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酒臭い息が鼻腔を擽り、俺は思わず眉を顰めた。
目の前で蕩けた視線を投げる友人────笹原は熱った掌で俺の肩を掴み、ベッドに押し倒す。
同時にカタン、と何かが落ちる音が聞こえた。
顔を少し上げて、視線を床に遣る。
どうやら笹原が机に足をぶつけ、その衝撃で空になったビール缶が床に転がったらしい。
ほんの少しだけ残っていたビールがフローリングを汚す光景を目の当たりにし、俺は舌打ちをした。
「笹原。それ、あとで綺麗に掃除しろよ」
「ん? あぁ」
話を聞いているのか、いないのか。彼は据わった目のまま、俺を見下ろした。
逆光になった彼の顔を見上げ、ため息を漏らす。
どっぷりと闇に包まれた窓の外へ視線を投げ、今日も泊まりコースだなコイツは、と思った矢先、性急にズボンを引き摺り下ろされる。
────ムードもへったくれもないな。
成り行きで始まった関係に、ムードなど期待していない。
それでも、この淡白さには辟易していた。
「……自分で脱ぐから」
そう呟き、ズボンと下着を床に放り投げた俺は、うつ伏せで寝そべる。
「ローションは?」と呂律の回らない声が鼓膜に届き、若干苛立ちが芽生える。
「いつものところにある。その棚の二番目。何回、この部屋でヤってんだよ。いい加減覚えろ」
「ごめん、ごめん」
悪気が無さそうな腑抜けた笑顔を向けた彼は、棚からローションの入ったボトルを取り出し、臀部へぶちまける。
「つめてぇな、馬鹿!」と声を静めて怒鳴ると、彼がやけに大きな声で笑った。
俺は瞬発的に彼を睨む。
「声! デカい。この家、壁が薄いってあれほど言っただろ。抑えろ」
「分かったぁ」と頷いた彼が果たして、本当に話の内容を理解しているかは謎だ。
俺が借りているマンションは、壁が薄い。
家賃の安さに惹かれここへ越してきたが、その貧乏性な部分が俺を苦しめるとは。そして、彼との関係性が俺を神経質にさせるとは。
部屋を借りた当時の俺は、そんなこと微塵も考えていなかっただろう。
それに、時刻は深夜。皆が眠りについている頃だ。
────聞こえてないといいけど。
俺は一抹の不安を抱えながら、目を閉じる。
「うぅっ」
ぬるりと入り込んできた指先に、俺は背中を反らせた。
この行為に慣れきった笹原の指先は、俺の良いところを的確に突く。
其処に触れられた途端、全身に痺れが走った。
声を漏らさぬよう、ベッドシーツを噛み締める。
瞬間、押しつぶすように前立腺を触られ、思わず悲鳴をあげた。
「伊武ぅ。声、デカいぞー」
先ほど叱った俺への仕返しと言わんばかりの仕打ちだ。彼が背後で笑う。
「遊んでないで、さっさと挿れろ」と吐いた言葉は震えており、自分が情けなくなった。
「へぇへぇ」と気の抜けた声が背後から落ち、次の瞬間、指ではないものが押し付けられた。
────この瞬間は、いつまで経っても慣れない。
入り込んできたソレに、思わず腰が引ける。
だが、笹原は強い力で俺を引き寄せ、奥へ入り込んできた。
近くにあった枕を手繰り寄せ、抱きかかえる。喘ぎが綿に染み込んでいく。
「っ、うぅ、ン、ぐっ」
「あはは、声、抑えてるねぇ」
馬鹿にしたような口調で言われ、何か言い返してやろうと顔だけを後ろに向ける。
しかし、勢いよく腰を打ちつけられ、奥を抉られた俺は頭が真っ白になった。
「奥、ヤダっ!やだ……アッ、ん、うぅ……!」
「なぁ、声デカいって」
笹原の体重が全身に乗る。背中に感じる彼の汗と体温、そして耳を掠める低くて愉快そうな声に思わず爆ぜた。
痙攣する俺を見て、彼が背後で笑った。
そのまま、動きを緩めることなく突き立てられ頭が真っ白になる。
────声、抑えなきゃ。
震える手で口を塞ぎ、俺はこの時間が過ぎるのを待った。
