江戸の『鬼』

小豆あずきーコマメアズキー

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幸せのおにぎり

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「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ」

布団の上で美しく、生命感に溢れ、清潔で、セクシーな裸体姿になって仰向けになる、ブロンドの短い髪の、18歳の元服を迎えた女、愛道鈴の上に覆い被さって酒の飲み過ぎて下っ腹が出ている35歳の、特徴のない、安っぽい美形の栗色の髪の男は、皮袋を嵌めて陰茎を膣に差し込んで出し入れしていた。

「あぁっ!はっ!ん、はぁ!」

女は、正体がバレないように、口元が見えている半面の狐の面を着用しており、唾液を垂れ流し、キュウゥッと締め付けて離さない。

「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ」

ふっくらとした形の綺麗な大きな両胸を揉みながらバコッ!バコッ!バコッ!バコッ!バコッ!と、子宮を何度も突き上げ、突き昇ってくる熱の魅力に抗えず、欲望を燃え上がらせどくどくと全身の血が滾り、ビュクビュクと我慢汁が溢れ、女の体に興奮が抑え切れない。

「あっ!あっ!あぁ!あぁん!ん、はぁ!」

一度からだにこびりついた快感はどこにも出ていかない。

「あぁっ!心地良し(気持ち良い)!」

あまりの快感に一筋の涙を流し、互いに唇に唇を押し当ててキスをする。

「好いておる。お慕い垂き(好きだ。愛してる)」

額から汗が流れ、女を深く愛する。

「我も思へ、り(私も愛して、る)!ん、はああぁ!!」

上体を逸らし、失神しそうな程のエクスタシーが体を駆け抜け、ビクビクと腰を痙攣させ、体は快感のあまりにゾクゾクし、ブッシューーーーーーーーーッ!と、何メートルとも潮を吹き出した。

「ぐ………………………ッ…ぅあ!」

子宮にグリッと突き付けた状態で唾液を垂れ流して腰を痙攣させて多量の精を放った。皮袋が、しっかりと受け止めてくれた。

「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ」

暫くして、互いに裸のまま横たわって抱き締め合う。

「女郎何やら止めて、それがしと輿入れしろ(娼婦なんか止めて、俺と結婚しろ)」

それを言ったのは男の方だ。深く彼女を愛している為、結婚の話しをいつも持ち出して来る。

「貴様を恭悦至極にするでござる自信しかなゐ(お前を幸せにする自信しかない)」

どこから来る自信なのかは知らないが、いつもそうやって独占しようとしてくる。

「そうとて男の人は、女を泣かす(そうやって男の人は、女を泣かせる)」

「否!どこぞの男と共にするでござるな!なぁ。輿入れしてちょーだいくれで候!貴様が好き過ぎて御身がぶっ壊れちまゐさふなんでござる(俺は違う!他の男と一緒にするな!なぁ。結婚してくれよ!お前が好き過ぎて体がぶっ壊れちまいそうなんだよ)!」

後頭部と貝殻骨の浮いて見える綺麗な背中に回して抱き、自分の想いを全力でぶつける。

「あひは心の外傷なる。なればせめて、我ばかりを思はなむ。なほ触れ合ひしより、あはむ(結婚はトラウマなの。だからせめて、私だけを愛して欲しい。もっと触れ合ってから、結婚しよう)?」

鈴はそう口にし、ゆるんで少し開いた唇と、エロチックな視線とが射るように圧迫させて言い

「あぁ。それがしのみにてとしてちょーだいゐらば良き。お慕い垂き(俺だけとしていれば良い。愛してる)」

男は、自分の気持ちを抑え切れずにキスをした。家に帰るなり、目立った水色の長い髪のあどけない顔をしながらも目付きがキッとしている12歳の娘、朧月夢は、お腹を空かせて囲炉裏で倒れていた。男は草履を脱いで囲炉裏に上がり、風呂場へと直行する。

「………………………………………」

彼女は目を開けると、上体を起こして台所へ行った。釜の前に座って火を焚いて米を炊く。竹筒を手に、火加減を調整しながらするのだが、これが中々難しい。良い感じになったので立ち上がり、おたまで米を掬い味見する。

「べっ!!」

夢は、顔を逸らして吐き出した。焦げてしまった。とても硬い。

また過ちき(失敗した)。

8歳の頃、母親が出て行った。彼女はそれまでずっと母に愛され続けていたのだが、親の愛情とはかけ離された生活を送っている。その為、母の真似をして米を焚くが、失敗に終わってしまう。だが、夢は諦めなかった。この家から出る為には、おにぎりが作れるようにならなければいけないと思っていた。だからおにぎりを握る。

