灰かぶり君

渡里あずま

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選挙、始めました1

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「どうして、やって貰っちゃいけないんですか?」
「……えっ?」
「皆さん、僕の為に喜んで働いてくれるんですよ? ランキングもですけど、皆さんからの好意ですから……断ったら、逆に申し訳ないです」

 柔らかそうな黒髪と、大きな目。
 可愛い顔に、不思議そうな表情を浮かべる相手――赤嶺朱春に、俺は思った。
(本気……みたいだな。坊ちゃん思考……いや、いっそお姫様か?)
 どうして、赤嶺とこうして話すことになったのか――話は、少し前に遡る。



 体育祭後、かー君達と俺は選挙に立候補した。かー君達はともかく、俺は面倒(主に、親衛隊からの制裁)を覚悟してたけど、不思議と睨まれたり舌打ちされるくらいで済んでいた。

「体育祭の時に、あんたが働けることはアピール出来たからね。下手な奴が近づくよりはって、見守りモードよ」
「……はぁ」

 紅河さんの親衛隊長からの説明に、俺はそう頷くしかなかった。見守るにしては対応がキツいが、まあ、乙女心――いや、チワワ心は複雑だってことにしよう。

「隊長、ポスター出来ました」
「お疲れ様……うん、面白みはないけど、真面目な感じが出てるわね」
「じゃあぼく達、貼って来ます!」

 他のチワワ達はそんな俺達、って言うか隊長にパソコンで作った俺の選挙用ポスターを見せてきた。
 ちなみに、これは第二弾。第一弾は、俺の写真に犬耳をつけていて隊長に却下された――隊長、ありがとうございます。そう言うアピールは、双子達(あいつらは猫耳で写ってるけど)だけで十分です。
 そして隊長から了承を貰うと、チワワ達は各階の伝言板へとポスターを貼りに行った。働かせて申し訳ないと思うけど、チワワ達からはそもそもこの気づかいをやめるよう言われてる。

「親衛隊としては、むしろあんたの為に働けるのが嬉しいんだから」

 そう、初めての選挙ってことでこう言うポスター等の選挙活動は、クラスか親衛隊で支援することになった。
 ……なったけど、現生徒会メンバーは全員、俺と同じSクラスで。
 かー君と双子はそれぞれ親衛隊に頼むことにしたけど、緑野は(まあ、予想はしていたが)それを拒んだ。で、Sクラスの面々はこれ幸いと緑野のサポートに乗り出し、結果、俺はスルーされた訳だ。
 そんな俺を、兼任してるからとチワワ達がサポートしてくれることになった。
 ……個人的には、未だ立候補してくれない中夜の気が変わってくれて、俺落選ってならないかなって思うんだけど。

(とは言え、庶務に立候補した赤嶺入れてちょうど定員だからな)

 このまま当選したら、体育祭の時みたいに赤嶺の分も俺が雑用するんだろうか――そう思いつつ寮に戻ろうとしたら、当の赤嶺と廊下でバッタリ鉢合わせした。

「初めまして、谷先輩」
「……初めまして」

 笑顔で挨拶してきた赤嶺に、俺は違和感を感じながらも無難に返した。いや、まあ、選挙用ポスターで顔は知ってたけどな。

「お会い出来て、ちょうど良かった。僕、谷先輩とお話したかったんです」
「話、ですか?」

 そして、話しながら俺は違和感の理由に気づいた――こいつ、俺に普通に敬語使ってんだ。
(腹黒、いや、実は良い奴? けど、自分の仕事を取り巻きにやらせるからな)
 今一つ、相手のキャラが掴めずにいると赤嶺は笑顔のまま俺を食堂へと誘った。
 そして話とやらが気になって承諾した俺に、それぞれの飲み物が届いたところで赤嶺は口を開いた。
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