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「なんだこれ」
俺は開いた魔導書に書かれた文字を見て、顔を顰めた。そこには「魅了」と記載されている。
そんな魔法あったかな、と唸る。記憶を呼び起こしてみても、知り合いの魔術師が使っているところを見たことがない。
もしかして、禁忌魔法なのか? と思い、ページを捲る手を止める。
書かれている内容を読んでみたが、危なっかしい魔法には感じなかった。
効果は、文字通り「魅了」。相手を精神的に惹きつけ、こちらへ好意や愛情を持たせるものだ。
「魅了」にかかった魔物はその間、無防備になる。魔物が惚けている隙を突き、仕留める魔法らしい。
────あんまり使えない魔法だな。
「魅了」で無駄な魔力を使うより、攻撃魔法を打ち込んだ方がいいに決まっている。
だからこそ、だれも習得しないのだろう。この魔法を使っている魔術師を見かけなくて当然だ、と思いページをめくろうとした。
そこで、手が止まる。
────これ……。
ふと、ある考えが浮かぶ。
俺は、思わず口角を緩ませていた。
◇
「今度の依頼、隣町まで行かなきゃいけないらしいぜ。本当、面倒くせぇよな」
親友であるシルリルが肩をすくめた。その度に、背負っている大剣が揺れる。
銀髪が靡き、太陽光でキラキラと輝く。
「な、本当、面倒くせぇよな」。俺は彼の表情を眺め、小さく頷いた。
シルリルは、同じギルドに在籍している幼馴染だ。決して大きいとは言えない体格で大剣を振る舞う彼は、同じギルドメンバーとして誇らしい存在である。
「そういえば、ギルド受付嬢のセツナ、辞めるらしいぜ。なんか、色々仕事押し付けられてたっぽかったもんなぁ」
シルリルのどうでもいい世間話を聞きながら、俺たちはいつもの稽古場に来ていた。(稽古場と言っても、人気がない川のほとりだ。終わった後は汗を流せるから、ここを稽古場にしている)
俺は、いつ彼に「あのこと」を切り出そうかと考え、落ち着けずにいた。
ソワソワした俺を気にしていないシルリルは大剣を下ろし、服を脱ぎ始める。いつも通りの軽装になった彼は、目を細めて俺へ視線を投げた。
「どうした? 今日は稽古サボって、鹿でも狩りに行くか?」
「いや、あぁ……ちょっと、話したいことがあるんだが、いいか?」
俺も服を脱ぎ、軽装になった。ぐるりと首を動かし、目を泳がせる。
「俺さ、ここ最近、魔法も学ぶようになっただろ?」
「あぁ、そうだな。タギルはすげぇよな、剣も魔法も使えてさ」
シルリルは「俺、全く使えないから羨ましいよ。手から炎とか出してみてぇ」と、白い歯を見せる。
そんな彼を見て、ごくりと唾液を嚥下した。
「……で、ちょっと、学んだ魔術を、試したくてさ」
「は? 俺に? ちょっと、待てよ。避け切れるかなぁ」
シルリルは浮ついた声を上げ、軽やかにステップを踏んだ。
さぁ、来い。そう言いたげに俺へ構えのポーズを取る。
「あ、いや、学んだのは攻撃魔法じゃないんだ」
「なんだよ。つまんね」
シルリルは肩をすくめて構えのポーズを解いた。「で? どんな魔法だよ? 花を咲かせるとか?」と馬鹿にしたような笑みを浮かべるシルリル。
そんな顔の前で、手を翳した。
「……こんなやつ」
シルリルが口を開く前に、魔法をかける。
俺は、魔法を使えるが得意な方ではない。故に、本当に習得できたか、そしてその魔法が使えるか、わからなかった。
一か八かを、この瞬間にかけた。
「……ッ!」
魔法をかけた途端、シルリルの目がとろんとした。明らかにいつもの彼とは違う目つきと、口元の緩さに心臓が跳ねた。
「シ……シルリル……?」
おずおずと、俺は彼へ問うた。シルリルはぼんやりとした目のまま、俺をジッと見つめている。
その顔つきが幼くもあり、妖艶だった。
下半身が重くなり、ゾクゾクとした何かが背中を駆ける。
彼へ手を伸ばす前に、シルリルが俺の首へ腕を絡ませた。そのまま、唇を奪われる。
「んっ……」
「……ッ」
温かく、そして湿った唇。漏れた吐息に、脳が破裂しそうになった。
自分でもわかるほど、勃起している。
ジンジンと熱を孕んだそこに、体を密着させたシルリルの皮膚が触れる。
俺は咄嗟にシルリルの肩を掴み、離した。力任せで引き剥がし、シルリルと見つめ合う。
潤んだ瞳と、濡れた唇。彼の白い頬が、今まで見た事ないぐらいに朱に染まっている。
「シ、シルリ……」
言い終える前に、再びシルリルが抱きつき、唇を吸った。
俺は耐えきれなくなり、彼の口内に舌を捩じ込む。音を立てて唾液を飲みながら、舌を絡めた。
上顎から舌下まで。くまなく彼の口を俺の舌で占領する。
シルリルは嫌な顔を一つもせず、俺の唾液を必死に飲み下している。
