなみに、双子と副会長の相手はいない。空青(ピンを右側につけてる)曰く「これ以上、分け前を減らされたくないから別行動♪」だそうだ
(相手さん達、よく訓練されてるよな……それにしてもこいつら、よく食うな)
「出灰! この豚肉のアスパラ巻、美味いぞっ」
「いつでも嫁に来られるな」
「安来さん、相変わらず攻め攻めですね!」
「……コロッ、ケ、里芋?」
「この海老とブロッコリーのサラダ、美味しいよりぃ君♪」
「谷様、料理もお上手なんですね!」
「「唐揚げ、美味しいねっ」」
「よく、これだけ茶色いおかずばかり作れますね……まあ、何とか食べられますけど」
口々に言いながら食べていく生徒会の面々の中、会長も俺同様にほとんど食べていない。
文句を言いつつも食べている副会長より食べてないって、俺様どこ行った?
(一人っ子で、こう言う争奪戦に慣れてないのか?)
あくまでもきっかけだが、そもそも弁当を作ったのは会長が言ったからだ。
流石に可哀想なので、玉子焼きと唐揚げを一個ずつ取って差し出してやると――ちょっと驚いた顔をしながらも、素直に受け取って口に入れたんで逆に驚いた。
(あ、そうか。こうして給仕されるのが、当たり前ってことか)
とは言え、これ以上面倒を見るつもりはない。男なら、頑張って勝ち取れ――応援って言うより、背中を蹴るような気持ちでそう思い、俺はコロッケへと箸を伸ばした。
※
真白は、会長と俺のデートの邪魔をすると言っていた。刃金さんも、仲の悪い真白と手を組んだって言うことは同じ目的なんだろう。
それは、確かに成功していて――昼飯の後、連れて行かれたお化け屋敷(と言うか、ゾンビ館)では刃金さんと一緒だったし、次のジェットコースターでは緑野と一緒に乗った。まあ、会長はどっちも真白と一緒だったんで良かったんだろうけど。
(帰る時間があるから、乗るとしたらあと一個かな)
俺としては疲れたから、ジュースでも飲んでのんびりでも良いけど――そう思ってたら、後ろから不意に腕を掴まれた。
「乗るぞ」
「…………は?」
返事と言うか、間の抜けた声を上げた俺に構わず会長は歩き出した。
一瞬、遅れて気づいた真白達には構わず、観覧車に乗り込んだかと思ったら、いきなり迫ってきて――そして、冒頭の展開に戻る。
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