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1話 見知らぬ場所
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「ここは、どこ……?」
ふと気づくと私、上月 衣沙菜は見知らぬ店の中で一人腰かけていた。
窓の外からは「パラパラパラ…」と何かが転がるような音が聞こえてくる。
現状を確認するため辺りを見回すと、どうやらここは喫茶店のようだが、
よく行くチェーン店のそれではなく、昭和のレトロ感が漂う昔風の店だった。
違いとしては、まず椅子からして異なっていた。
椅子と言えば木製や金属製のものが多いが、それは表面がビニールのような、
合皮のような、とにかくよく分からない材質で覆われており、いかにも古めかしい。
テーブルも木目調のおしゃれなものではなく、デザイン性が無視した無骨で
角張った黒いテーブルだった。
テーブルには所々たばこで焼けた跡が残っているし、
禁煙、分煙と騒がれる昨今では考えられないほど、
灰皿に吸い殻が積もっている。
他にも店内に流れる曲が、亡くなった祖父がよく聞いていた
昔のレコード曲だったり、昭和のグラビアアイドルのポスターが
あちこちに張られていたりと、まるで昔にタイムスリップして
しまったような錯覚に陥る。
と言うか、なんで私喫茶店にいるんだろう……。
幼馴染みで一緒に図書委員をやっている直君、
秋山 直樹君と二人で図書館の書庫で
蔵書点検をしていたはずなのに……と思っていると、
突然誰かに声をかけられた。
「享。さっきから何挙動不審な動きをしてるんだ?」
「享……?」
声がした方に目を向けてみると、そこには白髪で髭をたくわえた
70歳くらいの男性がいて、こちらをじっと眺めていた。
近くにその「享」と言う人がいるのかと、辺りを見回してみるが、
店内には私とその男性、恐らく喫茶店のマスターの姿しかなかった。
「何か変な物でも食べたのか? 享って言ったら秋山 享、お前しかいないだろ?」
マスターらしき人物は手に持った食器を机に置いて、
呆れた表情でそう問いかけてくる。
「いえ、私の名前は上月 衣沙菜。
秋山 享って誰の事ですか?」
「いさな? よく分からんが、学校でそう言う遊びが流行ってるのか?
今日お世話になった先生にお礼を言うつもりなら、しっかりしてくれよな」
「うー、話がうまく通じない……。
私は享って人じゃなくて、どこにでもいる普通の女子高生なのに……」
話が通じないもどかしさで、私は落ち込みながらそう呟くと、
マスターらしき人物は大きな声で笑い始めた。
「享が女子高生だって? ははは、享も面白い冗談言うようになったじゃないか」
「面白い冗談って初対面の方にそんな嘘つきませんよ!」
「わしの店の常連である享が初対面とか、何か今日の享はほんと変だぞ?
とにかく自分が女子高生だと言い張るなら、そこの鏡を見てみな」
失礼な事を続けざまに言ってくるので少し傷つきつつも、
とりあえずマスターの言う通り、壁にかけられた鏡に目を向けてみる。
「え? なに……これ……!?」
鏡に写った自分の姿を見て驚きを隠せず、つい声を張り上げてしまった。
鏡に写りこんだ自分の姿が見慣れた私の姿ではなく、
見知らぬ男子生徒だったからだ。
着ている制服からすると、高校生みたいだけど……いったいどうなっているのか。
なぜ私は見知らぬ場所にいて、見知らぬ男子生徒の姿になっているのか。
全く検討がつかず、頭も状況に付いてこないため、
机に突っ伏して自分の記憶を辿ってみる事にした。
ふと気づくと私、上月 衣沙菜は見知らぬ店の中で一人腰かけていた。
窓の外からは「パラパラパラ…」と何かが転がるような音が聞こえてくる。
現状を確認するため辺りを見回すと、どうやらここは喫茶店のようだが、
よく行くチェーン店のそれではなく、昭和のレトロ感が漂う昔風の店だった。
違いとしては、まず椅子からして異なっていた。
椅子と言えば木製や金属製のものが多いが、それは表面がビニールのような、
合皮のような、とにかくよく分からない材質で覆われており、いかにも古めかしい。
テーブルも木目調のおしゃれなものではなく、デザイン性が無視した無骨で
角張った黒いテーブルだった。
テーブルには所々たばこで焼けた跡が残っているし、
禁煙、分煙と騒がれる昨今では考えられないほど、
灰皿に吸い殻が積もっている。
他にも店内に流れる曲が、亡くなった祖父がよく聞いていた
昔のレコード曲だったり、昭和のグラビアアイドルのポスターが
あちこちに張られていたりと、まるで昔にタイムスリップして
しまったような錯覚に陥る。
と言うか、なんで私喫茶店にいるんだろう……。
幼馴染みで一緒に図書委員をやっている直君、
秋山 直樹君と二人で図書館の書庫で
蔵書点検をしていたはずなのに……と思っていると、
突然誰かに声をかけられた。
「享。さっきから何挙動不審な動きをしてるんだ?」
「享……?」
声がした方に目を向けてみると、そこには白髪で髭をたくわえた
70歳くらいの男性がいて、こちらをじっと眺めていた。
近くにその「享」と言う人がいるのかと、辺りを見回してみるが、
店内には私とその男性、恐らく喫茶店のマスターの姿しかなかった。
「何か変な物でも食べたのか? 享って言ったら秋山 享、お前しかいないだろ?」
マスターらしき人物は手に持った食器を机に置いて、
呆れた表情でそう問いかけてくる。
「いえ、私の名前は上月 衣沙菜。
秋山 享って誰の事ですか?」
「いさな? よく分からんが、学校でそう言う遊びが流行ってるのか?
今日お世話になった先生にお礼を言うつもりなら、しっかりしてくれよな」
「うー、話がうまく通じない……。
私は享って人じゃなくて、どこにでもいる普通の女子高生なのに……」
話が通じないもどかしさで、私は落ち込みながらそう呟くと、
マスターらしき人物は大きな声で笑い始めた。
「享が女子高生だって? ははは、享も面白い冗談言うようになったじゃないか」
「面白い冗談って初対面の方にそんな嘘つきませんよ!」
「わしの店の常連である享が初対面とか、何か今日の享はほんと変だぞ?
とにかく自分が女子高生だと言い張るなら、そこの鏡を見てみな」
失礼な事を続けざまに言ってくるので少し傷つきつつも、
とりあえずマスターの言う通り、壁にかけられた鏡に目を向けてみる。
「え? なに……これ……!?」
鏡に写った自分の姿を見て驚きを隠せず、つい声を張り上げてしまった。
鏡に写りこんだ自分の姿が見慣れた私の姿ではなく、
見知らぬ男子生徒だったからだ。
着ている制服からすると、高校生みたいだけど……いったいどうなっているのか。
なぜ私は見知らぬ場所にいて、見知らぬ男子生徒の姿になっているのか。
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机に突っ伏して自分の記憶を辿ってみる事にした。
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