「あちちちち」

熱くても我慢して握り続ける。母が作ってくれた塩結びは、今でも忘れられない大好きな味。なので、味を再現する為に大きいおにぎりを握って、昔母が作ってくれた愛情が込められたおにぎりと全く同じ塩結びを食べる事によって母を思い出すようにしている。だが、そこには一つ問題があった。

「給ふ(頂きます)」

握ったおにぎりをハグッと、食べた。

「ん~」

塩の味せず(塩の味がしない)。

などか(なんで)?

握れるに(握ってるのに)。

彼女は、おにぎりを握れば塩の味がすると勘違いしていた。だからいつも塩とは程遠い無味のおにぎりになってしまう。その時、足音が聞こえた。夢は、逃げるように家から出て行った。裸足で。父親は囲炉裏に来ると、酒を持っていた。風呂に入る時も、寝る前も、ずっと酒を浴びている。飲まない時は娼婦の鈴と居る時くらいであろう。夢は、暫くおにぎりを持って歩いた。野には稲が黄色く実り、青く澄んだ空を赤とんぼの群れが飛ぶ。

「?」

見ると、木陰に寄り掛かる、一人の男の姿が。その男は、黒髪で、高身長のイケメンな風貌をしている。

「はああぁ」

腹部を抑えている。刀で刺されたのか、血が出ている。

「怪我せる(怪我してるの)?」

「?」

顔を向けると、夢は興味本位で近付き声を掛けた。

「がき(ガキ)が。失せろ」

この口の悪い男。正体は鬼賀乃仁導だと分かった。この村ではとても有名な警察であり、『鬼』と呼ばれて恐れられている。警察なのにとにかく命を狙われる。彼は残忍で、冷酷非道なので、村人たちから恐れられる反面、仁導をに組む人もいる。

「えい(はい)」

すると彼女は、持っていたおにぎりを差し出したのだ。

「これ食ひて勢ひいだして(食べて元気だして)」

彼はそれを手にするなり、ポイッと投げて捨てたのだ。

「食ゑるかかのようなもの。興味本位にてそれがしに近付くな。叩っ斬るぞがき(食えるかこんなもの。興味本位で俺に近付くな。叩っ斬るぞガキ)」

「………………………………………」

すると夢は、下唇を噛み締めて一筋の涙を流して走って行ってしまう。そして、仁導は目を瞑った。

その夜。

「………………………………………」

ふと、彼は目を覚ました。

武士は食わねど高楊枝でござる(腹減った)。

懐に手を差し込み、女と思われる5本指の綺麗な手を取り出し、それを食べようとしたのだが

「………………………………………」

自分が投げたおにぎりに目を向けた。虫も集っていない。だが、仁導は小指から食べた。その一方で、夢は囲炉裏で寝、父親は自分の部屋の布団の上で寝る。ここ何年も会話なんかしていない。常に死んだふりをして過ごす毎日。おにぎりを立派に作れた時、彼女は出て行くと、決めている。

朝の明るさが加速度を増して広がる。夢は、またおにぎりを握る。今回は米を焚いても失敗しなかった。焦げてもいない。たまにそう言う時がある。

「給ふ(頂きます)」

ハグッと、食べた。

「ん~」

だがやはり、塩の味はしない。その時、廊下を歩く脚音が。彼女は、また裸足で家から出る。そして、ひどいことをされたのにまた興味本位で、仁導が居るかを見に行く。木陰で胡座をかいて座る彼は、小刀で蛇の胴体を斬って食べていた。

「うえっ!」

「?」

顔を向けると、舌を出して苦い顔をしながら歩いて来る昨日の娘が目に入った。

「来てくれたでござるとか。丁度良かった。今から貴様の舌を引っこ抜ゐて茹にて食う(来てくれたのか。丁度良かった。今からお前の舌を引っこ抜いて茹でて食う)」

小刀を手に、舌を切る気満々だ。

「うたてしさる(やだそんなの)!」

「ならなにしに参った?喰わらるる以外にて貴様に用はござらぬ。消ゑろ(来た?喰われる以外でお前に用はない。消えろ)」

すると、仁導が食べていた蛇をガッと掴んで取り上げ

「食はまほしき(食べて欲しいの)!」

おにぎりを差し出したのだ。

「左様な食べしめたゐとか(そんなに食べさせたいのか)?不味かったら舌を引っこ抜ゐ(い)て食う!分かったな!?」

「良きぞ(良いよ)!」

意味分かって承諾したのだろうか。おにぎりさえ食べてくれれば良いと思い、何も考えずに承諾してしまったのかもしれない。交換条件として、彼はガッとおにぎりを手にして食べる。別に不味くはない。だが、米そのものの味だ。大きいおにぎりだったが、全部平らげた。夢は、全て食べてくれた事に目を輝かせる。とても嬉しかったようだ。そして、食べ終えた後に彼はこう言った。

