50 / 70
050
しおりを挟む駒次郎は情報収集に向けて、酒場や博打場も有力だとする。
でも俺達じゃ、そこへは入っていけない。
盗賊のたぐいを探すなら、やはりゴロツキ家業の連中の所をまわるのが早い。
ここでの打ち合わせは、だいたい終わった。
茶団子の代金を俺が机のうえに置くと、駒次郎は両手を広げ欠伸をした。
そして「ごちそうさま」も言わずにとっとと店を後にした。
おもてに出るなり、振り向きざまにいい放つ。
「気が向きゃあ、いつでも案内しな」と。
忍びの任命書を自分にも一度見せろと、まだ食い下がってきた。
自分が直接見た方が見落としが分かるからなどと言うのだ。
まったく呆れたやつだよ駒次郎は。
「何度もおんなじこと言わせるなよ」
俺が気持ちを折らないことを知ると。
舌打ちをかまして残念そうな表情で盤次郎の説得へと走ってくれる。
後ろ手を振ってもう行くのかと思いきや、一言突き出した。
「じゃあな、グン。すぐ戻るから、迷子にならなねぇでくれよ」
散々笑いやがったくせに、まだ言うんですか。
「べつに迷子になんてなってないよ。バンさんのこと頼んだよ!」
「ああ…任せなよ。それより──」
うん?
「もし連中の影がちらついて会えそうにない時は、おれたちが出会った街道沿いにツナノセ神社ってのがあるから、そこの境内で落ち合うことに。いいな! くれぐれも奥に入り過ぎるなよ」
あそこはツナノセ神社というんだな。
この界隈はツナセで。
もしかして綱の瀬とかかな。見覚えも、聞き覚えもないな。
それはさておき。
「なんで奥に行っちゃ駄目なの?」
「だってグンは迷子だろ! それに神社ってのは子を隠すためにあるんだから、気を付けなきゃならねぇえんだよ。昔からそうなってるんだから、口答えしないでおとなしくな!」
言って、駒次郎はやっと走り出し、見えなくなる。
涼しい目をして爽やかな二枚目が人の波をすり抜けて駆けていく。
ポンポンと言うてくれるよなまったく、
「兄貴風ふかしちゃって…」
でも案外頼りになってるかな。
俺にも一応、兄貴いたんだけどなあ。
俺が先に死んじゃったから、今頃どうしてんだろな。
考えても仕方のないことをなんだか思い返してしまった。
いま駒次郎たちは、血のつながりこそないが家族と決めた人のために力一杯生きているんだもんな。ちょっぴり羨ましい。
そして、お里という女の子も羨ましい。
どんな窮地に陥っても命懸けで救い出そうとしてくれる守護神のような友達がふたりもいるのだから。
俺の生まれた環境じゃ、そんな強き友を得るには特別な何かを差し出さねば、あり得ない。
俺みたいな不甲斐のない凡人には特別な何かなんて一生かけても手に入るわけがない。
前々からそう思って生きてきた。
でも人生、二週目に入ったいまは違うんだ。
「特別な何か、か……」
そう無意識に呟いた俺は、トボトボと歩き出した。
このあたりで待っていれば彼は返ってくる。
だけど。
とてもそんな気持ちになれなくて。
これから仲良しの幼馴染の三人に戻り、笑って暮らしていくだろう彼のことを。
ただ待つことができないでいる。
転生のためのスキルポイント欲しさに純な愛に生きる彼らの不幸を心待ちにしているようで、自分が惨めで情けないんだ。とても晴れた気分でここに立ってはいられない。
いまは自分にやれることだけをやるしかないんだけど。
転生なんて俺が望んでする訳じゃないし。
俺は本当にポイントなんてものが欲しいのだろうか。
その末に手にするものは何だ?
ああ、そうだった。
結局、特別なチカラじゃないかよ。
「コマさん……ごめん…」
俺、身勝手な人間だったようだ。
コマさんの気持ち、知っていたよ。解っていたよ。
そんなものでも手に入れないと、どこの世も渡り歩けないのが子供だってこと。
名もなき民だってこと。
雑草ぐらいにしか歴史には刻まれない、そんな名声のない民だってこと。
でも君には友達がいる。
その素敵な友情を結んだふたりがいる。
俺には何者もいない。
事が済めば、もうさよならだ。
あと二日半。
過ぎれば、目の前から忽然と消えるよ。
それは君にとって見れば、まさに神隠しだね。
「そうなる前にケリをつけて旅立つから……コマさん」
ゴロツキ連中がなにを隠し持っていようと、いまいとフルボコにして溜め込んだ汚い金を根こそぎ強奪してやろうと思うんだ。
ふたりには後ろに手が回るようなことはするなと言っておきながら。
俺の入手するスキルは、女神の世界で戦うためのものだ。
優しさなんて必要ないんだよ。
人の心なんか持ち合わせていてもゴミでしかないんだよ。
「コマさんなら、きっと理解してくれるよね」
はは……。
何言ってるんだ、俺は。
爺ちゃんは、俺に言っていたんだな。
闇を求める者。
そのババは俺が引くから、ふたりには太陽のほうを引いてほしい。
気づけば、ツナノセ神社に足が向かっていた。
なぜだ。
自分でもよくわからない。
例の任命書が気になったのに違いない。
だって駒次郎がここへ来てしまうじゃないか。
事情で会えないとき、ここで落ち合うと言った。
あいつは勘の冴え渡る男だ、先にたどり着いた場合。
アレを見つけださないとも限らない。
子供は遊び半分で親のへそくりのありかまで行きつくことがある。
「やばい……俺、人間不信になりそう」
本当に気づけば、女神と出て来た祠の傍まで来てしまっていた。
キョロキョロと不審者のように周囲を見回した。
まだ居るわけないよな。あいつ。
俺の足に追いつける奴など忍びぐらいしかいないし。
0
あなたにおすすめの小説
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…
アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。
そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる