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指輪狂想曲1
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刃金×出灰。本編完結後の話ですので、未読の方はご注意下さい。
※
初めてデートをした埠頭に今日、おれは出灰を連れてきた。最初から予定に入っていたんで、今日の出灰は準備させていたマフラーに手袋、帽子でモコモコしていて可愛らしい。
そしておれは出灰に、小さな箱を差し出した。
「ありがとうございます……開けて良いですか?」
律義な問いかけに頷くと、出灰は手袋を外してリボンと包み紙をそっとはがし蓋を開けた。
それから、中身を――シンプルなプラチナの指輪を見て、いつも通りに固まって無言になった。
出灰は基本、あまり喜怒哀楽を見せない。だが驚くとこういうリアクションになるのである意味、解りやすい。
(……ついに、ここまで来た)
そんな反応を嬉しく思いながら、おれは内心で拳を握り、ここまで――出灰の十八歳の誕生日までの、長い道のりを思い返していた。
※
出灰は基本、自分のことをあれこれ言わない。だが一方で、こちらから聞けばある程度は答えてくれる。
「誕生日ですか? 二月十七日です」
そんな訳で、おれは早々に出灰の誕生日を聞き出していた。
聞いた当初は、単純に誕生日を祝おうと思っていたし実際、卒業前には一緒に飯やケーキを食った。あいにく、関東圏では珍しい雪が降ってしまったんで、それ以上は出来なかったが――今では、それもありだったと思う。
(キスも指輪も、男としては一大イベントだからな)
そんな訳でおれは来年二月、十八歳になった出灰に指輪を送ろうと思った。
指のサイズは把握済だ。そして、買いたい指輪も見つけたんだが――問題は、おれ達二人の指輪を買う費用である。
「親からの金じゃなく、自分で稼いだ金でってかぁ……健気だね、キング!」
「……内藤。名前で呼べって、言ってるだろうが」
にこにこ、にこにこ。
大学での授業の後、ファーストフード店に呼び出した内藤の言葉に、おれは何度目か解らない制止をかけた。
高校の時ならともかく、一般社会で呼ばれるのには抵抗がある。
「それなら、前みたいにバイト紹介するよ! キングだったら、またすぐ稼げるって……」
「……気持ちはありがたいんだが。前のバイトは、やめておく」
ため息混じりに答えたのは、内藤がキング呼びをやめないからではなく、バイトの紹介先についてだ。
前にバイクを買う時に頼み、確かに稼げるのは解るのだが。
「つき合っている相手がいるのに、ホストクラブで働く訳ないだろうが」
「えー? クイーンって、その辺気にしなさそうじゃない?」
「『おれ』が気にするんだ」
そう、出灰なら仕事は仕事と割り切るだろうが――おれは、本命がいるのに女を相手になんてしたくない。まあ、元々前のバイトの時も惚れさせて貢がせる一方だったが。
ちなみに、内藤の家は芸能プロダクションをやっているが、同時にホストクラブやキャバクラを経営している。何でも父親が、かつてのカリスマホストなんだそうだ。
「本当、本気なんだねぇキング」
「……悪いか」
「いーや? むしろ、クイーンには感謝してる」
強いだけじゃなく、キングは優しくて面白くなったからね。
そう言うと、青いままの頭を傾げてにっこりと内藤は笑った。
「元々、あった資質だとは思うけど。クイーンと会って、表面化したって言うか……ねぇ? ホストが駄目ならモデルとかやらない? 俺、マネージャーやるから」
「却下」
「わーっ、解った! 見た目で売るのはやめるからっ」
稼げそうだが、気の乗らない話ばかり紹介されるのに、おれはため息をついて席を立とうとした。
と、おれの本気を悟ったのか内藤が慌てて止めてくる。
「……じゃあ、こう言うのはどう?」
そして、座り直したおれに内藤が提案してきたのは――派手に一気には稼げないが、ようやく首を縦に振れる仕事だった。