「舌出せ。引っこ抜く」

「べー!」

食べてくれたら良い。そんな安易な考えで舌を出した。すると仁導は腕を伸ばすと本当に舌を引っ張ったのだ。

「ぎゃあああああぁん!!」

痛くて悲鳴に近い声を上げ、その場から離れて泣きじゃくってしまう。引っ張られるより、摘まれたその指の力が痛くて、舌がジンジンと痛む。

「ぎゃあぎゃあ喚くな!戻とは来られよ(戻って来い)!引っこ抜く!」

「痛しよをこ(痛いよバカ)!」

すると彼女は、両手で口を塞いで戻って来た。それでも興味がある。だが仁導は腕を伸ばして夢のか細い両手首を束ねて掴み、下に引っ張る。

「ぐうぅーーーーーーーーーー!!」

口を開けじと歯を食い縛る。

「ふふ。くっふっふっふっふっ」

その頑張っている顔を見ておかしくておかしくて堪らず、俯き、自分の笑っている顔を隠す。

「ゔううううううぅ!!」

「黙れめすがき(メスガキ)!」

顔を上げ言うと、彼女は黙り込んだ。しかも真顔になった。

「ぐっふっふっふっふっふっ!」

俯き、面白くて仕方が無い。

「何ゆえに無味なんじゃ(何故無味なんだ)?」

顔を向けると、ふと、疑問に思っていた事を口にした。だが、夢は黙ったまま喋らなかった。舌を摘まれる恐怖で、黙り続ける。

「喋らね(なけれ)ば舌を引っこ抜く」

「母がいでゆきにける。父がお酒飲みて帰り来ねば母がいでゆきにける。されどぞ。母の作りし屯食ゆゆしく旨く恋しき。なればぞ。夢も母と同じ屯食を握りけれど、母のごとく塩の味のせぬ。屯食握れるになどか塩の味のせぬや分からぬ(ママが出て行っちゃったの。パパがお酒飲んで帰って来ないからママが出て行っちゃったの。けどね。ママが作ってくれたおにぎりがすごく美味しくて好きなの。だからね。夢もママと同じおにぎりを握ったんだけど、ママみたいに塩の味がしないの。おにぎり握ってるのになんで塩の味がしないか分からないの)」

ベラベラベラベラ家庭の事情まで話してくれた。いや、しっかりとした経緯がある。

「さてぞ。夢、父が憎ければ屯食を握りていでゆく。屯食だに握られば生きゆくべければ(それでね。夢、パパが嫌いだからおにぎりを握って出て行くの。おにぎりさえ握れれば生きていけるから)」

「先ずひいつ、握り飯は握るのみにては塩の味は致さぬ。塩を振り掛ける必定がござる(先ず一つ、握り飯は握るだけでは塩の味はしない。塩を振り掛ける必要がある)」

間が開き

「えっ!?さる(そうなの)!?」

「米自体に塩の味は致さぬであろう(しないだろう)?」

「せず(しない)」

「なら塩の味がするでござる訳ござらんであろう?かにてひいつ、その小さゐ脳が賢くなったな?単細胞氏(する訳無いだろう?これで一つ、その小さい脳が賢くなったな?単細胞ちゃん)」

確かに言われてみれば米自体に塩の味は一切しない。なら握ってもしないのは当たり前だ。ずっと勘違いしていた。おにぎりさえ握れば塩結びになると思っていたので、一つ賢くなった。

