私の日常-それぞれの-

林原なぎさ

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姉から見たお話

男の正体

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無理矢理取り付けた私からの一方的な約束をこの男は文句もつけず律儀に守った。


この時点では'遊んでいる'だけ、という訳ではないようだが…。

まだ油断は出来ない。

もしかしたら、ちょっと抜けている可愛い妹を騙して身体の関係を持ち、その事で脅しているのかもしれない。

とんでもない性癖を隠し持っているのかもしれない。


目の前の男は一体どういうつもりで妹と付き合っているのだろうか?



「初めまして、姉の凛です。」


「初めまして。西園寺秀一です。」


かなり威圧感を出したつもりだが、この男はしれっと挨拶してきた。




「では、西園寺さん。失礼ですがお仕事は何を?」


「広告代理店です。」


「じゃあ西園寺って…そう。」



間違いなく西園寺のことだと気付いた。


まさかの相手に戸惑った。


西園寺といえばあの大手WRホールディングスの経営を筆頭に、ホテルや旅館、はたまたスポンサーになる程の有名な資産家だ。


その西園寺家の男と妹がどんな経緯で付き合うまでに至ったのかやはり気になる。


妹の様子を確認する限りこの男の素性について全く気付いてる気配は無い。


まぁ、そこは予想通りだけど。



しかしこの男があえて妹に隠している可能性は高い。

都合良く振り回されてぽいっと捨てられるなんて堪ったもんじゃない。



どこで知り合ったんですか?

どういった経緯でお付き合いを?

妹から貴方の存在を聞いたことがありませんでしたが?

日頃からデートをされてるんですか?

妹のどんな所を気に入ったんですか?

泊まり合う関係なんですね?



この男から問いただしたい事を全て聞いたがソツなく答え、はぐらかしているのか、いないのかの判断のつかない答えも返ってくる。


眉ひとつ動かさず、考える素振りのないこの男。

ますます気に食わない男だ。


困らせてやるような質問をしてやろう。

そう考えた矢先。


「あの!本当にいい人なの。だから、その…姉さんが心配するようなコトは無いから。」


珍しく妹が大きな声を出した。

自己主張をあまりせず、控えめな妹が。


これには私も驚いた。


妹が珍しくはっきり答えたのだ。

この男は気に食わないが、妹の意見は尊重したい。

この男は困らせたいが、妹を困らせたい訳じゃない。


この男に対して、どのくらいの好意が妹の中にあるのか分からないが、少なくとも私に反対されるのを避けたい程には、この男を想っているのだ。


あの恋愛事には無頓着で全く興味を見せなかった妹が。


この男は気に食わないが、妹の想いを大切にしてほしい。


無意識に口角は上がり、言葉が出た。


「わかったわ。でも西園寺さんに泣かされたら、私の所に来なさいね。」


「あはは…。うん…。」


乾いた笑いをする妹に、正式に付き合っている訳じゃないのは間違いないと感じた。


それでも今回は引き下がることにした。

もちろん、妹にあれば間違いなく海の藻屑行き決定だ。



この気に食わない男が近い将来、自分の義弟になるだけではなく。

計画的に妹を孕ませた挙句、結婚を確実なモノにして挨拶しに来ることを私はまだ知らない。







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