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2話 蔵書点検
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ちょうどその日は図書館の休館日で、各クラスの図書委員が勢揃いし、
担当箇所の蔵書点検をしていた。
蔵書点検と言うのは簡単に言うと、図書館の棚卸しの事で、
無くなっている本が無いかや、破損している本が無いかを調べる事である。
各クラス1名~2名と人数はいるし、本が好きな私としては、
1日中本に囲まれるこの行事は楽しみの1つだったりする。
「ふん、ふふーん~♪」
二人の担当である半地下の書庫に入ると、直君が鼻歌を歌いながら
颯爽とカートを奥へと押し進めていた。
「おお、直君が鼻歌歌ってるなんて珍しいね!
何か良い事でもあったのかな?」
「これからあるかもしれない、って感じかな?」
突如向けられた直君の爽やかスマイルに私のハートは激しく打ち抜かれた。
「おお、何か意味深だ~。
もしかしてこの後私……直君にコクられちゃうのかな!?」
「それではないな」
「ぐふ……悲しいかな、直君に即座に否定されてしまいました……」
「いや、そう言う訳ではないんだが……。
まあともかく、今日は年に1度の蔵書点検だ。
借りた本を返さなかったり、無くしてしまう不届き者が毎年必ずいるので、
それを我々の手で突き止め、取り戻すのが今回のミッションだ!」
そんな風に半地下の書庫で熱く語るのは、同じ2年D組の図書委員で、
私の幼馴染みの秋山 直樹君だ。
私は彼の事を昔から直君と呼んでいるが、直君は趣味で小説を書いたり、
図書館の本はほとんど読んでいたりと無類の本好きだ。
と言うのも直君の父親が推理小説家の秋山 享さんで、小さな頃から
執筆している姿を見てきたし、空いている時間に
一緒に物語を考えたりしていたので、その影響が大きいのだろう。
「やっぱり今度の小説大賞も応募しないのかな?」
「応募はしないよ。俺はあくまで小説は趣味で書いてるだけで、
それで食べていこうとは思ってないからな」
直君は棚から本を手にとり、ページを捲りながらそう言うが、
直君も中学生になるまでは本気で小説家を目指していた。
なぜ「目指していた」なのか。
それは私達が中学校に入った時期に直君の父親が過労で倒れて、
体調を崩しがちになり、入退院を繰り返したのち、
去年病気で亡くなってしまったからだ。
推理小説家として売れっ子だった直君の父親は、今考えると明らかに早いスパンで
新作を書いていたので、体を壊してしまうのは必然だった。
そんな事もあって、当時体調を崩した母親の事も気遣い、
小説家を目指すのはやめたそうだ。
でも直君にばれないように、直君のお母さんにそれとなく話をしたが、
直君には好きな道を歩いて欲しいと思っているようで、
その時の優しく微笑む姿は今でも覚えている。
私としても直君の自由な作風でありながら、
読んだ人の心を温かくしてくれる物語は、
もっと色々な人に読んでもらいたいと思っている。
「衣沙菜、また余計な事考えてるだろう?」
「え!? ううん、この本の虫食いは酷いから、
先生に報告しないといけないなーって考えてただけだよ?」
また顔に出てたかなと内心焦りながらも、手に持っていた本を広げて直君に見せる。
「そんな慌てて言うと余計怪しいぞ。
まあクラスメイトに見せるくらいなら好きにやってくれれば良いよ。
ただ勝手に賞に出すとかは許さないからな」
「わ、分かった……。そこは遵守させて頂きます……」
やっぱり考えている事がバレバレだったか……。
ワタワタした顔を見られるのが恥ずかしいので、
私はすぐさま虫食いの本をカートに置き、直君とは逆方向に顔を向けた。
担当箇所の蔵書点検をしていた。
蔵書点検と言うのは簡単に言うと、図書館の棚卸しの事で、
無くなっている本が無いかや、破損している本が無いかを調べる事である。
各クラス1名~2名と人数はいるし、本が好きな私としては、
1日中本に囲まれるこの行事は楽しみの1つだったりする。
「ふん、ふふーん~♪」
二人の担当である半地下の書庫に入ると、直君が鼻歌を歌いながら
颯爽とカートを奥へと押し進めていた。
「おお、直君が鼻歌歌ってるなんて珍しいね!
何か良い事でもあったのかな?」
「これからあるかもしれない、って感じかな?」
突如向けられた直君の爽やかスマイルに私のハートは激しく打ち抜かれた。
「おお、何か意味深だ~。
もしかしてこの後私……直君にコクられちゃうのかな!?」
「それではないな」
「ぐふ……悲しいかな、直君に即座に否定されてしまいました……」
「いや、そう言う訳ではないんだが……。
まあともかく、今日は年に1度の蔵書点検だ。
借りた本を返さなかったり、無くしてしまう不届き者が毎年必ずいるので、
それを我々の手で突き止め、取り戻すのが今回のミッションだ!」
そんな風に半地下の書庫で熱く語るのは、同じ2年D組の図書委員で、
私の幼馴染みの秋山 直樹君だ。
私は彼の事を昔から直君と呼んでいるが、直君は趣味で小説を書いたり、
図書館の本はほとんど読んでいたりと無類の本好きだ。
と言うのも直君の父親が推理小説家の秋山 享さんで、小さな頃から
執筆している姿を見てきたし、空いている時間に
一緒に物語を考えたりしていたので、その影響が大きいのだろう。
「やっぱり今度の小説大賞も応募しないのかな?」
「応募はしないよ。俺はあくまで小説は趣味で書いてるだけで、
それで食べていこうとは思ってないからな」
直君は棚から本を手にとり、ページを捲りながらそう言うが、
直君も中学生になるまでは本気で小説家を目指していた。
なぜ「目指していた」なのか。
それは私達が中学校に入った時期に直君の父親が過労で倒れて、
体調を崩しがちになり、入退院を繰り返したのち、
去年病気で亡くなってしまったからだ。
推理小説家として売れっ子だった直君の父親は、今考えると明らかに早いスパンで
新作を書いていたので、体を壊してしまうのは必然だった。
そんな事もあって、当時体調を崩した母親の事も気遣い、
小説家を目指すのはやめたそうだ。
でも直君にばれないように、直君のお母さんにそれとなく話をしたが、
直君には好きな道を歩いて欲しいと思っているようで、
その時の優しく微笑む姿は今でも覚えている。
私としても直君の自由な作風でありながら、
読んだ人の心を温かくしてくれる物語は、
もっと色々な人に読んでもらいたいと思っている。
「衣沙菜、また余計な事考えてるだろう?」
「え!? ううん、この本の虫食いは酷いから、
先生に報告しないといけないなーって考えてただけだよ?」
また顔に出てたかなと内心焦りながらも、手に持っていた本を広げて直君に見せる。
「そんな慌てて言うと余計怪しいぞ。
まあクラスメイトに見せるくらいなら好きにやってくれれば良いよ。
ただ勝手に賞に出すとかは許さないからな」
「わ、分かった……。そこは遵守させて頂きます……」
やっぱり考えている事がバレバレだったか……。
ワタワタした顔を見られるのが恥ずかしいので、
私はすぐさま虫食いの本をカートに置き、直君とは逆方向に顔を向けた。
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