ジンジンと痛む脳と下半身を押さえ込み、俺はシルリルの背中に手を回して、強く抱きしめた。
俺は開いた魔導書に書かれた文字を見て、顔を顰めた。そこには「魅了」と記載されている。
そんな魔法あったかな、と唸る。記憶を呼び起こしてみても、知り合いの魔術師が使っているところを見たことがない。
もしかして、禁忌魔法なのか? と思い、ページを捲る手を止める。
書かれている内容を読んでみたが、危なっかしい魔法には感じなかった。
効果は、文字通り「魅了」。相手を精神的に惹きつけ、こちらへ好意や愛情を持たせるものだ。
「魅了」にかかった魔物はその間、無防備になる。魔物が惚けている隙を突き、仕留める魔法らしい。
────あんまり使えない魔法だな。
「魅了」で無駄な魔力を使うより、攻撃魔法を打ち込んだ方がいいに決まっている。
だからこそ、だれも習得しないのだろう。この魔法を使っている魔術師を見かけなくて当然だ、と思いページをめくろうとした。
そこで、手が止まる。
────これ……。
ふと、ある考えが浮かぶ。
俺は、思わず口角を緩ませていた。
◇
「今度の依頼、隣町まで行かなきゃいけないらしいぜ。本当、面倒くせぇよな」
親友であるシルリルが肩をすくめた。その度に、背負っている大剣が揺れる。
銀髪が靡き、太陽光でキラキラと輝く。
「な、本当、面倒くせぇよな」。俺は彼の表情を眺め、小さく頷いた。
シルリルは、同じギルドに在籍している幼馴染だ。決して大きいとは言えない体格で大剣を振る舞う彼は、同じギルドメンバーとして誇らしい存在である。
「そういえば、ギルド受付嬢のセツナ、辞めるらしいぜ。なんか、色々仕事押し付けられてたっぽかったもんなぁ」
シルリルのどうでもいい世間話を聞きながら、俺たちはいつもの稽古場に来ていた。(稽古場と言っても、人気がない川のほとりだ。終わった後は汗を流せるから、ここを稽古場にしている)
俺は、いつ彼に「あのこと」を切り出そうかと考え、落ち着けずにいた。
ソワソワした俺を気にしていないシルリルは大剣を下ろし、服を脱ぎ始める。いつも通りの軽装になった彼は、目を細めて俺へ視線を投げた。
「どうした? 今日は稽古サボって、鹿でも狩りに行くか?」
「いや、あぁ……ちょっと、話したいことがあるんだが、いいか?」
俺も服を脱ぎ、軽装になった。ぐるりと首を動かし、目を泳がせる。
「俺さ、ここ最近、魔法も学ぶようになっただろ?」
「あぁ、そうだな。タギルはすげぇよな、剣も魔法も使えてさ」
シルリルは「俺、全く使えないから羨ましいよ。手から炎とか出してみてぇ」と、白い歯を見せる。
そんな彼を見て、ごくりと唾液を嚥下した。
「……で、ちょっと、学んだ魔術を、試したくてさ」
「は? 俺に? ちょっと、待てよ。避け切れるかなぁ」
シルリルは浮ついた声を上げ、軽やかにステップを踏んだ。
さぁ、来い。そう言いたげに俺へ構えのポーズを取る。
「あ、いや、学んだのは攻撃魔法じゃないんだ」
「なんだよ。つまんね」
シルリルは肩をすくめて構えのポーズを解いた。「で? どんな魔法だよ? 花を咲かせるとか?」と馬鹿にしたような笑みを浮かべるシルリル。
そんな顔の前で、手を翳した。
「……こんなやつ」
シルリルが口を開く前に、魔法をかける。
俺は、魔法を使えるが得意な方ではない。故に、本当に習得できたか、そしてその魔法が使えるか、わからなかった。
一か八かを、この瞬間にかけた。
「……ッ!」
魔法をかけた途端、シルリルの目がとろんとした。明らかにいつもの彼とは違う目つきと、口元の緩さに心臓が跳ねた。
「シ……シルリル……?」
おずおずと、俺は彼へ問うた。シルリルはぼんやりとした目のまま、俺をジッと見つめている。
その顔つきが幼くもあり、妖艶だった。
下半身が重くなり、ゾクゾクとした何かが背中を駆ける。
彼へ手を伸ばす前に、シルリルが俺の首へ腕を絡ませた。そのまま、唇を奪われる。
「んっ……」
「……ッ」
温かく、そして湿った唇。漏れた吐息に、脳が破裂しそうになった。
自分でもわかるほど、勃起している。
ジンジンと熱を孕んだそこに、体を密着させたシルリルの皮膚が触れる。
俺は咄嗟にシルリルの肩を掴み、離した。力任せで引き剥がし、シルリルと見つめ合う。
潤んだ瞳と、濡れた唇。彼の白い頬が、今まで見た事ないぐらいに朱に染まっている。
「シ、シルリ……」
言い終える前に、再びシルリルが抱きつき、唇を吸った。
俺は耐えきれなくなり、彼の口内に舌を捩じ込む。音を立てて唾液を飲みながら、舌を絡めた。
上顎から舌下まで。くまなく彼の口を俺の舌で占領する。
シルリルは嫌な顔を一つもせず、俺の唾液を必死に飲み下している。
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