「仁導!」

そこへ、緑色が掛かった黒髪の、性的魅力に溢れた高身長の男。白鳥ナガレが走って来たのだ。

「随分探したでござるぞ。貴様刃傷しておるでないか(探したぜ?お前え怪我してんじゃねえか)!」

片方の膝を立てて座るなり、その顔に唾液を吐き掛けた。

「!」

「この無能が!ゐち早うそれがし(いち早く俺)の居場所くらゐ(い)割れ!なんの為に護衛にて(で)雇ったと思とはんじゃ(ってんだ)この木偶の坊!」

「あぁ良かったでござるよ誠達者にて貴様が(良かったよ本当元気でお前が)」

顔に唾液を吐き掛けられたと言うのに一切気にせずに手の甲で拭き、子供のように無邪気な笑みを浮かべる。こう見えて彼の側近として雇われた男。警察としてはそこまで頼りないようだ。すると仁導は立ち上がると、子供の腕を掴んだ。

「貴様無理するでござるな。座とはゐろ(お前え無理すんなって。座ってろ)」

そしてナガレも立ち上がった。

「貴様はそれがしの為に働けておるのを光栄に思とは生きろ。其れとひいつ、貴様に頼さながら事がござる。そのくらゐは役に立て(お前は俺の為に働けているのを光栄に思って生きろ。それと一つ、お前に頼みたい事がある。そのくらいは役に立て)」

「なんじゃ(あんだぁ)?」

その一方、父親では。

「あっ!あっ!あっ!あっ!ああぁ!」

生命感に溢れ、清潔で、セクシーな裸体姿になる鈴は、両膝に腕を回して支えられて立っており、陰茎を差し込んで子宮を何度も突き上げられて、女を物していた。

「あっ!あっ!あっ!あっ!あっ!あっ!あああぁ!あぁ!あぁん!んあぁ!あぁ!あぁん!あっ!」

いつもの狐の面をし、腰がビクビクと痙攣して軽く達し、愛液がパタパタと糸を引く。一度からだにこびりついた快感はどこにも出ていかない。

「好いておる!好いておる!好いておる好いておる好いておる好いておる好いておる好いておる好いておる好いておる好いておる!好いておる(好きだ!好きだ!好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ!好きだあぁ)!」

愛おしくて愛おしくて、堪らず愛を叫ばずにはいられない。

「恋し!恋し!思へり(好き!好き!愛してる)!」

唾液を垂れ流し、出した時に鈴の腰も引いており、バコッ!と突き上げられれば必然的に彼女の腰も前に出、勢いが増す。

「貴様と輿入れがしたいでござる!今に直ぐにとはいえ輿入れしたいでござる(お前と結婚がしたい!今に直ぐにでも結婚したい)!」

唾液を垂れ流し、突き昇ってくる熱の魅力に抗えず、欲望を燃え上がらせどくどくと全身の血が滾り、我慢汁がビュクビュクと溢れ、身がゾクッとし、この快感に逆らえない。

「さえ!」

彼女は娼婦の為、偽名を使っていた。『近藤さえ』と言う名前で娼婦をしてお金を稼いでいる。

「我をなほ思ひて(私をもっと愛して)」

ギュッと抱き締め、鈴は舌を差し込めば男も差し込んで互いにちゅるちゅると吸い合い、唾液を垂れ流す。このキスがとても官能的であり、興奮を引き立たせてくれる。

「んふぅ!んぅっ!んんんっ!」

腰を痙攣させてブシュッ!と潮を吹き

「おぉ…………………ッ……!!」

ブルッと身震いし、皮袋が精を受け止める。

「アァッ!」

すると、彼女はじょろろろろろと、尿を漏らした。

「うたてし。心地良く、漏らしにけり(やだ。気持ち良くて、漏らしちゃった)」

「それがしが拭ゐて献上奉る(俺が拭いてあげる)♡」

男はニヤッとして良い

「かたじけなし(ありがとう)」

女を優しく座らせると、彼女はなかなかお目に掛かれない綺麗な形のほっそりした脚をM字開脚し、自らの指で女性器を広げて中を見せる。こんなに差し込まれているのに真っピンクだ。男は股に顔を突っ込み、中に差し込んでぐりぐりと強く舐める。

「はぁ…………………ッ…心地良し(気持ち良い)」

両手で後頭部に腕を回して強く引き寄せ、上体を倒し腰がびくんびくん痙攣し、自らも腰を振る。

「あああぁ!」

狐の面越しに、鈴は退屈な顔をしていた。

そろそろ、かな?

