Chain to life

時谷 創

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3話 1年B組

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「さあ、貴幸さんもそこの椅子にこちらに持ってきて、一緒にお話しましょう!」

自分のクッションを手に取って、モフモフしながら
俺を待ち構える茜の姿に一つため息を吐き、近くの空き椅子を借りて座る。

「こんにちはです、鏑木先輩」

箸を丁寧に揃えて挨拶をしたのは、
先程から茜の右隣で弁当を食べ始めた新崎 杏奈にいざき あんな

廊下で会った浅倉さんはツインテールの明るい女の子だが、
新崎さんは言葉数が少なく、不思議な雰囲気を纏った女の子で
休憩時間だけはめている銀色の指輪が、より彼女の神秘性を際立たせている。

そんな二人は茜の良い友達である。

「こんにちは、新崎さん。
 浅倉さんは今日も元気そうでなによりだな」

「そうだ。ポケットに例の飴があるから、みんなにあげよう」

北海道の生乳を使った美味しい飴を
箱から2つ取り出した所でふと手が止まった。

みんな?

その言葉に何かがひっかかる。

「先輩、どうかしたんですか?」

「ん……? あ、いや、何でもない。
 それじゃ茜と、いつもお世話になっている2人には飴を進呈って事で」

何か微妙な違和感を感じたが、具体的に思いつかなかったため、
そのまま3人に飴を手渡す。

「わー、これいつも楽しみにしてるんです!
 ありがとうございます!」

浅倉さんはそう言って、嬉しそうに飴を受け取る。

「茜ちゃん、貴幸さん来ないかなってそわそわしてた」

「わーわー! 杏奈ちゃん、それは言っちゃ駄目!」

「いや、いいよ。茜の言動なんて今更だし」

「さすが茜ちゃんの良き理解者」

沈んでいた気持ちを吹き飛ばすくらいの
この明るい雰囲気は、正直俺はありがたかった。

茜のあの時の顔を思い浮かべると今でも胸が張り裂けそうになるが、
それは悟られないように笑みを浮かべる。

「そんなに茜の顔をじっと見たら穴が開いちゃいますよ。
 貴幸先輩?」

「あれ、貴幸さん…何か顔色悪くないですか?」

茜の言葉に俺はドキリとした。

どんなに取り繕っても見抜かれてしまう……。

それが幼馴染みなのだろうか。

「ちょっと最近夢ばかりみて眠りが浅くてな。
 ただの寝不足だから気にしなくでいてくれ」

「確かに目の下にうっすらくまができていらっしゃいますね」

「さすが茜、未来の旦那の体調はしっかりチェックしてるね!」

「そんな大袈裟な事じゃないよー、
 私は貴幸さんの事いつも見てるもん!」

言った後でわたわたして顔を真っ赤にする茜……。

これもだいたいいつものパターンだ。

「先輩、もうご飯は食べられたのですか?」

「いや、昼休みになってすぐにここに来たから食べてないよ。
 今頃雅春がパンを机の上に置いたまま、
 まだ戻ってこないのかーと怒ってるに違いない」

「あはは。その光景、私も目に浮かびます」

そう言う浅倉さんは楽しそうに笑顔を浮かべる。

「それは東儀先輩がお気の毒ですね……。
 一緒にご飯を食べたい所ですが、
 貴幸さんは教室に戻ってご飯を食べてきてください」

「まあ、雅春の事だからそこまで気を配る必要はないが、教室に戻るとするか」

腹も減ってきた事だし、そろそろ戻らないとな。

「もし時間が余ったらまた来てくださいね!」

「大歓迎」

「分かった。それじゃ……とその前に1つだけ聞かせてくれ。
 学校内で普段見かけない人物とかいなかったか?」

先ほど階段で声をかけられた事を思い出し、念のため茜に聞いてみる。

「何か不審者の方でもいらっしゃるのですか?」

「茜。不審者は悪党なんだから、そんな言葉遣いしなくてもいいの!」

「先輩がいない時は、私達が守るので安心」

「守るって何か武道の経験があるんだっけ?」

意外な言葉を聞いたため、俺は新崎さんに問いかけてみた。

「いえ、杏奈は箸より重たい物を持った事も無いを
 地で行くお嬢様なので、それはないですね」

「私は護身術を少々やってたので、
 何とかなるかもしれないです」

「そっか。もし俺がいない時に何かあったら、
 浅倉さん、お願いできるかな?」

「もちろん、OKです!

「それじゃ俺は教室に戻るから。またな」

3人に手を振り、教室を後にする。

「さて、一応お願いはしたものの、
 やはり女の子に任せておく訳にはいかないよな」

あの悪魔のような男、あれから姿を現す事は無いが、
絶対に何か目的があるはずだし、
もし再び現れようものなら、あの眼光に逆らえる自信がない。

となると、先ほど忠告してきた声の主に力を借りたい所だが、
現段階では敵か味方かの判断もつかない。

「どちらにしても今のままではいられない……だろうな」
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