目の前で蕩けた視線を投げる友人────笹原は熱った掌で俺の肩を掴み、ベッドに押し倒す。
同時にカタン、と何かが落ちる音が聞こえた。
顔を少し上げて、視線を床に遣る。
どうやら笹原が机に足をぶつけ、その衝撃で空になったビール缶が床に転がったらしい。
ほんの少しだけ残っていたビールがフローリングを汚す光景を目の当たりにし、俺は舌打ちをした。
「笹原。それ、あとで綺麗に掃除しろよ」
「ん? あぁ」
話を聞いているのか、いないのか。彼は据わった目のまま、俺を見下ろした。
逆光になった彼の顔を見上げ、ため息を漏らす。
どっぷりと闇に包まれた窓の外へ視線を投げ、今日も泊まりコースだなコイツは、と思った矢先、性急にズボンを引き摺り下ろされる。
────ムードもへったくれもないな。
成り行きで始まった関係に、ムードなど期待していない。
それでも、この淡白さには辟易していた。
「……自分で脱ぐから」
そう呟き、ズボンと下着を床に放り投げた俺は、うつ伏せで寝そべる。
「ローションは?」と呂律の回らない声が鼓膜に届き、若干苛立ちが芽生える。
「いつものところにある。その棚の二番目。何回、この部屋でヤってんだよ。いい加減覚えろ」
「ごめん、ごめん」
悪気が無さそうな腑抜けた笑顔を向けた彼は、棚からローションの入ったボトルを取り出し、臀部へぶちまける。
「つめてぇな、馬鹿!」と声を静めて怒鳴ると、彼がやけに大きな声で笑った。
俺は瞬発的に彼を睨む。
「声! デカい。この家、壁が薄いってあれほど言っただろ。抑えろ」
「分かったぁ」と頷いた彼が果たして、本当に話の内容を理解しているかは謎だ。
俺が借りているマンションは、壁が薄い。
家賃の安さに惹かれここへ越してきたが、その貧乏性な部分が俺を苦しめるとは。そして、彼との関係性が俺を神経質にさせるとは。
部屋を借りた当時の俺は、そんなこと微塵も考えていなかっただろう。
それに、時刻は深夜。皆が眠りについている頃だ。
────聞こえてないといいけど。
俺は一抹の不安を抱えながら、目を閉じる。
「うぅっ」
ぬるりと入り込んできた指先に、俺は背中を反らせた。
この行為に慣れきった笹原の指先は、俺の良いところを的確に突く。
其処に触れられた途端、全身に痺れが走った。
声を漏らさぬよう、ベッドシーツを噛み締める。
瞬間、押しつぶすように前立腺を触られ、思わず悲鳴をあげた。
「伊武ぅ。声、デカいぞー」
先ほど叱った俺への仕返しと言わんばかりの仕打ちだ。彼が背後で笑う。
「遊んでないで、さっさと挿れろ」と吐いた言葉は震えており、自分が情けなくなった。
「へぇへぇ」と気の抜けた声が背後から落ち、次の瞬間、指ではないものが押し付けられた。
────この瞬間は、いつまで経っても慣れない。
入り込んできたソレに、思わず腰が引ける。
だが、笹原は強い力で俺を引き寄せ、奥へ入り込んできた。
近くにあった枕を手繰り寄せ、抱きかかえる。喘ぎが綿に染み込んでいく。
「っ、うぅ、ン、ぐっ」
「あはは、声、抑えてるねぇ」
馬鹿にしたような口調で言われ、何か言い返してやろうと顔だけを後ろに向ける。
しかし、勢いよく腰を打ちつけられ、奥を抉られた俺は頭が真っ白になった。
「奥、ヤダっ!やだ……アッ、ん、うぅ……!」
「なぁ、声デカいって」
笹原の体重が全身に乗る。背中に感じる彼の汗と体温、そして耳を掠める低くて愉快そうな声に思わず爆ぜた。
痙攣する俺を見て、彼が背後で笑った。
そのまま、動きを緩めることなく突き立てられ頭が真っ白になる。
────声、抑えなきゃ。
震える手で口を塞ぎ、俺はこの時間が過ぎるのを待った。
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