「んはぁ!」

パチパチパチパチパチパチ。釜の前でしゃがむ彼の横に夢がちょこんと座って竹筒を手にして火加減を見ながら吹きかけていた。

「良き良き(良い感じ良い感じ)!」

ただ火加減を見ているだけなのに褒めてくれる。今までそんな事無かったので、正直嬉しかった。

「達者じゃ!この調子であると、とびきり美味でござる握り飯が握らるるでござる(お前え上手えじゃん!この調子だと無茶苦茶美味え握り飯握れんぜ)!」

彼女は顔を向けると、ニィッと嬉しそうに笑った。仁導は、布団の上で仰向けになり、衣を腰まで開(はだ)けさせて、51とは思えない程の肉体美を晒して腹部に包帯が巻かれていた。その時、襖が引かれた。彼は目を開けると、狐の面をしたあの女が。

「面を外せ」

すると鈴は、狐の面を外した。一度見たら頭に残る蠱惑的な美貌の主だ。

「輿入れの(結婚)資金は、どんな具合じゃ(だ)?」

「いまあふべしよ(もう結婚出来るわ)」

まんまと、男はハメられていた。

「いまあまた。娼婦、辞むべきぞかし(もう沢山。娼婦、辞めて良いよね)?」

「あぁ。溜まったならな」

すると彼女は近付くなり、彼の上に跨ぐと、裾を捲って膣に大きい陰茎を差し込んだ。

「ん、あぁ!」

あの男ではなんら興奮しなかった身体が、素直に感じ、差し込んだその快感でプシャッ!と、潮を吹いた。メリメリメリメリメリと、膣壁が剥がれて行く。夢の父親よりも断然大きいので、形が変わっていく。

「んはぁ!あぁっ!大きなり(大きい)!」

「あぁ!なぞ小さゐ男じゃ!狭ゐ(なんて小さい男だ!狭い)!」

すると仁導は上体を起こすと、鈴の後頭部と貝殻骨の浮いて見える綺麗な背中に回して抱き、『所有』する。

「貴様を深く慕っておる(お前を深く愛している)」

「いま、仁導のみ見らる(もう、仁導しか見れない)」

唇に唇を押し当て、舌を絡ませながら彼は下から上に突き上げる。

「んっ!んっんっんっんっんふぅ!」

身がゾクッとし、深く仁導を愛する。互いに一人の男と女として、愛おしくて愛おしてくて堪らず、体がバラバラになるほど愛する。

「我ばかりを、思ひて(私だけを、愛して)」

ぬるっと離れると舌先と舌先で唾液が繋がり合い、ぼろぼろと大きい雨粒のような涙を流し、散々他の男とさせられ稼がせる為に利用をされていたのに、この男だけは、どうしても許してしまう。

「まふ、貴様をどこぞの男の元には行かせなゐ。平穏してちょーだいそれがしと輿入れしろ(もう、お前を他の男の元には行かせない。安心して俺と結婚しろ)」

熱の魅力に抗えず、欲望を燃え上がらせどくどくと全身の血が滾り、太く猛々しくそびえ、びくんびくんと脈打つ陰茎から、我慢汁が溢れる。

「信じた(て)る、から!」

すると彼は立ち上がると壁に追い遣り、片方のなかなかお目に掛かれない綺麗な形のほっそりとした片方の脚を持ち上げて壁に手を付き、バコッ!バコッ!バコッ!バコッ!バコッ!と突き上げる。

「あぁっ!あっ!あっ!あっあっあっあっああぁ!あぁん!ん、はぁ!アァッ!」

「はあぁ。鈴、こころもちが良き(気持ちが良い)♡」

あまりの快感に身がゾクッとし、ブルッと身震いする。

「好いておる。鈴、お慕い垂き(好きだ。鈴、愛してる)」

「私も恋し!恋、し!恋し!恋、し(私も好き!好、き!好き!好、き)!ん、はああぁ!」

失神しそうな程のエクスタシーが体を駆け抜け、ビクビクと腰を痙攣させ、体は快感のあまりにゾクゾクし、ブッシューーーーーーーーーッ!と、何メートルとも潮を吹き出し

「おぉ…………………ッ…ぐ……!♡」

腰を痙攣させて唾液を垂れ流し、身をゾクゾクさせたまま年甲斐も無く多量の精を放つ。射精は力強く、雄々しく、精液はどこまでも濃密だった。きっとそれは子宮の奥まで到達したはずだ。あるいは更にその奥まで。それは実に非の打ち所のない射精。膣に射精された精子が駆け抜け、子宮へと到達する。そして、卵管を通り卵子を待つ。卵巣から排卵が起こる。精子と排卵をした卵子が、卵管膨大部で出会い、受精をする。受精卵は細胞分裂を繰り返しながら卵管を通り、子宮内へ移動する。子宮に到達した受精卵は、子宮内膜に着床し、妊娠が成立する。

