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姉から見たお話
私は私で
しおりを挟むお手洗いに行くフリをしてさっさと撤退して来た。
友人は私の為では無く、あんな居心地の悪い所にひとりで行くのが嫌だから誘ったのだ。
結局ガバガバひとりで飲み漁っていたので、そのまま置いてきた。
やはり合コンなんてつまらないのだ。
このしょーもない気分のまま家に帰る気にもなれず、ひとりで飲み直すことにした。
「はい、ビールお待たせ!」
「ありがとうございます。」
こじんまりしたお店で安くて美味い。
揚げ出し豆腐が一番のお気に入りだ。
先程とは違い、私は鼻歌を歌ってしまいたいくらい、今は気分が良い。
はふはふしながらカウンターで食べていると、隣からクスクス笑う声が。
隣を見やると、美形なお顔がこちらを見ながら笑っていた。
「あ、すみません。あの不機嫌な顔から鼻歌を歌いそうな程、上機嫌なので。そのギャップに笑ってしまったんです。」
鼻歌の単語に、この人、私の思考が読めるのか?と思うくらいにドンピシャで言い当てた。
しかしそれより引っかかるのは'不機嫌な顔'というフレーズだ。
私はこの店に入る前から頭の中はビールと揚げ出し豆腐で占領されていた。
よって不機嫌な顔などしていない。
寧ろにやついていた自覚がある。
あのつまらない会の時は間違いな無く不機嫌な顔をしていた。
つまり、この人もあの場に居たという事で。
「だってつまらなかったの。楽しくも無いのに笑えないわ。それよりここの揚げ出し豆腐の方が私を笑顔にしてくれるの。」
魔法がかかってるんじゃないかと思う程、美味しいもの。
私が言うと彼は驚いた表情してからまたクスクス笑い出した。
「面白いね。是非、名前を教えてほしいな。」
「それはイヤ。知らない人に名前を教えるなんて気味が悪いじゃない。また偶然でも会えたら教えてあげるわ。」
はっきりイヤと言うと彼はまた笑い出して。
「じゃあ、また出会えたら教えてね。約束ですよ。」
「また出会えたらね。」
お会計を済ませ、もう二度と出会うことは無いだろう相手に言い残し店を後にした。
「今日から来る薬剤師の人。とびっきりの美形さんなんだって。」
勤務中にも関わらず声を掛けてくる友人に、そうと返す。
「興味無いのー?え!ほら、あの人!」
振り返るよう言われ、その薬剤師を視界に入れて驚いた。
その人はにっこり笑って、私の元まで来て。
「また会えたね。本日から勤務します。横峯悠真です。」
「こちらで保健師をしています。松岡凛です。」
「そう。よろしくね、松岡さん。」
嫌味なくらい綺麗な顔で微笑んだ。
知っていたな、こいつ。
「うん。松岡さんのことは友人から聞いて知ってたんだ。」
悪びれも無く笑う。
ちょっと気に食わないがこの男、悠真と付き合うようになり。
「凛、結婚して家族を作っていこうか。」
出会ってから約1年半、交際期間は1年程。
それでも私にとって悠真以外の誰かと一緒になるつもりは無いし、家族になれると思った。
迷わず頷き、悠真と籍を入れ私たちは夫婦になった。
ふたりの子どもを授かり、私は私で幸せだ。
これが私のお話。
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