※
初めてデートをした埠頭に今日、おれは出灰を連れてきた。最初から予定に入っていたんで、今日の出灰は準備させていたマフラーに手袋、帽子でモコモコしていて可愛らしい。
そしておれは出灰に、小さな箱を差し出した。
「ありがとうございます……開けて良いですか?」
律義な問いかけに頷くと、出灰は手袋を外してリボンと包み紙をそっとはがし蓋を開けた。
それから、中身を――シンプルなプラチナの指輪を見て、いつも通りに固まって無言になった。
出灰は基本、あまり喜怒哀楽を見せない。だが驚くとこういうリアクションになるのである意味、解りやすい。
(……ついに、ここまで来た)
そんな反応を嬉しく思いながら、おれは内心で拳を握り、ここまで――出灰の十八歳の誕生日までの、長い道のりを思い返していた。
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出灰は基本、自分のことをあれこれ言わない。だが一方で、こちらから聞けばある程度は答えてくれる。
「誕生日ですか? 二月十七日です」
そんな訳で、おれは早々に出灰の誕生日を聞き出していた。
聞いた当初は、単純に誕生日を祝おうと思っていたし実際、卒業前には一緒に飯やケーキを食った。あいにく、関東圏では珍しい雪が降ってしまったんで、それ以上は出来なかったが――今では、それもありだったと思う。
(キスも指輪も、男としては一大イベントだからな)
そんな訳でおれは来年二月、十八歳になった出灰に指輪を送ろうと思った。
指のサイズは把握済だ。そして、買いたい指輪も見つけたんだが――問題は、おれ達二人の指輪を買う費用である。
「親からの金じゃなく、自分で稼いだ金でってかぁ……健気だね、キング!」
「……内藤。名前で呼べって、言ってるだろうが」
にこにこ、にこにこ。
大学での授業の後、ファーストフード店に呼び出した内藤の言葉に、おれは何度目か解らない制止をかけた。
高校の時ならともかく、一般社会で呼ばれるのには抵抗がある。
「それなら、前みたいにバイト紹介するよ! キングだったら、またすぐ稼げるって……」
「……気持ちはありがたいんだが。前のバイトは、やめておく」
ため息混じりに答えたのは、内藤がキング呼びをやめないからではなく、バイトの紹介先についてだ。
前にバイクを買う時に頼み、確かに稼げるのは解るのだが。
「つき合っている相手がいるのに、ホストクラブで働く訳ないだろうが」
「えー? クイーンって、その辺気にしなさそうじゃない?」
「『おれ』が気にするんだ」
そう、出灰なら仕事は仕事と割り切るだろうが――おれは、本命がいるのに女を相手になんてしたくない。まあ、元々前のバイトの時も惚れさせて貢がせる一方だったが。
ちなみに、内藤の家は芸能プロダクションをやっているが、同時にホストクラブやキャバクラを経営している。何でも父親が、かつてのカリスマホストなんだそうだ。
「本当、本気なんだねぇキング」
「……悪いか」
「いーや? むしろ、クイーンには感謝してる」
強いだけじゃなく、キングは優しくて面白くなったからね。
そう言うと、青いままの頭を傾げてにっこりと内藤は笑った。
「元々、あった資質だとは思うけど。クイーンと会って、表面化したって言うか……ねぇ? ホストが駄目ならモデルとかやらない? 俺、マネージャーやるから」
「却下」
「わーっ、解った! 見た目で売るのはやめるからっ」
稼げそうだが、気の乗らない話ばかり紹介されるのに、おれはため息をついて席を立とうとした。
と、おれの本気を悟ったのか内藤が慌てて止めてくる。
「……じゃあ、こう言うのはどう?」
そして、座り直したおれに内藤が提案してきたのは――派手に一気には稼げないが、ようやく首を縦に振れる仕事だった。
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