「うはぁ!」

その際に、余分の脂肪の無い痩せて凹んだ腹部がボコッ!と膨れ上がり、子宮に熱湯が注がれたように熱くなり

「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ」

すべてが終わったとき、次第に遠のいていく恍惚の中で女がブルッと、身震いし、停電したようにプッツリと意識を失なってしまう。

「はああああぁ。お慕い垂き(愛してる)」

彼は、後頭部に腕を回して抱き、唇に唇を、押し当てた。

「えき(出来た)ー!」

やっと、おにぎりが完成した。

「やったな夢!良き出来栄ゑじゃ!仁導に食わせて来られよ(良い出来栄えだ!仁導に食わせて来い)!」

「食はしく(食べさせてくる)ー!」

おにぎりを持ったまま走り出す。ナガレは、嬉しそうにニィッと、無邪気な子供のように笑みを浮かべた。

「仁導ー!」

スパコーン!と襖を開けるなり、仁導は布団の上で仰向けになっていた。

「えしぞ!食ひて(出来たよ!食べて)!」

「かにてまた無味されば眼をくり抜く(これでまた無味だったら目をくり抜く)」

今度は目になった。上体を起こすと、おにぎりを手にして食べた。良い具合に塩が掛かっていてとても美味しい。

「うんうん」

何度か頷き、食べ続ける。納得の行く味だったようだ。夢は彼の膝の上に向き合って座り、『ふあ~』っとあくびをし、寄り添って眠る。すると彼は、後頭部に腕を回して抱き、食べ続ける。

そんな中、父親は荷物を纏めていた。家から出、娼婦の『さえ』の家へ向かった。ドンドンドン!

「さえ!さえ!それがしまふ辛抱出来なゐで候!さゑ在るんであろう!?出て来てくれで候(俺もう我慢出来ねえよさえ!さえ居るんだろう!?出て来てくれよ)!さえ!」

戸をノックしていると、何かに気が付いた。

「?」

見ると、戸には『売物件』の紙が貼れていた。

「……………………さえ?」

その時気付いた。逃げられたと。

「あぁっ!あああああああああぁ!さええええぇーーーーーー!!」

そんな中、夢は沢山のおにぎりを握っていた。竹の皮に沢山詰め、風呂敷を背負う。

「貴様まことに村から出るとか(お前え本当に村から出んのか)?」

「家見付からずとも、かほど屯食があらば生きゆくべし(家が見付からなくても、これだけおにぎりがあれば生きて行ける)」

裸足のまま囲炉裏から出、戸を開けた。

「ばあらばい(ばいばい)」

手を振る彼女は、家から出ない。なんならしつこく手を振っている。

「ばあらばい(ばいばい)!」

「貴様引き止めてもらおりきゐであろう(お前え引き止めて貰いてんだろ)?」

「結びが無くなったらいかが生きるんじゃ?その単細胞を絞とは存念しろ(結びが無くなったらどう生きるんだ?その単細胞を絞って考えろ)」

すると、囲炉裏に仁導が来たのだ。

「おぉ仁導。起きたか」

「其れに、屋敷を買うには結びにては買ゑなゐぞ(それに、家を買うには結びでは買えないぞ)?」

「なんとなれば(だあって)ー!」

「では共に住むしかなゐであろう(じゃあ一緒に住むしかねえだろう)?」

「断る!屋敷見付けてとっとと消ゑろ!ぎゃあぎゃあ喚くごときがきを屋敷に置ゐておけん(家見付けてとっとと消えろ!ぎゃあぎゃあ喚くようなガキを家に置いておけん)!」

「おゐ(い)夢!」

するとナガレは囲炉裏から出ると彼女の隣に来てしゃがみ、肩に腕を回す。

「あれ渡せ。あれ。あれ食わせて仁導を黙らせろ!」

「結びにて黙らせられるでござるか(結びで黙らせられるか)?」

あん団子を二本手に持ち、縁側に座って食べる。

「ここに住んじまえよ。仁導も黙ったかんよ」

チョロい。

「白鳥。正式に正室を娶った。がきを連れて出て参れ(妻を娶った。ガキを連れて出て行け)」

間が開き

「あぁ!?」

結局、ナガレと夢は追い出され、隣の家に住む事になった。一方で父親は一人、孤独に酒を飲みながら暮らすのであった。

「さえ。さえ。さえ。さえ。さえ。さえ。さえ。さえ…」
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